【長編・完結】この冒険者、何者?〜騎士さまと噂の冒険者は全てを見通す目と耳をお持ちです〜

BBやっこ

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それぞれの視点

侍るモノ

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我が主人は、のんびりお過ごしの様子だ。私の出番も少ない。

元々の気性は火のように烈しい私だったが、今はもう力を持て余すこともない。動くこともない。
そう自己紹介するために、私は暴れ回っていた過去に蓋をした。私は主人あるじの忠実なるしもべ

私はカザン。
人の形を取れるモノ、その存在は精霊と呼ばれる者。

精霊の成り立ちについては、魔力の凝りから幼生が生まれ、それが大きくなった事で妖精となる。

精霊は、物や場所に存在するモノ。

妖精上がりから、物に宿ったのが精霊。
そう研究書という物に書かれています。主人様の出会った精霊もその2つに分けられるそうです。

私は妖精上がりと言われている方ですね。しかも火の妖精が活火山に宿り精霊ま昇華された。
らしいですよ。私にあるのは、力を持て余し暴れていた記憶です。

それを鎮めるために来たご主人様と戦い、契約した次第です。
今ではなぜあれほど荒れていたのか。若気の至りという物なのでしょうか。

穏やかな日々に、書物とコーヒーを淹れるという趣味を持ちました。
人の文化というのは興味深いですね。作る道具に手順をかけじっくりと待つ時間。

無駄?手間暇をかけるというのは興味深い事象ですよ!
料理というのは、味がよくわかりませんが火の力を与えゆっくりと香り立つのが素晴らしい。

おや、コーヒーはお嫌いですか?あの深く煎り、砕き、透明な器具で火を使って抽出する黒い液体。
まあ私の他に主人様の側にいる、2つの妖精は苦い香りは嫌いなようですよ。

『甘い砂糖の方が良い』とか≪紅茶のが落ち着く≫そうです。

属性が影響しているのでしょうか。今後の研究課題にしておきましょう。
風が吹き言葉を届け、木々が木霊に乗せて情報を伝える。

風は、幼く姿を見せないがよく戯れている。風は気まぐれでもまた主人の元へと戻る。
林は木霊を使い、腕を伸ばして敵を捕らえる。木ほどに小さくはないが、森ほどにはその影響力はない

人の形は取らない妖精という存在でも、その力は強い。人の形は取らずとも、主人の力になるべく側にいるのは同じ。楽しそうとかやっちゃえと言ってますが、穏やかな方でしょう。

殺伐としている時代とは無縁ですよ。穏やかな時勢になったものです。

今が戦の時代であれば、私は納めた火を猛るまま侵略の限りを尽くすでしょう。
私は彼女達より後に付き従ったモノですが、その忠誠は…

『おじちゃーん』

私は、おじちゃんではない。
≪中堅の冒険者、魔法使いかもしれない男≫

そうです、林はわかってますね。
まだ子供で時々はしゃいで突風を出す風。根気強く付き合っていた林を撫でてほめます。伸びてきたツルの部分ですが。

その対応に不服なのか、周りを風が巻き上げます。火を煽るのが風の性分ですが、私が動じることはない。もうその在り方を変えたのですから。

あれはまだ、クリス様と見合った時。荒ぶる私は力に振り回されており…。
おや、この話は聞きたくないですか?まあまたの機会にしましょう。

今回2つとも、主人によく仕えたようで偉いですよ。
撫でる仕草をすれば、楽しげに踊り擦り寄ってきます。こういう行為が幼いのでしょうか。なかなかに小器用な風を吹かせるのですが、

人型であれば、違う対応を学び人の作法を真似るのです。その興味は薄いのでまだ妖精。
彼女達は、愛玩動物やすくすく伸びる植物を思い起こさせます。

まあ人型とて必要がなければ必要ありませんから。風なれば鳥のように、林なら近くにある植物を使って干渉できるのですよ。我々は、得意分野から役割分担となりこの関係性で落ち着いています。

私は変化した精霊ですので、まだ若い。おじちゃんではないのです。

私も人を呼びに行くという役割を担いましたが、騒がしいところは嫌いで。さっさと終わらせました。
主人からはお言葉が…

「コーヒーを淹れてくれ」
側にいる人を気にせず、私はコーヒーを淹れる
この芳しい香り、熱せられた器具の火を見ているとうっとりします。

コーヒーを淹れ終えると、労いの言葉と金子を与えられた。

恭しく礼をして退室した後は、これで酒を買いに行きます!人の姿をとれるのは、こういう時に便利です。
身分の証明ができなければ、さっさと消えれば良いので楽ですね。


よく主人の役に立っていたと自負しますので、彼女達には砂糖や飴を購っておきましょう。
久方ぶりの酒は甘露です。知り合いとも楽しみましょう。


御用命有れば翔け参じる。私は貴方の従者なのです。
人の理に興味を持ってきましたが、主人の行く道に付いて過ごす時間はまだまだ続くのですから。



ええ、精霊の時間感覚というものに照らし合わせても、まだ長く楽しめるのでしょうね。
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