13 / 55
第一部 最弱魔術師から最強剣士への成り上がり
13 天地切り裂く一閃
しおりを挟む
(ユナは問題なくヴェレを倒せたみたいだな)
ミカオーたちから放たれる魔術に対応しながら、横目でユナの様子を窺う。
無事にヴェレを圧倒できたようだ。
初めてユナが使用する魔心を見た時から、俺はその可能性に気付いていた。
あれだけの硬度があり自由自在に変形可能。
防御だけでなく攻撃にも使えるはずだと考えた。
ユナも同じ発想で棘などで攻撃していたようだが、俺は魔心の硬度がそのまま活かせる戦い方の方が適していると考えた。
その戦い方こそが、魔心を体に纏い直接殴りつける一般的な格闘家スタイルだ。
ユナの魔力は質的に身体強化に長けていたため、これがうまくハマった。
常識とは異なる戦い方をする彼女に、並みの魔術師ではもはや対応することすら困難だろう。
「さて、次は俺の番だ」
この戦いを終わらせるべく、意識を切り替える。
これまでは防御に専念していたが、攻撃に回るとしよう。
「喰らえ」
両手で持った剣を、一閃。
パリンという音と共に、結界が砕け散る。
それを確認し、俺は素早く駆け出した。
「なっ!」
これまで安全地帯にいたミカオーたちは、突如として訪れる危機に目を見開く。
だが、遅い。
彼らが視認した時にはもう、俺はその場にいない。
駆け抜けながら放たれる斬撃は、次々と敵戦力を削っていく。
「何が、いったい何が起きている!?」
仲間が続けざまに倒れていくのを見て、ミカオーは恐怖に顔を引きつらせる。
見えなくとも、俺の手によって倒されたということくらいは分かるはずだ。
俺はミカオー以外の全員を気絶させたのち、動きを止めミカオーの前に立つ。
「あとは貴方だけですね」
「っ、アートアルド……!」
結界は壊れ、仲間は全員倒され、こちらは俺とユナが共に残っている。
すでに敗北が確定したであろう状況で、ミカオーはそれを認められないとばかりに強く歯を噛み締めていた。
「こんなことは、こんなことはありえない! 僕たちが何もできないままやられてしまうなんて! そうだ、不正に決まっている! 自分の姿を隠す魔道具でも使用しているんだろう!? そうでもなければ考えられない!」
どうやらまだ、現実を受け止めきれないようだ。
「負けを認めないと?」
「当然だ! こんな結果、納得いくものか! Aランクの魔物を倒したというのも嘘に決まっている! 真正面から戦うこともしないような奴の戯言を聞いてられるものか!」
「真正面から戦わない……ね」
そこまで言うのなら、仕方ない。
「それならこうしましょう。貴方が使用できる最大火力の魔術を俺に向けて放ってください。俺はそれを躱すことなく、真正面から打ち破ります」
「なんだと? は、ははっ、いいだろう。それで貴様の嘘偽りを証明してみせよう!」
ミカオーは瞳に生気を宿し詠唱を始める。
だが、ここで少しだけおかしな点に気付く。
ミカオーのもとに、気絶している七人からも魔力が送られていく。
「これは?」
問いに、暫くして詠唱を終えたミカオーが答える。
「気付いたのかい? けれどもう手遅れだよ。僕たち八人分の魔力を込めた最大火力の一撃さ!」
叫ぶと同時に、大量の魔力が高熱の炎に変化し、巨大な獣に姿を変えていく。
「これが僕たちのパーティの名前の由来ともなった、最上級魔術、炎顎(えんがく)だ。僕の行使と同時に、パーティ全員の魔力を集めて発動される最後の魔術だ。さあ、劫火の牙に引き裂かれろ!」
炎の獣が、巨大な口を開きながら迫ってくる。
俺は恐怖を抱くこともなく、ゆっくりと剣を上段に構える。
基本に忠実に、力強く。ただそれだけを意識し、振り下ろした。
「グラディウス・アーツ流、一の型――天地」
一切の抵抗はなかった。
俺の剣から生み出された斬撃は、炎の獣を両断し、その存在を消滅させる。
だが斬撃が止まることはない。
ミカオーの微かに右横を通り過ぎた斬撃は、観客席の直前で消滅する。
観客に被害を与えぬよう、あえてそれだけの威力で放ったのだ。
「なっ……ば、ばかな……」
現実に体が追い付かないとばかりに、ミカオーは膝を崩す。
その場に残されたのは、剣を振り下ろした姿のままの俺と、無様にしりもちをつくミカオーのみ。
俺は残心を終え、ゆっくりとミカオーのもとにまで歩く。
「どうだ、納得してくれたか?」
ミカオーは悔しそうに表情を歪めるも、抗う気力すら残されていなかったのか、静かに肩を落とす。
「ああ……僕たちの負けだ」
そう言って、敗北を認めた。
会場が沈黙に包まれる。
誰もが目の前で起きた出来事が信じられないとばかりに、言葉を失っている。
そんな沈黙を打ち破るように、アナウンスが響く。
『え、炎黙の顎のメンバー全員が気絶もしくは降参したため、ルーク・アートアルドおよびユナ・ミアレルトの勝利とします!』
