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第一部 最弱魔術師から最強剣士への成り上がり
07 襲撃者の末路
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ロックドラゴン討伐後、俺とユナはマタシウト鉱石を採掘すると共に、ロックドラゴンの鱗もある程度回収することにした。
ロックドラゴンの鱗は良質な素材になる。
間違いなく高値で買い取ってもらえるだろう。
それに、これほど良質な素材なら強力な剣を作ることもできるかもしれない。
わくわくと、希望で胸が高鳴る。
しかし、改めて回収したマタシウト鉱石と鱗を見るものすごい量だった。
両手では抱えきれない程の光景を前に、ユナは心配そうに俺を見る。
「ねえルーク、本当に大丈夫? なんとか素材袋に入るとはいっても、すごい重さになるよ」
「ものは試しだ。よっと」
素材袋にそれらを入れた後、背負ってみると案外簡単に持ち上がった。
これなら問題なく下山できるだろう。
そう伝えると、ユナは驚嘆の表情を見せる。
「もしかして、それも筋力のおかげなのかな?」
「まあな」
「筋力ってすごいね!」
正確には筋力だけじゃなく魔力を体内で循環させることによって身体能力を上げているのだが、この場で説明する必要はないだろう。
どちらにせよ、筋肉の力が凄いことには変わらないからな。
向こうの世界で戦士のオルドから熱く語られた言葉は一言一句思い出せる。
何はともあれ、俺とユナはグレイド鉱山を下り始めた。
登山時とは異なり、魔物と一切出会わないまま麓に到着することができた。
ユナは安心したように、ほっと息をつく。
「よかったね、ルーク。下りるときには魔物と戦わずに済んで」
「たぶんロックドラゴンの鱗が纏う魔力のおかげだろうな。普通の魔物は自分より強い相手には近づかないから」
「そっか、なるほど。それも考えて回収したんだ。ルークはすごいねっ!」
ユナの誉め言葉を聞き、心が満たされるような気持ちになる。
ここまで純粋に誰かを称賛することができるのは、彼女の美点だろう。
俺は彼女と共に過ごす時間が、心地よいものだと思い始めていた。
「――――」
けれど、そんな時間を邪魔する輩がいるみたいだ。
まずはこっちの問題を解決する必要があるな。
「ルーク、急に止まってどうしたの?」
「何者かに囲まれているみたいだ。戦闘態勢を整えてくれ」
「えっ? う、うん、了解だよ」
疑問を抱きながらも、ユナはすぐに魔心(ましん)を発動し攻撃に備える。
その様子を確認した後、俺は改めて状況を整理する。
宿場町まであと少しと迫ったところだが、何事もなく到達することはできないと察しがついていた。
前方に三名、左右後方に二名ずつ、全員が注意深くこちらを観察している。
距離としては50メートル程だろうか。
敵意が剥き出しなため、気付かない方が難しい。
俺は大きく声を張り上げて牽制する。
「隠れてないで出てこい! もう気付いているぞ!」
すると彼らは人数差があるためだろうか、余裕の表情で姿を現す。
その中の一人には見覚えがあった。
ローブで顔を隠したあの男は、昨日の酒場にいた奴だ。
「本当なら奇襲で片付けたかったんだけど、まさか気付かれるとはね」
ローブの男はやれやれと両手を振りながら、軽薄な口調でそう零す。
「何が目的だ?」
「ああ、背中に抱えている荷物を置いて行ってくれればそれでいいよ」
「なるほど、盗賊か」
「人聞きの悪いことを言わないでほしいな。僕たちは勇敢な冒険者だ。たまたま鉱山で出会った他のパーティと協力して魔物と戦った。不運にも彼らは戦死したけれど、その思いを引き継いで僕たちが討伐に成功したんだよ」
あまりにもふざけた物言いに、俺は思わずため息を零してしまう。
「そういった筋書きで、俺たちを殺して素材を奪うつもりなんだな。となると昨日の魔力感知はターゲットを決めるためのものだったのか」
「なんだ、そこまで気付いていたのか。その通りさ、グレイド鉱山に向かう者の中から実力のない者を事前に探し、疲れ果てて帰還する際に襲撃する。これほど楽な仕事はないよ」
「自分たちが負けるとは考えないのか?」
「ははは、何のために魔力感知で君たちの魔力の質を確かめたと思っているんだい? どうやら君たちは二人とも貴族でありながらろくに魔法も使えない無能みたいだからね。倒すのなんて簡単だし、何より死んだって誰も困らないだろう。だからさ――素直に死んでくれよ!」
その言葉が合図となったかのように、俺たちの周囲を囲む九名の魔術師が攻撃を仕掛けてくる。
炎の槍、氷のつぶて、風の刃。
Cランク級の魔物になら通用しそうなそれらの魔術は、しかし――
「ユナ、頼む」
「うん!」
俺とユナを包む魔心によって、容易く掻き消される。
「なっ、お前らみたいなのが僕たちの攻撃を防ぐなんてありえない!」
「対応が遅すぎるぞ」
長距離から攻撃を仕掛けることに慣れた魔術師の悪癖か、咄嗟の切り替えが遅い。
俺は素材袋からロックドラゴンの鱗を取り出すと、素早く石剣で叩き、八つの破片に割る。
続けてそれらをローブの男を除いた八名に向けて弾き飛ばした。
「ぐほっ」
「がっ!」
「ぶはっ!」
彼ら程度の実力では対応しきれなかったのか、瞬く間に全員が意識を失い崩れ落ちていく。
「な、な、ななな、何が起きたんだよ!」
ローブの男は、この一瞬のうちに起きた出来事を把握できていないらしい。
想像していたよりも遥かに弱い。
これならヌーイとほとんど互角くらいではないだろうか。
「まあなんでもいいか」
俺たちにとって脅威ではないのなら、それでいい。
ゆっくりと歩を進めて男に近づいていくと、彼は怯えた顔で後ずさる。
「まま、待ってくれ! 違うんだ、これは何かの間違いなんだ! そ、そうだ! 今まで稼いできた金をやるから、それで見逃して――」
「うるさい」
「がはっ」
石剣の柄で突き上げるようにして顎を叩くと、ローブの男はそのまま後ろ向きに倒れていく。
魔力感知の際に、俺とユナがまともな魔法を使えないと見破ったところまでは良かったが、本当の実力を測れなかったのが敗因だろう。
何はともあれ、これで無事に宿場町まで戻れる。
……こいつらの後処理は、すごく面倒だが。
ロックドラゴンの鱗は良質な素材になる。
間違いなく高値で買い取ってもらえるだろう。
それに、これほど良質な素材なら強力な剣を作ることもできるかもしれない。
わくわくと、希望で胸が高鳴る。
しかし、改めて回収したマタシウト鉱石と鱗を見るものすごい量だった。
両手では抱えきれない程の光景を前に、ユナは心配そうに俺を見る。
「ねえルーク、本当に大丈夫? なんとか素材袋に入るとはいっても、すごい重さになるよ」
「ものは試しだ。よっと」
素材袋にそれらを入れた後、背負ってみると案外簡単に持ち上がった。
これなら問題なく下山できるだろう。
そう伝えると、ユナは驚嘆の表情を見せる。
「もしかして、それも筋力のおかげなのかな?」
「まあな」
「筋力ってすごいね!」
正確には筋力だけじゃなく魔力を体内で循環させることによって身体能力を上げているのだが、この場で説明する必要はないだろう。
どちらにせよ、筋肉の力が凄いことには変わらないからな。
向こうの世界で戦士のオルドから熱く語られた言葉は一言一句思い出せる。
何はともあれ、俺とユナはグレイド鉱山を下り始めた。
登山時とは異なり、魔物と一切出会わないまま麓に到着することができた。
ユナは安心したように、ほっと息をつく。
「よかったね、ルーク。下りるときには魔物と戦わずに済んで」
「たぶんロックドラゴンの鱗が纏う魔力のおかげだろうな。普通の魔物は自分より強い相手には近づかないから」
「そっか、なるほど。それも考えて回収したんだ。ルークはすごいねっ!」
ユナの誉め言葉を聞き、心が満たされるような気持ちになる。
ここまで純粋に誰かを称賛することができるのは、彼女の美点だろう。
俺は彼女と共に過ごす時間が、心地よいものだと思い始めていた。
「――――」
