お狐長屋の両隣り [完結]

BBやっこ

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茶屋のおちか

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茶屋のおばちゃんのおちかさんは、おしゃべりだ。

店の常連さんともよくお喋りしていて、『話をしていただけで日が暮れてた』という事もしばしばあるらしい。

この小さな寺の近くの茶屋は、花見の季節にお手伝いをする約束で、おすみはお駄賃をもらう。
あまりお客さんが来ない時には、おちかさんのおしゃべりを聞いて1日が終わるくらいだ。

おしゃべりを聞くのが大半なお仕事と言えるけど

暇とは言えお客さんは来る。
墓参りの時に一服して行ってもらえるように旦那さんのお袋様が店を開けたのが始まりで、
儲けをしようとやっているのではないらしい。

ご主人の働きで十分に食べれるが、話好きのおちかさんがのんびりやってくれれば良いと
時節によって手伝いも雇ってやってる店だ。

桜の時期は甘酒を売る。お花見団子とお茶も出す。
今日もおちかさんの口の滑らかさは、威勢が良かった。

「『世間、情けは人の為ならず』この前伊勢参りの一団を見てね。うりの旦那の店からも巡礼に行きたいと抜け出す小僧が出るか出ないかって。知り合いの店の小僧が消えたらしいよ。
あらまあ、せっかく奉公しているお店を抜け出してまで行きたいんだねえ。先立つ金がないと苦労するだろうに。

一度は行ってみたいとは言うが、わたしゃ楽な旅路が良いね。以前に行った江ノ島は良かったよお。」

だいたい旅の話になると若い頃に行った江ノ島の話になるのが常だった。

墓参りの人が「お茶をおくれね」と店先で声をかけるのでおすみが持っていく。

「流行りの美人画を旦那が買っていてね。いやべ、別に良いんだよ?旦那が稼いだ金だもの。隠れて買うことないのに。バレバレなんだからさ!そういえば…」の勢いのまま。

変わり朝顔の市がたつ話。怖い盗人どもの悪行やそろそろ、芸人の興行が来るだろうか?粋な良い男だという噂まで話が進み、お客さんが「ご馳走様」と店を後にした。

「簪のひとつでも贈ってくれないもんかね。」の旦那さんへの愚痴になったところで、今日はお暇の時間らしい。


「ほんと、おすみちゃんは良い子だよ、良い子だよ。」

おばさんあたしのことを『可哀想な子』と言ってるのを知っている。
モヤモヤする気持ちもあるけど、春の桜が散るまではこの店に通わせてもらおう。

忙しい時もあるから。
人がたくさんくる日もある

おばさんはおすみに「休憩だ、お土産さ」の気を遣ってくれる良い人だ。おしゃべりは長いけど、暗くなる前には帰してくれる。

“可哀想な女の子”でもおまんまが食えれば良いよ。と、おちかは思っている。
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