3 / 32
第3話 遭遇
しおりを挟む
それからおよそ一週間が経過した。
俺は充実感に溢れた毎日の中にいた。
森の中を歩く途中、地面から生える山菜を摘み取っていく。
「おっ、これは確か数日前に食って美味かったやつだな。今日はこれを中心に煮込んだものを食べるか」
この一週間でこの辺りに生える食材はほとんど口にした。
山菜の種類や栄養素は分からず、毒がある可能性もあるのだが、俺には毒耐性があるためそれを気にする必要はない。
食材を集めた俺は、自分の家に戻る。
森の中にふっと現れる、木々のない開かれた空間。
そこにはポツンと小さな小屋が立っていた。
この小屋は、周囲の木々を使って、俺の手で自ら作り上げたものだ。
邪神討伐の遠征で野宿には慣れているが、さすがにずっと地べたで眠るというわけにもいかないため、造ってみたというわけだ。
小屋の周囲に常時展開している、雨風や獣の襲撃を防ぐ結界を抜けた後、俺は小屋の中に入る。
こちらもまた急造の鍋を取り出すと、小さく唱えた。
「ウォーター、ファイア」
そして、沸騰した鍋に今日取ってきた山菜を入れる。
グツグツという音とともに煮込まれていき、食欲をそそる香りが鼻腔をくすぐる。
調味料とかは特にないが、こちらに生えている山菜は、向こうの世界にある魔草なんかよりよっぽど旨い。
俺にとってはごちそうだった。
「よし、できたな」
出来上がった料理を木皿によそい、木のスプーンで食べていく。
もちろん、木皿もスプーンも俺が手ずから作り上げた。
この一週間で、だいぶ物を作ることにも慣れたというものだ。
料理自体も期待通りかなり美味かった。
舌に残るピリリとした感覚が、なんとも言えないアクセントとなっている。
「ふー、食った食った」
食後、腹を撫でながらそう言った。
人と話したりする機会はないが、誰かに気を使う必要もない、ゆったりとした平和な時間。
それを堪能していた、次の瞬間だった。
「――――ッ、これは!」
研ぎ澄まされた俺の感覚が、その存在を捉えた。
ここから南方に1キロ。
感知範囲に、魔獣が存在していることを把握した。
魔獣、それは邪神と同様、悪意の込められた魔力が集結して生み出された災厄。
邪神に比べれば脅威度は低いが、それでも戦闘訓練をしていない者が倒すことはできない程の強さだ。
「まさか、この世界にも魔獣がいるとはな。いや、魔力があるんだからそれ自体は不思議じゃないか」
なんにせよ、さすがに放置というわけにはいかないだろう。
「久々の出陣だな」
そう呟いた後、俺は強く地面を蹴り駆け出した。
そして十秒後、現地に到着する。
そこで俺は驚くべき光景を目にした。
「あれは、女の子か……?」
人の体ほどの高さを誇る漆黒の魔獣の前には、年齢が俺と同じか少し下くらいの少女がいて、尻餅をついていた。
彼女が纏うオーラが小さかったため、遠くからでは気付けなかったようだ。
理解できるのは、彼女が今、魔獣に襲われて危機に瀕していること。
極力この世界の人間にかかわるつもりはなかったが、ここで見捨てるのも寝覚めが悪い。
『ガルゥゥゥゥゥ!』
「きゃあっ!」
襲い掛かる魔獣と、悲鳴を上げる少女。
それを見て俺は、素早く聖剣を召喚し――振るった。
純白の剣閃が空を走り、魔獣の体を一刀両断する。
それと同時に、魔獣は黒色の靄となって消滅していった。
……うん、やっぱり邪神と比べたら雑魚だった。
たぶんデコピンでも倒せたな。
「……って、あれ? 妖魔は?」
少女は突然の出来事に、目を丸くしながら周囲を見渡していた。
まずい、このままだと俺の存在がバレるかもしれない。
「あっ、あそこに人影が。待ってください、話を――!」
やばい、気付かれた。
俺を引き留めようとする少女の声を振り払うようにして、俺はその場から立ち去るのだった。
俺は充実感に溢れた毎日の中にいた。
森の中を歩く途中、地面から生える山菜を摘み取っていく。
