7 / 12
始まらない英雄譚
しおりを挟む
出会ったばかりのおっさんに「不合格」呼ばわりされた俺の心境、分かってくれるだろうか。
「あ、の~? それって、どういう……?」
「何だ。イブに聞いてなかったのか」
聞くも何も、あのいけすかない美少女にはここに連れてこられただけですが何か。
「助けてもらったことは感謝してるけど、何も聞いてないし。しかも友達見捨てられたし。訳わかんないのはこっちなんだけど!」
俺は席を立ち上がって怒りだした。我ながら、人のよさそうなブルーノに八つ当たりしてるんだろうなあと脳みその一部が冷静に判断する。
ブルーノはふむ、と腕組みした。
「ずいぶんと心細い思いをさせちまってすまなかったな。どうしてお前さんがこの世界に招かれたか、俺から説明させてもらおう。……が、その前にひとつハッキリさせたいことがある」
ブルーノは人のいい笑顔を消し、まっすぐに俺を見つめてきた。
「お前さんの友人を見捨てたのは、お前だ」
「……は?」
「物事には道理ってもんがある。いくら何でもそれまでイブのせいにされちゃあの子があんまり不憫だ」
「不憫て……何でだよ! あいつが樹も一緒に連れてきてくれれば……」
「なあ、アツシ。お前はあの子を何だと思ってんだ?」
俺は息を飲んだ。答えに詰まったからじゃない。目の前のブルーノの気迫に圧されたからだった。
「何でもできるスーパーヒロインか? お前が困っていたら無条件で助けてくれる聖女だとでも?」
「そ、そこまでは……。つか、何だよ。何で俺が怒られて……」
「つまりな、こういうことだ」
ブルーノは理解の遅い生徒(俺のことだ)に言い含めるように身を乗り出した。
「イブはお前と変わらない、普通の女の子なんだよ」
俺は呆気にとられた。重々しいマスクを被って俺たちのピンチに駆けつけたイブ。その印象ばかりが頭に焼きついて、ブルーノの言葉を信じきれない自分がいた。
「……でも、それでも! 俺たちは何も分からないんだぞ。助けてくれたって、親切にしてくれるのだって、当たり前じゃないか。そうだろ?」
「ああ、そうかもしれん」
「そうだよ!」
「でも、お前の友達の手を離したのはお前だろ?」
その言葉で頭にガツンと衝撃を受けた気がした。
「イブに何を言われようが、友達が大事ならお前だけでも助けに向かうこともできたはずだ。違うか?」
あの時、イブは俺の手を引いた。俺に捕まっていた樹の手を、俺は掴めなかった。俺は、それを……。
「イブのせいに、してたのか?」
ブルーノは黙っていた。俺の呟きにそうだとも違うとも言わなかった。
俺は力なく椅子に座った。自分が情けなかった。
「まあ、何だ。気を落とすな。責めるみたいこと言って悪かったな」
ブルーノが席を立ち、俺の後ろからポンと肩を叩いた。優しい手だった。
「けど、道理に合わないことをイブの責任にするわけにはいかなかったんだ。それだけは分かってくれ」
「……した」
「ん?」
「すんません、した」
俺は俯いたままそれだけ呟いた。ブルーノの大きな手が、今度は俺の頭を乱暴に撫でた。
「できれば、今のはイブに直接言ってやってくれ」
「あい」
俺の頭はブルーノにされるがまま左右に揺れたが、それがちっとも嫌じゃなかったんだ。
「んで、俺がここに招かれた理由ってのは何なんスか?」
「ああ、簡単なことだ」
ブルーノが淹れてくれた何たらのお茶とやらを二人で飲む頃には、俺たちはけっこう打ち解けあっていた。お茶は紅茶に似ているが、俺が知ってるものよりややとろみがあって美味かった。
「要するに、お前達の中から英雄候補を探そうって魂胆だ」
「えいゆう?」
俺の頭の中に有名なゲームのオープニングテーマが鳴り響いた。そしてかっこよく武装したイケメンの英雄たちが、颯爽と武器を振るって敵の軍勢をなぎ倒し、世界中の声援に笑顔で応えてみせる。
……ところまで想像して、俺はまじまじと言った。
「俺は違うスよ」
「うん、よく分かってる」
ブルーノもそこはあっさりと肯定した。
「言っただろう、不合格だって」
「あー、そういう不合格?」
「ああ。愛国心を持つのは良いことだが、大事なものを手放すくらいの覚悟がないと話にならんからな」
「そうスよね。第一……」
第一、俺には英雄になろうなんてこれっぽちも思ってない。むしろ帰らせてもらえるのなら、何を置いてでも真っ先に家に帰りたいと思っているくらいだ。
「俺なんかよりブルーノの方がよっぽど強そうだし。そんなに人手不足なんスか?」
