お狐長屋の両隣り [完結]

BBやっこ

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大家のおとそ

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大家さんの年は三十路(みそじ)を過ぎているが、
若く見える。

美人というよりおっとりとした性質で、少々ゆっくりした話し方をする。
優しくおおらかなのでとてもモテるが、決まった相手がいる。

囲われ者というらしい。独り身に見えるが
旦那さんがべったりついている。

実際にくっついているわけではないが、屈強な男衆が長屋に手伝いにくる。

この土地を用意し建物を建てさせ、おとそを住まわせたのは
旦那さんだ。なかなかここに来れないが何かと気にかけてくれる。

おすみに家賃を納める代わりに、おとその世話をすることになっている。
目がそれほど良くないおとそは、夜暗くなると不便がある。心配なのだ。

日中、用事がある時は男衆に頼めるようにしてある。
おすみは日銭を稼ぐため、物を売る仕事に出かける。

子どもが売る物には、占いなどあるが
おすみの場合、頼まれて物を売り歩くことが多い。

花の季節には茶屋での手伝い、夏は八百屋の店番をして
秋には料理屋に足りない野菜を届けるなど決まった店で使われている。

寒くなってこれば、おとその家で内職をしていた。

暮らし向きの食事と寝床はお狐長屋と呼ばれるここで全て賄えている。
大家さんのおとそとも仲良くやっており、元気に暮らしているが
目的のためにお金を貯めていた。

おすみは日が暮れる頃には戻り、暗くなる前に帰る約束で
おとそと2人で夕餉を供にする約束だった。


夕飯の菜を決めるのは朝。
その買い物には、男衆が協力している。
頼んだ物を買って、夕食の支度の時間に持ってきてくれるのだ。

男衆はいろんな人が来てたけが、最近は決まった人物が来た。
その理由は、
「男どもがおとそさんの色香に惑うから」と囁かれているが、
旦那さんの嫉妬だと思う。おすみの確信だった。

最近来てくれる男衆は、三ちゃんと呼ばれている厳つい男だった。名は三治郎。
ギロリと普段から睨んでいるかのキツい目をしていて、背も高いため
ぶつかれば短い悲鳴を上げられるくらいには恐い顔だ。

姉さん、おとそさんとの距離がしっかりしていて分別ある男と信頼されて
この長屋の出入りをよくしている。

衆道なので女に興味は薄いが世話焼きな性分を見せていた。
仲良くなった子供を気にかけ、おすみも珍しく懐いているようだ、

子供が可愛いとい気持ちはあるが、所帯を持つ気はないと思っている。
猫を拾って育てていることを仲間内で揶揄われている今日この頃な男だった。



「邪魔するぞ。」とおすみの所に声をかけていた。
それにお狐様のところから帰ってきたおすみが横から声をかける。

「三ちゃん」と嬉しそうに挨拶を言った。
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