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7-電脳世界

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「また君に会いたい」

そう男の言葉を耳に残して、私は自身の部屋に戻ってきた。

「何のイベントなの?」


性別や職業、場所によるけどアバター毎で発生する。
招待イベントと街中のイベントで同じ男が現れるなんて変なの。


「私向けの相手として記録されているのかな?」

これも報告を出して。私のアバターが戻ってくるのを待つまでプレイはしない。


仕事をこなした数日後。
アバターのことで呼ばれて、ゲーム会社に行くことになった。

運転手付きの車で送迎という、なんだかVIPな待遇で。


そこで待っていたのはゲームの管理者だという。こだわりの生成りのスーツを着こなした
おじ様で、会社案内のように同行した。


「あなたは別世界の存在を信じるかね?」

「宇宙との交信が進んでいるという話とそれがデマだという人達がいるのは知っていますが」

正直、ただの会社員に関係ない事だと思う。宇宙は広い。そして交流には高い技術と金額が必要だという常識くらい知っていれば困らない。宇宙との交信はプロにお任せだ。

「テクノロジー的には、交信は可能であり相手との交流も進んでいる。それも、複数の世界で。」

ゲームの画面が並ぶそこには不思議な植生、魔法のある世界が映し出されていた。
他の世界が幾つあるのかはわからない。

(ゲーム内の話をしているのだろうか?)
それなら確かに、別の世界を創り出したと思える。リアルであり、仕事も発生した。

私はゲーム内で魔道具を売り、その結果で会社から褒賞を得ることもある。ゲーム内の報酬であることも多いけど。ゲーム休日もあって、羨まれる。
副業に近い構造で、もう一つの世界から収入を得ていると言っても良い。

あの世界は、私のデザインする物を売れる場所だ。
からっきし服飾技術を使いこなせず、日常向きのデザインじゃないから。

ファンタジー感ある服デザインは、ゲーム内でこそ活かされている。

「この会社の裏側をお見せしよう」


そうして、宇宙船との交信室のような部屋の奥に続いて入った。
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