魔術学院の最強剣士 〜初級魔術すら使えない無能と蔑まれましたが、剣を使えば世界最強なので問題ありません。というか既に世界を一つ救っています〜

八又ナガト

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第一部 最弱魔術師から最強剣士への成り上がり

12 才能開花

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 会場中の注目が俺に集まるのが分かる。
 ほとんどの奴らは、俺が何をしたのか分かっていないのだろう。
 実際のところは身体強化で高速移動し、軽く衝撃を与え気絶させただけだが、ご丁寧に説明する必要はない。
 敵がこのまま呆気にとられているのであれば、そのまま全員倒すだけだ。

「ッ、くるぞ! 結界を張れ!」
「……へえ」

 しかし、想像していた以上にミカオーは優秀だったらしい。
 素早く味方に指示を出し、残りの七人分の魔力を注いだ結界を張る。
 俺は剣で結界を切り裂くことはせず、あえてその直前で動きを止める。
 どうやらそれを諦めたと見たらしいミカオーは、安堵に表情を崩す。

「ははっ、驚いたよ。何をやったのかは分からないけど、もう味方の一人が倒されるなんてね。けれどこの結界を破壊できない以上、君に勝ちの目はないよ」
「こっちは別に俺一人だってわけじゃないけどな」
「ああ、彼女のことかい? そちらについても問題ない。対策はしてあるさ」
「っ」

 どうやら結界は俺とミカオーたちの間だけではなく、俺とユナの間にも張られているようだ。
 ユナは驚いたように俺の方を見ている。
 これで協力して戦うことを防がれてしまった。

「多対一の状況を作り出すのが、魔術師の戦いの鉄則だ。悪く思わないでくれよ」

 ミカオーはこれで優位を築けたと考えているらしく、余裕な様子でそう告げる。

「しかし、問題は君たちを倒すためにどう戦力を分散させるかだね。どうやら君は少しばかり動けるようだから、包囲網を抜けられるようでは厄介だ。となるとこちらに戦力を割きたいが……」
「ミカオー、ミアレルトの方は俺一人で十分だ。また昔みたいに何もさせることなく倒してやるよ」
「そうかい? ならばそちらはヴェレに任せるよ。なるべく早く倒してこちらに合流してくれ。彼を相手にするのは少々面倒そうだ」
「了解!」

 そう叫びながら、ヴェレはユナのもとに向かう。
 これでユナの相手はヴェレ一人。
 俺の相手はミカオーたち六人になった。
 外野からは開始直後にこちらが使用した秘策は防がれ、後はただ蹂躙されるのを待つばかりのように見えるだろう。

 そんな状況の中、俺は相手に見えないように小さく微笑み、心の中でこう零した。

(――作戦通り)


 ◇◆◇


「ほ、本当にルークの言った通りになった」

 私――ユナ・ミアレルトはこの状況に対して驚愕せずにはいられなかった。
 作戦会議時にルークが言っていた通りに事が進んでいる。
 もともとルークは、炎黙の顎を無力化させるだけなら二秒もかからないと言っていた。
 Aランクパーティを相手にふざけたようなセリフだが、これまでのルークを見てきたらそれは本当のことだと信じることができた。

 しかし、だからこそルークが恐れていることがあった。
 一瞬で倒してしまったら、観客たちは何が起きたのか分からず、逆に自分たちの実力を証明することができないかもしれないこと。
 それに加え、ルークが一人で相手全員を倒してしまったら、私の活躍の場がなくなること。

 それは、ちょっと困る。
 私だって頑張りたい。いつまでもルークに頼っていてはだめだ。
 自分の力で合格を勝ち取らないといけない。

 そんな気持ちを伝えた後に、提案された作戦が以下のようなものだ。
 人数差がある相手は、必然的に多対一の状況を作り出そうとしてくるはず。
 あえてその策に乗り、お互いに別々で戦って実力を示す。
 そうすれば自分たちの力を見せることも、二人ともが認められることも可能になるはずだと。
 私はその提案に頷き、そのための準備をしてきた。
 思い出しただけで体が震えそうになる程の準備だったけど、一生懸命頑張ってきたんだ!

 一度ゆっくりと深呼吸をした後、私に向かってくるヴェレに視線を合わせる。
 ルークが開戦直後に大暴れしてくれたおかげで、こちらに割ける戦力は一人だけだとミカオーは判断したようだ。
 けれど決して油断はできない。
 彼はAランクに限りなく近いBランクだとうわさに聞いたことがある。
 これまでの私では為す術もなくやられるしかなかったような相手。
 そんな相手を倒して、自分の実力を証明するんだ!

「がんばる!」

 気合を確かにするべく叫ぶと同時に、20メートル程前にヴェレがやってくる。

「残念だが、頑張ろうが何しようが無駄だぜ。お前じゃ俺には勝てねぇよ」
「……そんなこと、分からないよ」
「わかるさ。あっちの奴はちょっとは動けるみたいだが、お前はそうじゃないだろ。自分を守ることにしか魔力を使えず、ただただ攻撃を耐え忍ぶしかできない。そんで魔力が尽きたらギブアップだ」
「あの頃とはもう違うよ」
「だったら何が違うのか、教えてくれよ!」

 叫びながらヴェレの手から放たれたのは、巨大な炎の球体だ。

「魔心(ましん)!」

 私は素早く魔心を張ることによってその攻撃を防ぐ。

「はは、防御力だけはいっちょ前ってか。けど、それがいつまでもつかな!」

 続けてどんどんと放たれる炎たち。
 これで私の魔力を削りきるつもりなのだろう。
 それらを魔心で防ぎながら、どうしても私は一つだけ彼に言っておきたいことがあった。

「ねえ、ちょっとだけいいかな」
「なんだ? 命乞いなら別に聞いてやるぞ」
「き、聞いてくれるんだ……って、そうじゃなくてね」

 ぎゅっと、魔心の形を変化させる。
 球体として体を包むのではなく、薄い膜のように纏う。
 そして――

「“格闘家”に対して、これはちょっと近すぎだよ」
「は? ――がはっ!」

 ヴェレは戸惑いに首を傾げる余裕すらなかった。
 強固な魔心に覆われた私の拳が、彼の腹にめりこんでいたからだ。

「えいっ!」

 その勢いのまま拳を振り切ると、ヴェレの体ははるか遠くに飛んでいく。
 だけど逃がさない。
 私は全力で地面を蹴り、追撃する。
 そんな私を見てヴェレは大きく目を見開く。

「ま、待て! こんなの想定してねぇよ!」
「とっておき、だからね!」

 彼が苦し紛れに放つ魔術を躱す必要すらない。
 魔心が自動的に弾いてくれる。
 だから私は、攻撃に専念できる!

「ふ、ふざけんな! 魔術師がこんな戦い方するなんて――」
「これで、おしまい!」
「ぐはっ」

 最後にこれまでで一番の力で、拳を振るった。
 油断していたヴェレを倒すにはそれで十分だったらしい。
 ヴェレはその場に崩れ去るようにして倒れていく。

「な、なにをすれば、こんなふうに……」

 ヴェレは最後の力を振り絞るように、そう尋ねてくる。
 私はこの三日間の恐ろしい日々を思い出しながらも、誇らしく告げた。

「ルーク流身体強化トレーニングは、本当に大変だったんだから!」
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