お狐長屋の両隣り [完結]

BBやっこ

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父ちゃん

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「お父ちゃん」と言っていたのは、もっと小さい頃だった。その頃を思い出してもお母ちゃんはいない。

お父ちゃんと2人で過ごしていたお長屋で、お隣のおばあちゃんと一緒にごはんを食べるのがいつもだった。

お仕事であたしが寝てから帰ってくる。「お金がない」と言いながら、たまのお酒はご褒美と言って飲んでいた。
そんなお父ちゃんが帰ってこなくなった日。

いつも通り、夕暮れには帰って長屋にいた。
長屋の大家さんに、「お父ちゃんが帰ってこれなくなった」と聞かされた。

その後、知らない大人の人が大家さんと話して、帰ってと行き来する。
あたしにやれる事はないからと、いつもどおりおばあちゃんとごはんを食べた。


今日行くはずだった湯屋はやめになって、早々に床についた。
大家さんの言葉意外はあたしのいつものことだった。

けど
朝お父ちゃんがいない。

起きる前に出て行ってしまう日もあるけど、布団が散らかっていなくて
居ない。

いつものようにおばあちゃんに朝の挨拶をして、井戸へ行くと
おばさん達が噂話をしていた。

これもいつものことなはずなのに。

今日は何だか変。


3日たってもお父ちゃんと顔を合わせなかった。

そのうちあたしは寺に預けられるという話になる。
この長屋に置いておけないんだって。

訳がわからないままあたしは泣いた。
どうすれば良いのかわからないし、お父ちゃんは戻ってこない。

うちにあるもの、触っちゃいけないと言われているもの
摘んできていた白い花は萎れていた。

「親戚は誰かいないのか?」
「いやあ。母親さえわからんだろ?縁のある人はいるんかね。」
「あちゃあ。天涯孤独ってやつかい?!」

遊びに行く気にもなれず、お父ちゃんを待ってた。

「賃料はもらってるが、女の子ひとりじゃなあ。」
「誰か引き取るか?」
「そんな余裕どこもないわさあ~。」

身売りさせる話まで出ていたらしいけど、
ざっ!とあたしの前で止まったのは、十手持ちの親分さん。

「お前さんかい?太七の娘ってのは。」

太七はお父ちゃんの名前。

ゆっくり話してくれた。
「お父ちゃん、お侍さんに絡まれて無礼うちに愛想になってな。
石を投げてなんとか逃げ仰せようとした。

それが当たってな、相手さんが死んだのよ」

よくわからなかった。


お父ちゃんは、島流しになるだろうって。
腕に彫り物2重線が御沙汰の証。

「親戚に心当たりはないか?おっかさんは?」

お母ちゃんについてはわからない
とあたしは俯くだけだった。


暗くなれば、お父ちゃんが帰ってくる気がしたから。
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