お狐長屋の両隣り [完結]

BBやっこ

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仕掛け

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舞台に立つまで稽古不足は芸の名折れ

お狐様の前で考えがまとまった貞吉は
待たせていた男を呼んだ。

今度の舞台にあらすじを決めたのだ。
筋書きを書き留めるため、見習いは20ほどの年で卒なく動いた。

それを見かけ三左が睨む
いや観察しているのだが、これから喝上げするような雰囲気だ。

(どっかで?)

なよっとした雰囲気
化粧が映える顔立ちだった。

その化ける容姿が気に入られている。
舞台で光るものがあると目をかけている見習いだ。

(名前は…)

三味線の音がする。

唄に
「別の長屋になったみたい」とおすみが驚く。
習い事などやっていないから珍しいのだろう。

そのおすみは今日、手習いに寺へ行く。おちかさんの茶屋の近くだ。
寺から茶屋に顔を出して少し手伝ったりお駄賃をもらって、用事を言い付かる。


この日も寺子屋に行ってから茶屋に顔を出した。

「あらおすみちゃん!
寺子屋の帰りかい?」
と言われたのは、荷物を持っているからだろう。

「こんにちは!何かお手伝いすることありますか?」

挨拶して手伝いがいるか聞いてみる。
「今日は大丈夫だね。いつもの御隠居さんが来ただけさ。
まあ出がらしだが、茶でも飲んでいきな。」

以前の長屋でお父ちゃんといた時よりは上等な、お茶を飲んだ。
こうお茶を勧める時は。おちかさんが話をしたい時なんだ。
そのつもりで、座ってお茶を飲み、聞く姿勢に入った。

「そろそろ、若様が来た頃じゃないかい?」

若様とは貞吉のことだ。確かに今日、移り住んできた。
たびの一座の興行が立ったのでわかったのだろう。

「うちにきてくれないかねえ
いや来てもらっても良いもんが出せるわけじゃないが」

とても楽しそうに舞台の話をしてくれる。

珍しくしっかり話し込んでしまい、夕暮れの気配が迫る中

長屋への帰路につく。

人通りの多いよく通る道を進んでいれば
もうすぐ帰りの人でごった返す頃だろう

慌ただしく通り過ぎる人がいた。
その邪魔にならぬよう気をつけて進む。

そこへ


「掏摸だ!!」
大きな声で叫んだ男の声。

ざわつく橋の上、財布を探す浪人の男。
優男が「あっしじゃございませんぜ!」と言い

野次馬が遠巻きに見る。

おすみも何となくその中心を見ていた。

「着物を脱いであっしじゃありやせん!!」
と言い張る男に、

「さようだな、すまぬことをした。」と場が収まる気配がした。
危ういことにはならないらしい。

掏摸に気をつけろと言われるが、おすみは金子を持っていないので
いらない心配だ。


早く帰ろうろ思い立ち、歩を進めようとした時
ふと見知った顔が目に入った気がした

(はて、誰だろうか?)

若旦那風の男を思い出せず
まあいっかと足を早めて帰った。


今日の夕食は三ちゃんと一緒だ。
少し変わった長屋の住人が加わり、初夏の涼しさを感じながら
お狐長屋に帰って来た。


「ただいま~」
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