魔術学院の最強剣士 〜初級魔術すら使えない無能と蔑まれましたが、剣を使えば世界最強なので問題ありません。というか既に世界を一つ救っています〜

八又ナガト

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第一部 最弱魔術師から最強剣士への成り上がり

05 頂に辿り着くため

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 二日に渡る移動の末、俺とユナはグレイド鉱山の麓にある宿場町に辿り着いた。
 グレイド鉱山に登ろうと思っているらしい冒険者が多く存在する。
 マタシウト鉱石が採掘できる場所まで登ろうとすれば難易度は跳ね上がるが、それなりの質の素材が取れる三合目辺りまではCランクの実力があれば十分だからだろう。
 やはり皆はロッドなどを持っており、剣や槍といった近接武器を持っている者は存在しない。

 俺とユナは宿で二部屋を借りた後、食堂で改めて明日の対策を話し合う。

「マタシウト鉱石は魔力を増幅し、放出する性質を持つ。付近にいる魔物はその分強力になっているはずだ。できるだけ戦闘は避けていこう」
「うん、何体かの魔物と戦闘になるのは仕方ないけど、Aランク以上の魔物とは戦いたくないよね」

 となると、重要となってくるのは感知能力だ。
 接近する魔物にどれだけ早く気づき、対応できるかが肝になる。
 その点、俺ならば通常よりも早く気づくことができるはずだ。
 なんせ普通の魔術師が魔力で感知する中、俺は音や気配で察知する。
 その感知範囲は通常の数倍だろう。
 通常は一日以上かかるだろうと言われている山頂に半日で登り、当日中に戻ってくるのが目標だ。

「――――?」

 方針を定めお互いの部屋に戻ろうとすると、不意に違和感を覚えた。
 一瞬、食堂全体に魔力が走った気がする。
 ユナを含め、他の者達は気付いていないようだ。
 咄嗟に俺は周囲にいる冒険者たちを見渡す。

「どうかしたの、ルーク?」
「なんでもないよ。今日はもう寝よう」

 ユナの言葉にそう答えた後、俺たちは寝室に向かう。
 その途中、俺はローブに顔を隠した一人の男にもう一度だけ視線を向けた。


 グレイド鉱山に登る冒険者は基本的に五人以上のパーティを組み、そのうち最低二人は魔物感知に意識を向けている。
 最大限まで注意深く、ゆっくりと進んでいくのだ。
 そんな中、たった二人でほとんど止まることなく登り続ける俺とユナは、周囲から異常だと思われている様だった。

「なんだあいつら、二人で、しかも感知魔法も使わず進むなんて命知らずか?」
「いやよく見ろよ、確かあの制服は第二学園の生徒だろ? 貴族だかなんだか知らねぇが、才能のない奴らなんだから知恵も足りてねぇだけじゃねぇのか?」
「下手に魔物を刺激しなきゃいいけどな」

 ただでさえ平民からは批判的な意見を向けられる貴族の中でも、才能がないと分かっている相手。
 そんな俺たちを前にして、歴戦の冒険者たちは堂々と愚痴をこぼす。

「ずいぶんな言われようだな」
「そうだね。でも、気にしてらんないよ。私たちにはそうしなくちゃいけないだけの理由があるんだから、進み続けなきゃ」
「ああ、それにそろそろ本格的に魔物も現れる。気を引き締めていこう」
「うん!」

 五合目を過ぎたあたりから、どうしても戦闘を避けられなくなる。
 Cランク以上の魔物も現れ始め、少々手間取ることも増えていく。
 それでも、俺とユナの前ではどの魔物もそれほどの脅威ではなく――

「ユナ、そっちにいったぞ!」
「うん、任せて! えいっ」

 ユナは自身に迫る鳥型のCランク魔物、ハングリーバードを魔心結界で食い止めると、続けてその一部から棘を生み出す。
 その棘に体を貫かれたハングリーバードは、抵抗する暇もなく崩れ落ちる。

「ふう、やった、倒せたよ」
「後ろだ、ユナ!」
「えっ?」

 ハングリーバードを倒せたことによる安堵か、魔心結界を解除したユナの後ろから、猪型の魔物、ラッシュボアが猛烈な勢いで突進してくる。
 結界の再構築が間に合うかは微妙。
 俺はすぐさま大地を蹴り、音速で両者の間に立ちはだかる。

「グルゥァァァア」

 いきなり目の前に現れた俺に対しても戸惑うことなく、ラッシュボアは突進を続ける。
 もしくはあれほど加速した今、もう止まれないのかもしれない。

「はあっ!」

 ぐっと地面を踏みしめ、体のねじりを利用し右手で掌底を放つ。
 ラッシュボアの顔面に衝突すると、パンっという炸裂音が響き、同時に勢いが完全に消える。
 その隙を逃すことなく、俺はその懐に入り足でラッシュボアの腹を蹴り上げる。
 巨体は空を舞った後、ドスンという鈍い音とともに大地に横たわる。

「よし、討伐完了」

 ナイフよりも素手で戦う場面が増えている気がするが、それは仕方ない。
 剣がない今、どう戦っても俺の実力が大きく変わることはないだろう。
 それよりも、今はすぐにでもここを離れなくては。
 戦闘の音が響いたせいで、他の魔物がやってくるかもしれない。

「ユナ、先に進もう」
「うん。あと、助けてくれてありがとね、ルーク」
「っ」

 にこりと笑いながら礼を言うユナを見て、思わず動揺してしまったのはここだけの秘密だ。
 動揺した理由なんて、言うまでもないだろう。
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