「おっ、これは確か数日前に食って美味かったやつだな。今日はこれを中心に煮込んだものを食べるか」
この一週間でこの辺りに生える食材はほとんど口にした。
山菜の種類や栄養素は分からず、毒がある可能性もあるのだが、俺には毒耐性があるためそれを気にする必要はない。
食材を集めた俺は、自分の家に戻る。
森の中にふっと現れる、木々のない開かれた空間。
そこにはポツンと小さな小屋が立っていた。
この小屋は、周囲の木々を使って、俺の手で自ら作り上げたものだ。
邪神討伐の遠征で野宿には慣れているが、さすがにずっと地べたで眠るというわけにもいかないため、造ってみたというわけだ。
小屋の周囲に常時展開している、雨風や獣の襲撃を防ぐ結界を抜けた後、俺は小屋の中に入る。
こちらもまた急造の鍋を取り出すと、小さく唱えた。
「ウォーター、ファイア」
そして、沸騰した鍋に今日取ってきた山菜を入れる。
グツグツという音とともに煮込まれていき、食欲をそそる香りが鼻腔をくすぐる。
調味料とかは特にないが、こちらに生えている山菜は、向こうの世界にある魔草なんかよりよっぽど旨い。
俺にとってはごちそうだった。
「よし、できたな」
出来上がった料理を木皿によそい、木のスプーンで食べていく。
もちろん、木皿もスプーンも俺が手ずから作り上げた。
この一週間で、だいぶ物を作ることにも慣れたというものだ。
料理自体も期待通りかなり美味かった。
舌に残るピリリとした感覚が、なんとも言えないアクセントとなっている。
「ふー、食った食った」
食後、腹を撫でながらそう言った。
人と話したりする機会はないが、誰かに気を使う必要もない、ゆったりとした平和な時間。
それを堪能していた、次の瞬間だった。
「――――ッ、これは!」
研ぎ澄まされた俺の感覚が、その存在を捉えた。
ここから南方に1キロ。
感知範囲に、魔獣が存在していることを把握した。
魔獣、それは邪神と同様、悪意の込められた魔力が集結して生み出された災厄。
邪神に比べれば脅威度は低いが、それでも戦闘訓練をしていない者が倒すことはできない程の強さだ。
「まさか、この世界にも魔獣がいるとはな。いや、魔力があるんだからそれ自体は不思議じゃないか」
なんにせよ、さすがに放置というわけにはいかないだろう。
「久々の出陣だな」
そう呟いた後、俺は強く地面を蹴り駆け出した。
そして十秒後、現地に到着する。
そこで俺は驚くべき光景を目にした。
「あれは、女の子か……?」
人の体ほどの高さを誇る漆黒の魔獣の前には、年齢が俺と同じか少し下くらいの少女がいて、尻餅をついていた。
彼女が纏うオーラが小さかったため、遠くからでは気付けなかったようだ。
理解できるのは、彼女が今、魔獣に襲われて危機に瀕していること。
極力この世界の人間にかかわるつもりはなかったが、ここで見捨てるのも寝覚めが悪い。
『ガルゥゥゥゥゥ!』
「きゃあっ!」
襲い掛かる魔獣と、悲鳴を上げる少女。
それを見て俺は、素早く聖剣を召喚し――振るった。
純白の剣閃が空を走り、魔獣の体を一刀両断する。
それと同時に、魔獣は黒色の靄となって消滅していった。
……うん、やっぱり邪神と比べたら雑魚だった。
たぶんデコピンでも倒せたな。
「……って、あれ? 妖魔は?」
少女は突然の出来事に、目を丸くしながら周囲を見渡していた。
まずい、このままだと俺の存在がバレるかもしれない。
「あっ、あそこに人影が。待ってください、話を――!」
やばい、気付かれた。
俺を引き留めようとする少女の声を振り払うようにして、俺はその場から立ち去るのだった。
1
あなたにおすすめの小説
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る
夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる