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III 貿易都市

偵察報告 ③

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「で、ヴァルト。どうだった?」
酒を呑んでいたフォレストオウルに、そう声をかけたのはカナンだった。

魔鳥に喋りかけるのは、ちょっとシュール。

首を傾げるヴァルトの表情は、
セリフをつけるとすれば「しょうがねえな」と言ったところだろうか。

渋々、向き直る。
カナンが木の実を準備して、報告会の始まりのようだ。

「冒険者ギルドの長は見つけたか?」 _頷く(諾)
「何か企んでたか?」_頷く(諾)

「商業ギルドと連絡してたか?」_横に振る(否)

ヴァルトの偵察報告会は、
・・芸を仕込んでいるみたいだ。


「直接の連絡はとっていないのカシラ?」
シュルトが呟く
直ぐには動かなかったのか、すでに行動が指示されているのか。


「通信の魔道具はあったか?」_横に振る(否)
直ぐには連絡手段はなく、人を介しているのかも。


「オレらへの襲撃の計画はあったか?」_頷く(諾)

おお!襲撃の計画がわかった。
イエス、ノーで答えさせる方法で魔鳥が応える。正確さが不安だけど。


そこは置いておき、
木の実を啄むヴァルトの姿に癒される。

ほんわか気分でいたが、少し熱くなってきたので
お湯から出て、足だけ湯につける。

ふと見ると、数本の酒瓶が既に空けられていた。

お酒を飲む気は無いので、柑橘の果実水を氷入りで受け取る。
隙アリ!とばかりに、ロードの手でセリの口に木の実が入れられた。
少し驚きつつも、カリカリと咀嚼する。

コツンっ コツ カカカっ!
ヴァルトも嘴で突いて木の実を食べているのを見つめながら、

カリカリカリ、カリッ。

揃って食べる姿をじっくり見られていたのは気づかず、止められないセリだった。

襲撃される対策は、外出を控えるとだけ決定した。
明日からはギムナスへの警護にも着いていくことにする。

警護対象にちょっかいをかけられる可能性がある。
「キースとセリは留守番ネ。」
街中で、魔法をぶっ放すわけにはいかない。

シュルトとカナン、グスタフの3人がギムナスが出かける際に護衛をする
ことに決まった。

ロードは?

「「セリとセットで!」」声をそろえたのは、シュルトとカナン。

街中でロードが問題を起こす割合が高いからだそうだ。
表情を伺えば、ロードに不満はないようだ。

ジャバっと湯から半身上がった、
半身浴でいるキースに目が向いた。

ちゃんと男の体だなと
可愛い顔だから、女の子に見ようと思えば見えると常々思っていた。
遠目でみると特にそう見えるのだが、特徴的な銀の髪色でキースだとわかる。

見ていたのがわかったのか、キースがひと言。

「胸ないね」

多少わかる程度にある胸への感想が来た。
「もう少し育つ…予定」

と答えた。

変な沈黙のあと

ブフっと笑いが起こる。

居心地が悪くなり、お湯に沈めばキースと会話の押収が始まる。

「今16(歳)でしょ?望みないんじゃない?」
「背も伸びるなら、胸も望みはある。なんなら、背は追い越す。」

「ボクのがまだ高い。抜かれる気はしないね」
「靴のカカトの高さが違う」

「ブーツだけど、そんな変わらない」
「<顔を横に振る> 変わってる」
「いいや!変わらない。」

珍しいキースとセリの饒舌さを肴に、杯が進んだ。
ガキの喧嘩だ。大したことない。

割って入ったのは、
「茹ってないか?」と心配声に、冷えた布を渡してきたロード。

「ボクにも頂戴!」とキースが言えば、カチカチの凍った布を投げて渡した。


セリに構っている。
自分以外に意識がいくのは、少々不満なロードだった。
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