「ああ。ていうかな、この世界の人間も現在進行形で戦ってるんだよ」
「何と?」
「そりゃあ色々さ。色々あるけど、今は異民族どもとの戦争が一番の問題だな」
「戦争……」
お茶のカップを握る手に自然と力が込められた。
「戦争、してんスか」
「まあな、世界は広いから。皆自分たちの縄張りを広げようと必死なのさ」
「それで、英雄が必要?」
「ああ。だが正直なところは、少しでも戦力が欲しいってだけなんだろうがな」
ブルーノは大きなため息をついてみせた。
「異世界の技術、知識、戦力。何でもいいのさ。この状況を打開できる何かが得られるかもしれない」
「得られたんスか?」
「得られてたら、お前さんがここに招かれることはなかったろうな」
そう言って大きな声で笑うブルーノを、俺は睨みつけた。どうせ俺は何の役にも立ちませんよ。
「ははは、むくれるな。皆同じさ。大半はお前みたいなボンクラだ。気にすんな」
「ボンクラて」
「招かれたはいいものの、身の置き場がなくて自助集団を作ってる連中も知ってる。面倒な手続きのあれこれが済んだら、お前も連れてってやるから」
「え?」
俺は面食らった。何かが噛み合ってない気がする。
「ちょっと。俺は不合格なんスよね?」
「そうだ」
「じゃあ、この国には必要ないんスよね?」
「まあ、そうかな」
「なら帰らせてほしいんスけど」
俺はごく当然の要求をした。だよな? 間違ってないよな?
しかし、ブルーノは渋い顔をして唸った。何だよ、どういうことなんだよ?
「それがなあ……いや、難しいことはよく分からんのだが、招かれた人間――この世界では『寄り人』と呼ぶんだが、お前たちはそう簡単には帰れないんだ」
「はあ!?」
俺はこの世界に来て何度目かの悲鳴を上げるのだった。
「あ、の~? それって、どういう……?」
「何だ。イブに聞いてなかったのか」
聞くも何も、あのいけすかない美少女にはここに連れてこられただけですが何か。
「助けてもらったことは感謝してるけど、何も聞いてないし。しかも友達見捨てられたし。訳わかんないのはこっちなんだけど!」
俺は席を立ち上がって怒りだした。我ながら、人のよさそうなブルーノに八つ当たりしてるんだろうなあと脳みその一部が冷静に判断する。
ブルーノはふむ、と腕組みした。
「ずいぶんと心細い思いをさせちまってすまなかったな。どうしてお前さんがこの世界に招かれたか、俺から説明させてもらおう。……が、その前にひとつハッキリさせたいことがある」
ブルーノは人のいい笑顔を消し、まっすぐに俺を見つめてきた。
「お前さんの友人を見捨てたのは、お前だ」
「……は?」
「物事には道理ってもんがある。いくら何でもそれまでイブのせいにされちゃあの子があんまり不憫だ」
「不憫て……何でだよ! あいつが樹も一緒に連れてきてくれれば……」
「なあ、アツシ。お前はあの子を何だと思ってんだ?」
俺は息を飲んだ。答えに詰まったからじゃない。目の前のブルーノの気迫に圧されたからだった。
「何でもできるスーパーヒロインか? お前が困っていたら無条件で助けてくれる聖女だとでも?」
「そ、そこまでは……。つか、何だよ。何で俺が怒られて……」
「つまりな、こういうことだ」
ブルーノは理解の遅い生徒(俺のことだ)に言い含めるように身を乗り出した。
「イブはお前と変わらない、普通の女の子なんだよ」
俺は呆気にとられた。重々しいマスクを被って俺たちのピンチに駆けつけたイブ。その印象ばかりが頭に焼きついて、ブルーノの言葉を信じきれない自分がいた。
「……でも、それでも! 俺たちは何も分からないんだぞ。助けてくれたって、親切にしてくれるのだって、当たり前じゃないか。そうだろ?」
「ああ、そうかもしれん」
「そうだよ!」
「でも、お前の友達の手を離したのはお前だろ?」
その言葉で頭にガツンと衝撃を受けた気がした。
「イブに何を言われようが、友達が大事ならお前だけでも助けに向かうこともできたはずだ。違うか?」
あの時、イブは俺の手を引いた。俺に捕まっていた樹の手を、俺は掴めなかった。俺は、それを……。
「イブのせいに、してたのか?」
ブルーノは黙っていた。俺の呟きにそうだとも違うとも言わなかった。
俺は力なく椅子に座った。自分が情けなかった。
「まあ、何だ。気を落とすな。責めるみたいこと言って悪かったな」
ブルーノが席を立ち、俺の後ろからポンと肩を叩いた。優しい手だった。
