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屋敷

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ゆっくりお茶を飲みながら、どうするか決める。

「今日は来ないんじゃない?」

使用人、コックもメイドもいない。
案内してくれる者も、料理を作ってくれる者。ベッドメイキングも自身でやれと言うことか。

「食事も勝手にしろと言うことですか、旦那様に文句を言うべきでは?」

「そうねー。どうされるおつもりなのか。」

嫁入りを歓迎されていないながらも、あの表情には引っかかる。
何か、我慢して…いいえ憂いているような?

「ハムにチーズ。野菜は庭園からと言うことでしょうか。」
「今日は、保存食祭り?」

ここには、保存が効く食糧ばかり蓄えられていた。
備えのようで、普段の食事とは考えられないんだけど。

「食材も使用人の方達と来る予定が、遅れて?」

「もう全部遅れて、なんですね。そもそも用意していないのでは?」

それがあっている気がする。
どうしたんだろう。まるで私のが先に来てしまったみたい。


「全部自分達でやりましょう。旦那様はどうするのかしら。」

「お食事されているんでしょうか。」
「顔色が悪いようにも見えたし、お世話する人がいないわよね。ご自分でなさっているのかしら?」

誰もいないのは確かだ。なら、自分でやっているにだろう貴族らしくないけど。
「用意しておいて、夕食頃に聞きに行く事にしましょうか。」


あの執務室には、書類が山積みだった。何かお急ぎのお仕事をされているのかも。

新妻との会話も顔も合わせられない仕事、かあ。


私とレナは、夕食と寝る準備をする事にした。
客室で一緒に寝るつもりだ。

妻でも、こんな状況じゃあ。まあ、ね?
そんな環境じゃないし。準備もできないわ。

「伯爵家と聞きましたが、懐事情が大変なのでしょうか?」
「もう、失礼よ?そんな話は聞いてないけど。代々薬草の研究家だって聞いたから大変なのかも?」

手慣れた作業を分担する。子爵にナイトレイ家は、元は商人だ。おじいちゃんのおじいちゃんが商売を
広げて、いつのかにか男爵から、子爵になっていたらしい。

私は三女で、お姉ちゃん達はもう結婚してた。
最近わかったミッドナイト家の話は祖先同士の話で、双方忘れていた話を掘り起こしたけど。

「別に忘れててもいいのに。」

伯爵家の話に、子爵がノーって言えるの?
ため息をついても、手は動かした。

料理は覚えた。食べさせたかったのは、アイツだけど。私はもう人妻だ。


私はアイツの事を思い出していてムカついて、レナの話を聞いてなかった。
「旦那様さえいなくなるとか?」

「そんなホラーな展開は嫌」

即座に返答したけど、夕食どきに執務室へ行っても鍵がかかっていた。

誰もいない。


食事の後。
レナと一緒に鍵をかけ、扉の前に机と椅子を置いて


「これでオッケー」

「誰もいないからって油断しないわ」

「寝ますけどね」


準備万端に眠った。
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