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第一部 最弱魔術師から最強剣士への成り上がり
06 遥かなる剣神
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登頂までの道のりは、想像していたよりも余裕があった。
俺の感知能力がうまく作用したことはもちろんだが、何よりユナの魔心から繰り出される結界や攻撃は実に多彩で効果的だった。
Bランク以上の魔物とはほとんど遭遇することもなく、マタシウト鉱石が眠る山頂に到着する。
けれど、それで終わりではなかった。
そこには俺たちが最も恐れていた最強のAランク魔物、ロックドラゴンがマタシウト鉱石を守るように坐していた。
「やっぱりいたか」
「うん、あれを何とかしないと依頼は達成できないよね」
もともと予想していたことだったため、大きな焦りはない。
マタシウト鉱石は質のいい魔力を大量に放出するため、それを取り込むことによって魔物は格段に強化される。
故に、その場所で最も強力な魔物がマタシウト鉱石付近に君臨するのは至極当然のことだ。
そしてこのグレイド鉱山において最強の魔物は、このロックドラゴンだった。
強固な岩石の鱗で覆われた体を持ち、並みの実力者で傷一つ与えることができないほどの魔物だ。
どうにかして回避しマタシウト鉱石を調達したいところだが、さすがにそれは難しい。
俺とユナは視線を交わし、覚悟をあらわすようにこくりと頷く。
「事前の作戦通り、俺が攻撃を与えていく。ユナは何よりも自分の防御に意識を割きながらも攻撃して注意をひいてほしい」
「了解!」
俺とユナが戦闘の意思をあらわにすると、ロックドラゴンはその気配に気づいたのか、ゆっくりと体を起こす。
やはりでかい。体長は10メートル程だろうか。
俺たちの矮躯(わいく)など、軽く踏みつぶされてしまいそうだ。
それでもこいつを倒さないことには、背後で虹色に輝くマタシウト鉱石を採掘することはできない。
こんなナイフでどれほど攻撃が通用するかは不明だが、それでもやるしかない。
「いくぞ!」
「うん!」
俺が前衛として一歩踏み出し、ロックドラゴンに迫る。
するとロックドラゴンは威嚇するように大きく口を開く。
「グォオオオオオオオオオオ!」
声量だけで押しつぶされてしまいそうなほどの迫力がある。
だが、問題はない!
「はあっ!」
手に持つナイフで、ロックドラゴンの脚に切りかかる。
だが硬質な岩石で纏われた鱗を切り落とすには届かず、ただキンッと弾かれるだけの無情な音が響いた。刃こぼれしているのが視界に映る。
「やっぱり、こんな代用品では無茶か」
これならばまだ素手の方がマシだ。
俺はナイフを投げ捨てると、身体強化した体で同じ個所を全力で殴る。
今後はドゴォンという爆音と共に、鱗をわずかに凹ませることに成功する。
「ルーク、上!」
「――ッ」
しかしその程度、ロックドラゴンにすれば全く問題ないらしい。
大きく開かれた口が、俺のすぐ頭上に迫っていた。
ユナの言葉のおかげで、ギリギリのタイミングで回避に成功する。
ロックドラゴンの顔が地面にぶつかった瞬間で、ユナも攻撃を開始する。
「くらえ!」
彼女の魔心から放たれた数十の棘は、しかしロックドラゴンの鱗に弾かれる。
こちらについては傷一つ負わせることはできない。
「そんな!」
ユナは絶望の声を上げているが、悪いことばかりではない。
少なくとも動きの速さについてはこちらが上回っているし、全力の殴打なら鱗に傷を与えられる。
この調子で戦闘を進めれば、いずれ勝つのは俺達だ。
そんな俺の考えは、次の瞬間に覆されることになる。
「グルァアアアアアアアアアアアア!」
「なっ!」
「きゃあっ」
ロックドラゴンが雄叫びを上げた瞬間、大地が、いやグレイド鉱山そのものが激しく揺れ動く。
大地から岩石が次々と飛び出し、俺とユナに襲い掛かってくる。
躱すのに必死な中、どうにか原因を発見する。
ロックドラゴンの足元に接する岩石の大地が、激しく脈動しているのだ。
「まさか、こいつが山を動かしているのか?」
「ルーク、きっと特殊個体だよ! このロックドラゴンは自分に接する岩石を動かせるんだと思う! このままじゃ勝ち目なんてない、早く逃げなきゃ!」
「けど、それじゃ依頼は達成できないぞ!」
「そんなのより、ルークの命の方が大切だよ!」
「――――」
ユナの言葉を聞き、俺は自分に対して羞恥を覚えた。
俺はなんて情けない人間なのだろうか。
本当に異世界を救った勇者なのか自分自身で疑いたくなってしまう程だ。
けれど、そんなのが俺だということくらい理解している。
異世界に渡る以前から、異世界での旅路に至るまで、俺には剣しか才能がないのだと嫌というほど思い知らされてきた。
その過程で体を鍛え、徒手空拳でもある程度は戦えるようにはなったものの、それらは全て剣を振るうために研鑽したものだ。
剣がなくては、十分の一も実力が出せない。
勝ち目はない。なら諦める?
――いや、違う。
俺が諦めるなんてことはありえない。
異世界に召喚されてから、諦めるなんて選択肢は俺の頭から消えた。
目の前に強敵がいるのなら、その壁を乗り越えることだけに全神経を集中させる。
ただそれだけが、俺にできることだ。
ドクンと、心臓が高鳴った。
世界がスローモーションになる。
目前の戦いのみに集中している時にだけ入ることのできる世界だ。
俺は飛んでくる岩石の中から細長いものを一つ掴み、それで他の巨大な岩石を弾き飛ばしていく。
その過程で、手に持つ岩石は少しずつ削られていく。
そして数十の岩石を弾き飛ばした後、とうとうそれは完成する。
自身に飛んでくる岩石を砥石とすることによって、戦闘の中で生み出した歪な石剣。
けれどどんな形であれ、それが剣である以上、俺にとっては最強の武器だ。
音速よりも速く、その石剣を振るう。
するとこれまで弾くばかりだった岩石は真っ二つに斬れ、左右に分かれていく。
「うそ!?」
ユナの驚く声が聞こえた気がしたが、それに意識を割く余裕はなかった。
準備は整った。後は蹂躙するのみ。
俺は石剣を一振りし、数十の剣閃を生み出す。
数十の岩石は細切れに変わり、さらにロックドラゴンを覆う鱗が全て綺麗に剥がれ落ちていく。
鎧のなくなった生身のトカゲなど、雑魚も同然だ。
飛んで逃げようとしても、もう遅い。
「喰らえ」
最後に、力強い一閃を浴びせる。
ロックドラゴンの体はまるで紙切れのように、真っ二つに分かれていった。
次の瞬間、これまでの負荷に耐えきれなかったのか石剣はパラパラと崩れ落ちていく。
同時に俺はスローモーションの世界からもとに戻ってくるのを感じていた。
「ふー」
ゆっくりと深呼吸をする。
何はともあれ、これでロックドラゴンは倒せた。
依頼は問題なく達成できるだろう。
「終わったぞユナ」
俺は未だに驚愕の表情を浮かべるユナに笑いかけながら、そう告げた。
俺の感知能力がうまく作用したことはもちろんだが、何よりユナの魔心から繰り出される結界や攻撃は実に多彩で効果的だった。
Bランク以上の魔物とはほとんど遭遇することもなく、マタシウト鉱石が眠る山頂に到着する。
けれど、それで終わりではなかった。
そこには俺たちが最も恐れていた最強のAランク魔物、ロックドラゴンがマタシウト鉱石を守るように坐していた。
「やっぱりいたか」
「うん、あれを何とかしないと依頼は達成できないよね」
もともと予想していたことだったため、大きな焦りはない。
マタシウト鉱石は質のいい魔力を大量に放出するため、それを取り込むことによって魔物は格段に強化される。
故に、その場所で最も強力な魔物がマタシウト鉱石付近に君臨するのは至極当然のことだ。
そしてこのグレイド鉱山において最強の魔物は、このロックドラゴンだった。
強固な岩石の鱗で覆われた体を持ち、並みの実力者で傷一つ与えることができないほどの魔物だ。
どうにかして回避しマタシウト鉱石を調達したいところだが、さすがにそれは難しい。
俺とユナは視線を交わし、覚悟をあらわすようにこくりと頷く。
「事前の作戦通り、俺が攻撃を与えていく。ユナは何よりも自分の防御に意識を割きながらも攻撃して注意をひいてほしい」
「了解!」
俺とユナが戦闘の意思をあらわにすると、ロックドラゴンはその気配に気づいたのか、ゆっくりと体を起こす。
やはりでかい。体長は10メートル程だろうか。
俺たちの矮躯(わいく)など、軽く踏みつぶされてしまいそうだ。
それでもこいつを倒さないことには、背後で虹色に輝くマタシウト鉱石を採掘することはできない。
こんなナイフでどれほど攻撃が通用するかは不明だが、それでもやるしかない。
「いくぞ!」
「うん!」
俺が前衛として一歩踏み出し、ロックドラゴンに迫る。
するとロックドラゴンは威嚇するように大きく口を開く。
「グォオオオオオオオオオオ!」
声量だけで押しつぶされてしまいそうなほどの迫力がある。
だが、問題はない!