「けど、道理に合わないことをイブの責任にするわけにはいかなかったんだ。それだけは分かってくれ」
「……した」
「ん?」
「すんません、した」
俺は俯いたままそれだけ呟いた。ブルーノの大きな手が、今度は俺の頭を乱暴に撫でた。
「できれば、今のはイブに直接言ってやってくれ」
「あい」
俺の頭はブルーノにされるがまま左右に揺れたが、それがちっとも嫌じゃなかったんだ。
「んで、俺がここに招かれた理由ってのは何なんスか?」
「ああ、簡単なことだ」
ブルーノが淹れてくれた何たらのお茶とやらを二人で飲む頃には、俺たちはけっこう打ち解けあっていた。お茶は紅茶に似ているが、俺が知ってるものよりややとろみがあって美味かった。
「要するに、お前達の中から英雄候補を探そうって魂胆だ」
「えいゆう?」
俺の頭の中に有名なゲームのオープニングテーマが鳴り響いた。そしてかっこよく武装したイケメンの英雄たちが、颯爽と武器を振るって敵の軍勢をなぎ倒し、世界中の声援に笑顔で応えてみせる。
……ところまで想像して、俺はまじまじと言った。
「俺は違うスよ」
「うん、よく分かってる」
ブルーノもそこはあっさりと肯定した。
「言っただろう、不合格だって」
「あー、そういう不合格?」
「ああ。愛国心を持つのは良いことだが、大事なものを手放すくらいの覚悟がないと話にならんからな」
「そうスよね。第一……」
第一、俺には英雄になろうなんてこれっぽちも思ってない。むしろ帰らせてもらえるのなら、何を置いてでも真っ先に家に帰りたいと思っているくらいだ。
「俺なんかよりブルーノの方がよっぽど強そうだし。そんなに人手不足なんスか?」
「ああ。ていうかな、この世界の人間も現在進行形で戦ってるんだよ」
「何と?」
「そりゃあ色々さ。色々あるけど、今は異民族どもとの戦争が一番の問題だな」
「戦争……」
お茶のカップを握る手に自然と力が込められた。
「戦争、してんスか」
「まあな、世界は広いから。皆自分たちの縄張りを広げようと必死なのさ」
「それで、英雄が必要?」
「ああ。だが正直なところは、少しでも戦力が欲しいってだけなんだろうがな」
ブルーノは大きなため息をついてみせた。
「異世界の技術、知識、戦力。何でもいいのさ。この状況を打開できる何かが得られるかもしれない」
「得られたんスか?」
「得られてたら、お前さんがここに招かれることはなかったろうな」
そう言って大きな声で笑うブルーノを、俺は睨みつけた。どうせ俺は何の役にも立ちませんよ。
「ははは、むくれるな。皆同じさ。大半はお前みたいなボンクラだ。気にすんな」
「ボンクラて」
「招かれたはいいものの、身の置き場がなくて自助集団を作ってる連中も知ってる。面倒な手続きのあれこれが済んだら、お前も連れてってやるから」
「え?」
俺は面食らった。何かが噛み合ってない気がする。
「ちょっと。俺は不合格なんスよね?」
「そうだ」
「じゃあ、この国には必要ないんスよね?」
「まあ、そうかな」
「なら帰らせてほしいんスけど」
俺はごく当然の要求をした。だよな? 間違ってないよな?
しかし、ブルーノは渋い顔をして唸った。何だよ、どういうことなんだよ?
「それがなあ……いや、難しいことはよく分からんのだが、招かれた人間――この世界では『寄り人』と呼ぶんだが、お前たちはそう簡単には帰れないんだ」
「はあ!?」
俺はこの世界に来て何度目かの悲鳴を上げるのだった。
0
あなたにおすすめの小説
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
無能妃候補は辞退したい
水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。
しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。
帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。
誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。
果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか?
誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる