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師匠と森の浅いところで訓練をした。
セリの魔法の特性は、水。
攻撃力は期待できないが
森の中で使い勝手の良い属性だ。
生き残るための飲料水としても重宝する。
知らなかったのは、調合をするのに使えること。
「森の恵みと魔力水の波長が合えば、効能の良い魔法薬ができる。」
エルフの得意とするところだと説明を受けた。
長寿の知識、独特の文化で受け継がれた薬のレシピ。
何十年かに一度、出てくるエルフのレシピで薬学の
歴史が変わるということが何度もあったそうだ。
帰ったらその分野本を探そうと決めた。
その上、ヴェーネン家で水魔法は重宝される。
魔導具との親密性が良く、多く操作に使われている。
『やっぱり当主の子だ』
と言われる言葉にモヤつく気持ちがあった。
会った記憶もない、親と名乗り合ったこともない仲で
知らない人間との共通点をあげられても、釈然としない気持ちがある。
“私が、この家の子じゃなかったら?”
最近、よく考える。
森の中で眠れず、暗闇に捕らえられる錯覚。
答えは、“追い出される”だろうと思う。
使用人の誰に呼び止めてもらえるか?とか。
何か貰えるのか?と続きを想像してみても
冷めた考えにしか至らなかった。
#想像_イメージ__#するのは詐欺。
『貴族を騙った罪』
温情でこの地を去る命令をされる。
我が家とは縁のなき者として…
少々の金でも渡される。
そんなお話しと、自分を重ねてみる。
“馬鹿なことを”
そう言ってしまえればどれだけ楽か。
ヴェーネン家の子であると証明できるのは現当主だ。
会ったこともない、顔は絵姿で見ている。
髪瞳の色合いが似ている。それだけの子なら探し出せるだろう
静寂の重みで気持ちが沈む。
生き残ること
当主と相見えるまで。
森の中でボーっとしてはいなかった。
けど、次の瞬間に…
意識が刈り取られていた。
「起きたか?」
低く落ち着いた声に目を向ける。
重い身体、大きな木のウロ内で横たわっていた。
なんとか上体を起こしたが、頭が痛い。
額に大きな手が置かれる。師匠の手だ。剣だこと弓矢を使う指。
『どうかしたのか?』と問おうとした声が、かすれて出なかった。
水筒を差し出される
「2日経っている。記憶は?」
水を飲み、曖昧な記憶だったので首を振る。
森で採取、中型の魔物を討伐して崖を…?
この場所にあるのは、見覚えのない湖だった。
「毒持ちの魔物が出た。中層にいるような蛙の魔物が崖上から降ってきた。」
そいつの毒霧にやられて倒れたらしい。
ここは中層に位置する場所だそう。
晴れたような煌めきのある湖を見たい気持ちがあったが身体は
疲れを訴えていた。
「解毒はできたな。もう少し休め」
休んでいる近くで大人の男性が側にいるのが落ち着かなかった。
ちらりと見る。父親と同じ年頃だろうか?
師匠と呼ぶこの人はエルフだ。それを隠したいらしい。
森に詳しい狩人、高ランクのソロ冒険者。
訳ありなのはわかる。その事より
彼の技術と知識を吸収するのが先だ。
視線に気づいたようで、ぎこちない手で気遣ってくれる。
今は貴族の子息としてではなく
“セリ”として、いられるだろうか?
誰にも必要とされないのは、寂しい。
要らないと捨てられるのは、悲しい。
空虚だな
と思っていたら眠りがやってきた。
セリの魔法の特性は、水。
攻撃力は期待できないが
森の中で使い勝手の良い属性だ。
生き残るための飲料水としても重宝する。
知らなかったのは、調合をするのに使えること。
「森の恵みと魔力水の波長が合えば、効能の良い魔法薬ができる。」
エルフの得意とするところだと説明を受けた。
長寿の知識、独特の文化で受け継がれた薬のレシピ。
何十年かに一度、出てくるエルフのレシピで薬学の
歴史が変わるということが何度もあったそうだ。
帰ったらその分野本を探そうと決めた。
その上、ヴェーネン家で水魔法は重宝される。
魔導具との親密性が良く、多く操作に使われている。
『やっぱり当主の子だ』
と言われる言葉にモヤつく気持ちがあった。
会った記憶もない、親と名乗り合ったこともない仲で
知らない人間との共通点をあげられても、釈然としない気持ちがある。
“私が、この家の子じゃなかったら?”
最近、よく考える。
森の中で眠れず、暗闇に捕らえられる錯覚。
答えは、“追い出される”だろうと思う。
使用人の誰に呼び止めてもらえるか?とか。
何か貰えるのか?と続きを想像してみても
冷めた考えにしか至らなかった。
#想像_イメージ__#するのは詐欺。
『貴族を騙った罪』
温情でこの地を去る命令をされる。
我が家とは縁のなき者として…
少々の金でも渡される。
そんなお話しと、自分を重ねてみる。
“馬鹿なことを”
そう言ってしまえればどれだけ楽か。
ヴェーネン家の子であると証明できるのは現当主だ。
会ったこともない、顔は絵姿で見ている。
髪瞳の色合いが似ている。それだけの子なら探し出せるだろう
静寂の重みで気持ちが沈む。
生き残ること
当主と相見えるまで。
森の中でボーっとしてはいなかった。
けど、次の瞬間に…
意識が刈り取られていた。
「起きたか?」
低く落ち着いた声に目を向ける。
重い身体、大きな木のウロ内で横たわっていた。
なんとか上体を起こしたが、頭が痛い。
額に大きな手が置かれる。師匠の手だ。剣だこと弓矢を使う指。
『どうかしたのか?』と問おうとした声が、かすれて出なかった。
水筒を差し出される
「2日経っている。記憶は?」
水を飲み、曖昧な記憶だったので首を振る。
森で採取、中型の魔物を討伐して崖を…?
この場所にあるのは、見覚えのない湖だった。
「毒持ちの魔物が出た。中層にいるような蛙の魔物が崖上から降ってきた。」
そいつの毒霧にやられて倒れたらしい。
ここは中層に位置する場所だそう。
晴れたような煌めきのある湖を見たい気持ちがあったが身体は
疲れを訴えていた。
「解毒はできたな。もう少し休め」
休んでいる近くで大人の男性が側にいるのが落ち着かなかった。
ちらりと見る。父親と同じ年頃だろうか?
師匠と呼ぶこの人はエルフだ。それを隠したいらしい。
森に詳しい狩人、高ランクのソロ冒険者。
訳ありなのはわかる。その事より
彼の技術と知識を吸収するのが先だ。
視線に気づいたようで、ぎこちない手で気遣ってくれる。
今は貴族の子息としてではなく
“セリ”として、いられるだろうか?
誰にも必要とされないのは、寂しい。
要らないと捨てられるのは、悲しい。
空虚だな
と思っていたら眠りがやってきた。
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