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朝は大家さんと一緒
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チュンチュンと雀の鳴き声が複数聞こえる。
そんな朝に、おすみはいつものように身支度を整え始めた。
水瓶から柄杓で水を汲んで飲み、顔を洗うための手拭いを桶で濡らした。
温かな時分だ。
長屋から出て良い陽気にひとつ、伸びをした。
『まだまだ背が伸びる年だ。
日をいっぱい浴びて良く働きなさい』といろいろくれる
おさと婆さんの店にそろそろ人手が必要になるだろう。
そんなことを考えて歩いていたら、お狐さんの社についた。
いつものように、手を合わせて願い事をした。
まだ時間があるので、掃除がわりに葉っぱを拾って集めておく。
今日は、物売りの仕事ではないため時間がある。
大家さんの家に足を向けた。
スッと長屋の扉を開いて普段の声で言う。
「おはようございます」
声が返ってくるとは思っていない。
朝が弱い人なのだ。
手慣れている台所で、竃に火を入れ朝の支度にかかった。
米を2人分。大根のしっぽ部分を包丁で切る。
鰹節の出汁をとってご飯を炊き、一汁一菜の朝飯のできあがりだ。
脱ぎ散らかされた洗い物を拾いつつ、大家さんを起こすため
部屋に上がる。
「おはようございます!」
声を張って言うが、大家さんに反応はない。
いつものことなので、揺すってみる。
「朝ごはんできましたよ!」
「ん~、おすみちゃん。」
声は出たけど、ここで油断してはいけない。
だって、この前
「え、わたし起きたの?全然覚えがないわ」って言うんだから。
「ちゃんと、起きてください!」
布団を剥がして、
色っぽいはだけた着物で挨拶してくれる。
「おはよう、おすみちゃん。」
にっこりと優しい顔だけどこ、のままだとまた寝てしまうおそれがある。
「はい。いいお天気ですよ?顔を洗ってきてください。」
のっそり起き出したので、今日は起こすのは成功した。
大きなお胸に届くくらいの背の高さしかない。
いろんなところが大きくなる予定のあたしは茶碗にご飯をよそい、
大家さんが座るまでにお茶を用意する。
今日はのんびり朝食を食べられる日だった。
やっぱり1人で食べるご飯より、作り甲斐も食欲もわいて良いと思う。
今年で十(歳)になったおすみは、いっぱしの世話を焼きながら
二度寝てしまわないように、大家さんに話しかけて温かなご飯を腹におさめていった。
「御馳走様でした!」
ちゃんと起きた大家さんに、
「お粗末さまでした」と言って茶碗を水につけておく。
三ちゃんがくる前に、大家さんに相談したいことを済ませようと
もう一杯お茶を淹れて、側に座った。
大きく垂れがちな目を見れば、にっこり笑うので
なにか毒気を抜かれる気分で話を始めるおすみだった。
そんな朝に、おすみはいつものように身支度を整え始めた。
水瓶から柄杓で水を汲んで飲み、顔を洗うための手拭いを桶で濡らした。
温かな時分だ。
長屋から出て良い陽気にひとつ、伸びをした。
『まだまだ背が伸びる年だ。
日をいっぱい浴びて良く働きなさい』といろいろくれる
おさと婆さんの店にそろそろ人手が必要になるだろう。
そんなことを考えて歩いていたら、お狐さんの社についた。
いつものように、手を合わせて願い事をした。
まだ時間があるので、掃除がわりに葉っぱを拾って集めておく。
今日は、物売りの仕事ではないため時間がある。
大家さんの家に足を向けた。
スッと長屋の扉を開いて普段の声で言う。
「おはようございます」
声が返ってくるとは思っていない。
朝が弱い人なのだ。
手慣れている台所で、竃に火を入れ朝の支度にかかった。
米を2人分。大根のしっぽ部分を包丁で切る。
鰹節の出汁をとってご飯を炊き、一汁一菜の朝飯のできあがりだ。
脱ぎ散らかされた洗い物を拾いつつ、大家さんを起こすため
部屋に上がる。
「おはようございます!」
声を張って言うが、大家さんに反応はない。
いつものことなので、揺すってみる。
「朝ごはんできましたよ!」
「ん~、おすみちゃん。」
声は出たけど、ここで油断してはいけない。
だって、この前
「え、わたし起きたの?全然覚えがないわ」って言うんだから。
「ちゃんと、起きてください!」
布団を剥がして、
色っぽいはだけた着物で挨拶してくれる。
「おはよう、おすみちゃん。」
にっこりと優しい顔だけどこ、のままだとまた寝てしまうおそれがある。
「はい。いいお天気ですよ?顔を洗ってきてください。」
のっそり起き出したので、今日は起こすのは成功した。
大きなお胸に届くくらいの背の高さしかない。
いろんなところが大きくなる予定のあたしは茶碗にご飯をよそい、
大家さんが座るまでにお茶を用意する。
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なにか毒気を抜かれる気分で話を始めるおすみだった。
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