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閉ざされる屋敷

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この時期は、寒さに耐え
静かに暮らす日々だった。今回はそうはいかないようだ。

背中に感じる接触で寒さは緩む。
氷の魔力を使うロードがべったりとくっついてくるのに慣れてきた頃

魔力として顕在させなければ、冷たさはないとわかる。

「ロードにくっついてると冷えないか?」と俺の方があったかいぞ?と付け足された
カナンに冷風を送っている。

仲が良いんだろう。
「風邪ひきそうなんだけど?」という言葉に耳がヘニョと下がり
モフッとした尻尾が目につく。

「毛があるだろ。」
「あっても寒いもんは寒いんだよっ!」

(寒いんだ)と揺れる尻尾を見ながら思った。

2人とも寒さに強いのかと思っていたけど
「「活動できるが、寒いものは寒い!」」だそうで平気なわけではないようだ。

この辺は雪は降り積もらないけど、冷たい風が吹く。
そこそこの装備は必要だが
雪の降り積もる北の地が故郷らしく、装備品はあるらしい。

森なので身軽に行った方が良いけど
今度装備は荷物を見せてもらおう。高ランク冒険者の使っているものって興味がある。

軽妙なやりとりに、ロードの膝上から聞いていた。
そう、膝の上が当たり前みたいになってる。

失礼なのでは?と退こうと思う限りに移動しようとすると
手で言葉で留め置かれる。

腕力では勝てないが、用事で断りを入れれば離してくれて
後ろにくっつかれる。

謎の原理が動いている。
それに慣れてきているのも問題だと思うが

引き離した分だけ、締め付けが上がるのは明らかで
諦めも肝心と諭されたことで現状維持。

周りが触れない状況だが
サディスの目は冷たく光る。

それを無視しつつ
交流を深めた。


日中、ロードとカナンと会話して、昼はシュルトの手伝いでキッチンにいたり
夕方にはキースと魔導具の話をして、グスタフの様子を見る。

皆マイペースに過ごしているようだ。
熱中して食事が疎かになるのは心配だが、よくあることらしい。
夜食を作ったりと慣れた対応だった。


「森に行ってきても良いか?」と言い出したのはカナン。

「浅いところとこの時期なら中層も行ける。」
冒険者同士のように話のも慣れた。

元々行きたいと言われていたが話だ。
浅いところの案内と観測しに行きたいので
そろそろ良いか。

今回、貴族として迎え入れる立場だ。案内をほっぽり出して森へ行くわけにもいかず
また、森への案内もホスト側の役目。


久々の出かける準備に、気分は上がる。

軽く手合わせもしており、「自衛はオッケーだな!」と言われたので
嬉々として案内係になろう。


そのうち中層に行きたいというのが私の要望だ。
この時期に森に行けるのは楽しみであった。
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