「はあっ!」
手に持つナイフで、ロックドラゴンの脚に切りかかる。
だが硬質な岩石で纏われた鱗を切り落とすには届かず、ただキンッと弾かれるだけの無情な音が響いた。刃こぼれしているのが視界に映る。
「やっぱり、こんな代用品では無茶か」
これならばまだ素手の方がマシだ。
俺はナイフを投げ捨てると、身体強化した体で同じ個所を全力で殴る。
今後はドゴォンという爆音と共に、鱗をわずかに凹ませることに成功する。
「ルーク、上!」
「――ッ」
しかしその程度、ロックドラゴンにすれば全く問題ないらしい。
大きく開かれた口が、俺のすぐ頭上に迫っていた。
ユナの言葉のおかげで、ギリギリのタイミングで回避に成功する。
ロックドラゴンの顔が地面にぶつかった瞬間で、ユナも攻撃を開始する。
「くらえ!」
彼女の魔心から放たれた数十の棘は、しかしロックドラゴンの鱗に弾かれる。
こちらについては傷一つ負わせることはできない。
「そんな!」
ユナは絶望の声を上げているが、悪いことばかりではない。
少なくとも動きの速さについてはこちらが上回っているし、全力の殴打なら鱗に傷を与えられる。
この調子で戦闘を進めれば、いずれ勝つのは俺達だ。
そんな俺の考えは、次の瞬間に覆されることになる。
「グルァアアアアアアアアアアアア!」
「なっ!」
「きゃあっ」
ロックドラゴンが雄叫びを上げた瞬間、大地が、いやグレイド鉱山そのものが激しく揺れ動く。
大地から岩石が次々と飛び出し、俺とユナに襲い掛かってくる。
躱すのに必死な中、どうにか原因を発見する。
ロックドラゴンの足元に接する岩石の大地が、激しく脈動しているのだ。
「まさか、こいつが山を動かしているのか?」
「ルーク、きっと特殊個体だよ! このロックドラゴンは自分に接する岩石を動かせるんだと思う! このままじゃ勝ち目なんてない、早く逃げなきゃ!」
「けど、それじゃ依頼は達成できないぞ!」
「そんなのより、ルークの命の方が大切だよ!」
「――――」
ユナの言葉を聞き、俺は自分に対して羞恥を覚えた。
俺はなんて情けない人間なのだろうか。
本当に異世界を救った勇者なのか自分自身で疑いたくなってしまう程だ。
けれど、そんなのが俺だということくらい理解している。
異世界に渡る以前から、異世界での旅路に至るまで、俺には剣しか才能がないのだと嫌というほど思い知らされてきた。
その過程で体を鍛え、徒手空拳でもある程度は戦えるようにはなったものの、それらは全て剣を振るうために研鑽したものだ。
剣がなくては、十分の一も実力が出せない。
勝ち目はない。なら諦める?
――いや、違う。
俺が諦めるなんてことはありえない。
異世界に召喚されてから、諦めるなんて選択肢は俺の頭から消えた。
目の前に強敵がいるのなら、その壁を乗り越えることだけに全神経を集中させる。
ただそれだけが、俺にできることだ。
ドクンと、心臓が高鳴った。
世界がスローモーションになる。
目前の戦いのみに集中している時にだけ入ることのできる世界だ。
俺は飛んでくる岩石の中から細長いものを一つ掴み、それで他の巨大な岩石を弾き飛ばしていく。
その過程で、手に持つ岩石は少しずつ削られていく。
そして数十の岩石を弾き飛ばした後、とうとうそれは完成する。
自身に飛んでくる岩石を砥石とすることによって、戦闘の中で生み出した歪な石剣。
けれどどんな形であれ、それが剣である以上、俺にとっては最強の武器だ。
音速よりも速く、その石剣を振るう。
するとこれまで弾くばかりだった岩石は真っ二つに斬れ、左右に分かれていく。
「うそ!?」
ユナの驚く声が聞こえた気がしたが、それに意識を割く余裕はなかった。
準備は整った。後は蹂躙するのみ。
俺は石剣を一振りし、数十の剣閃を生み出す。
数十の岩石は細切れに変わり、さらにロックドラゴンを覆う鱗が全て綺麗に剥がれ落ちていく。
鎧のなくなった生身のトカゲなど、雑魚も同然だ。
飛んで逃げようとしても、もう遅い。
「喰らえ」
最後に、力強い一閃を浴びせる。
ロックドラゴンの体はまるで紙切れのように、真っ二つに分かれていった。
次の瞬間、これまでの負荷に耐えきれなかったのか石剣はパラパラと崩れ落ちていく。
同時に俺はスローモーションの世界からもとに戻ってくるのを感じていた。
「ふー」
ゆっくりと深呼吸をする。
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