けれど、そんな時間を邪魔する輩がいるみたいだ。
まずはこっちの問題を解決する必要があるな。
「ルーク、急に止まってどうしたの?」
「何者かに囲まれているみたいだ。戦闘態勢を整えてくれ」
「えっ? う、うん、了解だよ」
疑問を抱きながらも、ユナはすぐに魔心(ましん)を発動し攻撃に備える。
その様子を確認した後、俺は改めて状況を整理する。
宿場町まであと少しと迫ったところだが、何事もなく到達することはできないと察しがついていた。
前方に三名、左右後方に二名ずつ、全員が注意深くこちらを観察している。
距離としては50メートル程だろうか。
敵意が剥き出しなため、気付かない方が難しい。
俺は大きく声を張り上げて牽制する。
「隠れてないで出てこい! もう気付いているぞ!」
すると彼らは人数差があるためだろうか、余裕の表情で姿を現す。
その中の一人には見覚えがあった。
ローブで顔を隠したあの男は、昨日の酒場にいた奴だ。
「本当なら奇襲で片付けたかったんだけど、まさか気付かれるとはね」
ローブの男はやれやれと両手を振りながら、軽薄な口調でそう零す。
「何が目的だ?」
「ああ、背中に抱えている荷物を置いて行ってくれればそれでいいよ」
「なるほど、盗賊か」
「人聞きの悪いことを言わないでほしいな。僕たちは勇敢な冒険者だ。たまたま鉱山で出会った他のパーティと協力して魔物と戦った。不運にも彼らは戦死したけれど、その思いを引き継いで僕たちが討伐に成功したんだよ」
あまりにもふざけた物言いに、俺は思わずため息を零してしまう。
「そういった筋書きで、俺たちを殺して素材を奪うつもりなんだな。となると昨日の魔力感知はターゲットを決めるためのものだったのか」
「なんだ、そこまで気付いていたのか。その通りさ、グレイド鉱山に向かう者の中から実力のない者を事前に探し、疲れ果てて帰還する際に襲撃する。これほど楽な仕事はないよ」
「自分たちが負けるとは考えないのか?」
「ははは、何のために魔力感知で君たちの魔力の質を確かめたと思っているんだい? どうやら君たちは二人とも貴族でありながらろくに魔法も使えない無能みたいだからね。倒すのなんて簡単だし、何より死んだって誰も困らないだろう。だからさ――素直に死んでくれよ!」
その言葉が合図となったかのように、俺たちの周囲を囲む九名の魔術師が攻撃を仕掛けてくる。
炎の槍、氷のつぶて、風の刃。
Cランク級の魔物になら通用しそうなそれらの魔術は、しかし――
「ユナ、頼む」
「うん!」
俺とユナを包む魔心によって、容易く掻き消される。
「なっ、お前らみたいなのが僕たちの攻撃を防ぐなんてありえない!」
「対応が遅すぎるぞ」
長距離から攻撃を仕掛けることに慣れた魔術師の悪癖か、咄嗟の切り替えが遅い。
俺は素材袋からロックドラゴンの鱗を取り出すと、素早く石剣で叩き、八つの破片に割る。
続けてそれらをローブの男を除いた八名に向けて弾き飛ばした。
「ぐほっ」
「がっ!」
「ぶはっ!」
彼ら程度の実力では対応しきれなかったのか、瞬く間に全員が意識を失い崩れ落ちていく。
「な、な、ななな、何が起きたんだよ!」
ローブの男は、この一瞬のうちに起きた出来事を把握できていないらしい。
想像していたよりも遥かに弱い。
これならヌーイとほとんど互角くらいではないだろうか。
「まあなんでもいいか」
俺たちにとって脅威ではないのなら、それでいい。
ゆっくりと歩を進めて男に近づいていくと、彼は怯えた顔で後ずさる。
「まま、待ってくれ! 違うんだ、これは何かの間違いなんだ! そ、そうだ! 今まで稼いできた金をやるから、それで見逃して――」
「うるさい」
「がはっ」
石剣の柄で突き上げるようにして顎を叩くと、ローブの男はそのまま後ろ向きに倒れていく。
魔力感知の際に、俺とユナがまともな魔法を使えないと見破ったところまでは良かったが、本当の実力を測れなかったのが敗因だろう。
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