【長編・完結】この冒険者、何者?〜騎士さまと噂の冒険者は全てを見通す目と耳をお持ちです〜

BBやっこ

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それぞれの視点

冒険者ギルド受付の男

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テキトーが、モットー。

目立つ冒険者を眺めるのが日課だった。

「あ、騎士さま来てる。」
そう呟けば、ギルドの女性が湧き立つ。上司に見つからない程度に手を止めたりしていた。

物腰の柔らかさ、大人の色気。ババンと出しているお色気も嫌いじゃないが、男としてああいうのがモテる余裕のある男というのなんだろうかとつい見てしまう。ここ、冒険者ギルドなんだけどなと黄色い声をなんとか潜めているギルド員を横目に。ところでさ…

「冒険者として強いのか?」

女冒険者達はどちらんでも良い!と盛り上がっていて参考にならない。他の部分が気になるようだ。
結婚しているか?良い相手はいるのか、好みは誰か。どう誘うかと話し合っている。

「俺が行っても良いぜ?」

綺麗に流されたわ。本気なのに。ちょうど、知り合いでクラン長もやっている冒険者の男に聞いてみた。
“蛇の眼”のクラン長に今回の件で関わった男についての印象を聞く。


「できる、な」

この評価は、強いのだろう。どの方向にかはわからないが、世渡りもそこそこな頭脳派的な?
本当にできるか俺にはさっぱりわからないが、たまに冒険者ギルドに来て依頼を眺めているのを見かける。

あくせく働かなければ、その日暮らしが大半の実情。冒険者の武器防具を揃えるにはかなりの金が必要で、なければ命を落とす。危険な魔物と対峙し、時には盗賊に襲われても生き残る必要がある。

過酷な職業だが、この町ではそれほど難易度が高い依頼もない。毎回眺めるほどか?

森が近く、依頼は多いが高い報酬や技術を求めるなら街の方まで行く。実際、難しいとされた森の依頼は街のギルドへ送られる。ここは比較的平穏で田舎というには、田舎に失礼なくらい人が行き交う町なのだ。

俺の村は妹分が1人とヤンチャ盛りが3人が同世代で、恋人も作れない。

だから俺は、町のギルドで働く!新しい出会いを求めて。
俺自身は冒険者ではないが、関わる事でカッコいいって言ってもらえるかもって。

「希望はなかなか見えない。」

あの騎士さまと呼ばれている男が現れて、余計に見込みがなくなった。


モテる。
けど、それほど情報が出ないんだよな。

冒険者同士なんだから酒呑にいっちゃえよ!俺が行きたいよ。柔らかそうっていうより強そうな女冒険者だけど、そこが良いらしいよ?俺は弟扱いとかされて終わるし、後は暮らしに必須だとデートも行けないな。


踏まれたいとか言ってた冒険者の奥さんを持つバカは無視して、奥さんの働きに出れるって強いよな。
危険なところに行くってのは心配かな。しかも他の男と危険を冒す?

冒険者同士のカップル成立の確率について。同グループでは大半がそうだと俺の計算結果が出ている。


そもそも、ギルド員を誘うって禁止されています。

「それをあのバカは、やったな。」



もともと周りをバカにしている奴で、俺もされたか。
頭は良いんだろうな。書類仕事は得意だった。だからこんな町のギルドでは“慣れてから異動”だ。

「待てなかったのかねー?」
「生き急いでいるよな。」

「お前がのんびりし過ぎてんだよ」



「そんで、その尻拭いっていうか。」

蛇の眼ギルドのギルド長に愚痴る。チビな頃には顔を合わせてた仲なんで知ってる。この男、この町出身なんだよ。このギルドで早朝の依頼をこなして積極的に話しかけて、情報収集や経験を重ねてクランをまとめる長にまでなった。

「立派になって。」
「あ?」

態度は昔からこんなんだわ。

「で、今回の事実確認?ってやつ。」
「なんだ?わざわざ呼び出す事なんてあったか?」


分かっているんだろう。ちょっと過失を認めている感じか?まあ…
「当ギルドでは、特定のクランに特別に依頼を斡旋す流記はありません」


今回捕まったやらかしたアイツの勝手な約束。

襲撃依頼
良い依頼をまわすという餌

ギルドではやらないって宣言。

「ま、妥当だろ」

申し立てはないようだ。そうなるなら終わり。こっちは悪くないと言う立ち位置だったもんな。
共有できれば、俺の仕事はおしまい。


「それはそうと、あのクリスって男に絡みに行ってるのか?」

蛇のようだが結構面倒見も良い。今回は支部でやらかしがあったっていうところだろう。
組織の頭が遠のいたり、広がるとこんな事もあるわな。

それは冒険者ギルドでも言えるのよ。
アイツが勝手しだしたのを止める方法はなかったか?

難しいよねー、まあ騎士様を襲撃したのは犯罪行為。裏のギルドまで使ってさ。
やらかしも収拾つかねえわ。

「あの男か。まあ様子見だな。」

おや珍しい。見かけたら相手に構わず突っ込んで行くような性格なのに。

「気をつけて近づかねえと、逃げられる。」

すでさけられてるんじゃない?


「うちのクランに入らなくても友好関係を築きたい」
「へえ?」

慎重だなあ。それくらいデカい獲物と見てるのか。謎なんだよね、手を出して良いか迷うっていうか。

「冒険者ギルドでも勧誘しろって話上司から出てるんだよねー。」
「のると思うのか?」

「無理だろね。」

自由だ。

「冒険者ギルドに来るのも気紛れ、気が乗ったらって感じで懐は潤ってそうな?」

「そうなら、冒険者も身分証明のためかもな。」

「護衛依頼できるくらいには強いっぽいけど、あの人強いの?」

逡巡して、ゆっくり答えがあった。
「底が知れない」


その騎士さま冒険者は、結構長くこの町に居ることになる。
色々な視線浴びてものんびり過ごすあの男を初見で、冒険者と思う者はいないのだった。
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