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第一話
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-妖精歴百三十年八月
この世界は、争いで満ちている。
プロデレクトに所属し、アングライルの人間たちを殺して回る俺が言うのは少し違うかもしれないが、たとえ俺がこの場にいなくても人は勝手に争って死んでいく。
世界の平和を望むために戦う二つの組織。そう聞くとどちらの正義が正しいのかを問う戦いをしてるのだとか、馬鹿な考えで構成員は増える。
俺の目の前にいる馬鹿はまさにそれだ。
「未代、右のよろしく。」
俺のことを未代と呼んだ馬鹿の名は田中優成、俺のバディで俺の敵わない相手。プロデレクトの戦闘員養成所の主席だ。
「任せろ、すぐ終わらせる。」
俺たちの仕事は殺人と人質回収と誘拐。
今はその殺人中…と言っても、照準を頭に合わせて引き金を引くだけだから苦でもないし、長くもない。
引き金を引くと弾が出る。魔術を放つ武器だから音はしないが、性能は実弾が出る銃よりも高い。当たれば死ぬ。特に、アングライルに所属するような一般人は簡単に死ぬ。
弾の着弾を確認したら、両足と両肩に一発ずつ撃ち込み、仮に生存できていたとしても逃げられないようにする。
それで反応がなければ俺の仕事は終わりだ。
それは隣の馬鹿も同じようで、終わったことを告げようとして俺と目があった。
「お疲れ」
「今日って他に何かあった?」
俺がお疲れと声をかけるとすぐ質問が来た。そんなもの今日はない。そもそも、今日本来なら何もないオフだった。それなのにこんな雑魚処理のためにわざわざ呼ばれたのだ。
「ない、忘れたか?そもそもはオフだ。」
そう返すと馬鹿は「あ、そっか」とでも言いたげな表情で「帰ろうか」と一言だけ言って俺の前を歩き始めた。
しばらく歩くと、多くの人が俺たちの身なりを見て金か食料を求めて来た。帰る道をそこまで選ばなかったからか気づけばホームレス街と別名がつくエムミロン区にいた。
「おい、助けなくていいのか?正義の味方さん」
俺はそう馬鹿に問いかけた。別になんの意図もない少しふざけて言っただけのつもりだったが、こいつにはそうは聞こえなかったようで、真剣な顔して悩み始めた。
この街には約千人もホームレスがいると言われている。そんな数を救う力はこいつにはないし、話しかけて来た少数。六十人ほどの人間さえも、こいつには救えない。それなのに何をそんなに悩むのか、いよいよこいつは頭を抱え出した。
この街には三日に一度プロデレクトから炊き出しが来る。全員がお代わりできるほどの量の栄養価の高い飯が配られる。
人間ならそれに行けば死なないし、俺たちのような半分妖精の血が混ざったセレスティナは一ヶ月飲食なしでも生きていける。
こいつが助けなくても生きては行ける。まあ、こいつらが生きることを望むなら…だが。
「やめておけ、お前の小遣い程度で数人助けても、それは助けじゃなくて甘い夢だ。お前の金全部こいつらにやっても、子供一人助からねーよ」
そう言うと、この馬鹿は固まった。だから馬鹿の相手は困る。
「ほら、行くぞ。まだあいつら待ってくれてるかもしれないし…ほら!悪い冗談言ったのは謝るから行くぞ!」
ほんと、こいつ俺がいなかったらどうなってるんだか…
これは、本当に正義の味方になりたかった男の物語じゃない。ずっと、正義の味方を助けたかった男の物語だ。
この世界は、争いで満ちている。
プロデレクトに所属し、アングライルの人間たちを殺して回る俺が言うのは少し違うかもしれないが、たとえ俺がこの場にいなくても人は勝手に争って死んでいく。
世界の平和を望むために戦う二つの組織。そう聞くとどちらの正義が正しいのかを問う戦いをしてるのだとか、馬鹿な考えで構成員は増える。
俺の目の前にいる馬鹿はまさにそれだ。
「未代、右のよろしく。」
俺のことを未代と呼んだ馬鹿の名は田中優成、俺のバディで俺の敵わない相手。プロデレクトの戦闘員養成所の主席だ。
「任せろ、すぐ終わらせる。」
俺たちの仕事は殺人と人質回収と誘拐。
今はその殺人中…と言っても、照準を頭に合わせて引き金を引くだけだから苦でもないし、長くもない。
引き金を引くと弾が出る。魔術を放つ武器だから音はしないが、性能は実弾が出る銃よりも高い。当たれば死ぬ。特に、アングライルに所属するような一般人は簡単に死ぬ。
弾の着弾を確認したら、両足と両肩に一発ずつ撃ち込み、仮に生存できていたとしても逃げられないようにする。
それで反応がなければ俺の仕事は終わりだ。
それは隣の馬鹿も同じようで、終わったことを告げようとして俺と目があった。
「お疲れ」
「今日って他に何かあった?」
俺がお疲れと声をかけるとすぐ質問が来た。そんなもの今日はない。そもそも、今日本来なら何もないオフだった。それなのにこんな雑魚処理のためにわざわざ呼ばれたのだ。
「ない、忘れたか?そもそもはオフだ。」
そう返すと馬鹿は「あ、そっか」とでも言いたげな表情で「帰ろうか」と一言だけ言って俺の前を歩き始めた。
しばらく歩くと、多くの人が俺たちの身なりを見て金か食料を求めて来た。帰る道をそこまで選ばなかったからか気づけばホームレス街と別名がつくエムミロン区にいた。
「おい、助けなくていいのか?正義の味方さん」
俺はそう馬鹿に問いかけた。別になんの意図もない少しふざけて言っただけのつもりだったが、こいつにはそうは聞こえなかったようで、真剣な顔して悩み始めた。
この街には約千人もホームレスがいると言われている。そんな数を救う力はこいつにはないし、話しかけて来た少数。六十人ほどの人間さえも、こいつには救えない。それなのに何をそんなに悩むのか、いよいよこいつは頭を抱え出した。
この街には三日に一度プロデレクトから炊き出しが来る。全員がお代わりできるほどの量の栄養価の高い飯が配られる。
人間ならそれに行けば死なないし、俺たちのような半分妖精の血が混ざったセレスティナは一ヶ月飲食なしでも生きていける。
こいつが助けなくても生きては行ける。まあ、こいつらが生きることを望むなら…だが。
「やめておけ、お前の小遣い程度で数人助けても、それは助けじゃなくて甘い夢だ。お前の金全部こいつらにやっても、子供一人助からねーよ」
そう言うと、この馬鹿は固まった。だから馬鹿の相手は困る。
「ほら、行くぞ。まだあいつら待ってくれてるかもしれないし…ほら!悪い冗談言ったのは謝るから行くぞ!」
ほんと、こいつ俺がいなかったらどうなってるんだか…
これは、本当に正義の味方になりたかった男の物語じゃない。ずっと、正義の味方を助けたかった男の物語だ。
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