そのアナウンスを聞き、嬉しそうに笑うユナが駆け寄ってくる。
「勝ったよ! やったね、ルーク!」
「ああ、ユナ」
パンと、俺たちは手を合わせた。
ミカオーたちから放たれる魔術に対応しながら、横目でユナの様子を窺う。
無事にヴェレを圧倒できたようだ。
初めてユナが使用する魔心を見た時から、俺はその可能性に気付いていた。
あれだけの硬度があり自由自在に変形可能。
防御だけでなく攻撃にも使えるはずだと考えた。
ユナも同じ発想で棘などで攻撃していたようだが、俺は魔心の硬度がそのまま活かせる戦い方の方が適していると考えた。
その戦い方こそが、魔心を体に纏い直接殴りつける一般的な格闘家スタイルだ。
ユナの魔力は質的に身体強化に長けていたため、これがうまくハマった。
常識とは異なる戦い方をする彼女に、並みの魔術師ではもはや対応することすら困難だろう。
「さて、次は俺の番だ」
この戦いを終わらせるべく、意識を切り替える。
これまでは防御に専念していたが、攻撃に回るとしよう。
「喰らえ」
両手で持った剣を、一閃。
パリンという音と共に、結界が砕け散る。
それを確認し、俺は素早く駆け出した。
「なっ!」
これまで安全地帯にいたミカオーたちは、突如として訪れる危機に目を見開く。
だが、遅い。
彼らが視認した時にはもう、俺はその場にいない。
駆け抜けながら放たれる斬撃は、次々と敵戦力を削っていく。
「何が、いったい何が起きている!?」
仲間が続けざまに倒れていくのを見て、ミカオーは恐怖に顔を引きつらせる。
見えなくとも、俺の手によって倒されたということくらいは分かるはずだ。
俺はミカオー以外の全員を気絶させたのち、動きを止めミカオーの前に立つ。
「あとは貴方だけですね」
「っ、アートアルド……!」
結界は壊れ、仲間は全員倒され、こちらは俺とユナが共に残っている。
すでに敗北が確定したであろう状況で、ミカオーはそれを認められないとばかりに強く歯を噛み締めていた。
「こんなことは、こんなことはありえない! 僕たちが何もできないままやられてしまうなんて! そうだ、不正に決まっている! 自分の姿を隠す魔道具でも使用しているんだろう!? そうでもなければ考えられない!」
どうやらまだ、現実を受け止めきれないようだ。
「負けを認めないと?」
「当然だ! こんな結果、納得いくものか! Aランクの魔物を倒したというのも嘘に決まっている! 真正面から戦うこともしないような奴の戯言を聞いてられるものか!」
「真正面から戦わない……ね」
そこまで言うのなら、仕方ない。
「それならこうしましょう。貴方が使用できる最大火力の魔術を俺に向けて放ってください。俺はそれを躱すことなく、真正面から打ち破ります」
「なんだと? は、ははっ、いいだろう。それで貴様の嘘偽りを証明してみせよう!」
ミカオーは瞳に生気を宿し詠唱を始める。
だが、ここで少しだけおかしな点に気付く。
ミカオーのもとに、気絶している七人からも魔力が送られていく。
「これは?」
問いに、暫くして詠唱を終えたミカオーが答える。
「気付いたのかい? けれどもう手遅れだよ。僕たち八人分の魔力を込めた最大火力の一撃さ!」
叫ぶと同時に、大量の魔力が高熱の炎に変化し、巨大な獣に姿を変えていく。
「これが僕たちのパーティの名前の由来ともなった、最上級魔術、炎顎(えんがく)だ。僕の行使と同時に、パーティ全員の魔力を集めて発動される最後の魔術だ。さあ、劫火の牙に引き裂かれろ!」
炎の獣が、巨大な口を開きながら迫ってくる。
俺は恐怖を抱くこともなく、ゆっくりと剣を上段に構える。
基本に忠実に、力強く。ただそれだけを意識し、振り下ろした。
「グラディウス・アーツ流、一の型――天地」
一切の抵抗はなかった。
俺の剣から生み出された斬撃は、炎の獣を両断し、その存在を消滅させる。
だが斬撃が止まることはない。
ミカオーの微かに右横を通り過ぎた斬撃は、観客席の直前で消滅する。
観客に被害を与えぬよう、あえてそれだけの威力で放ったのだ。
「なっ……ば、ばかな……」
現実に体が追い付かないとばかりに、ミカオーは膝を崩す。
その場に残されたのは、剣を振り下ろした姿のままの俺と、無様にしりもちをつくミカオーのみ。
俺は残心を終え、ゆっくりとミカオーのもとにまで歩く。
「どうだ、納得してくれたか?」
ミカオーは悔しそうに表情を歪めるも、抗う気力すら残されていなかったのか、静かに肩を落とす。
「ああ……僕たちの負けだ」
そう言って、敗北を認めた。
会場が沈黙に包まれる。
誰もが目の前で起きた出来事が信じられないとばかりに、言葉を失っている。
そんな沈黙を打ち破るように、アナウンスが響く。
『え、炎黙の顎のメンバー全員が気絶もしくは降参したため、ルーク・アートアルドおよびユナ・ミアレルトの勝利とします!』
そのアナウンスを聞き、嬉しそうに笑うユナが駆け寄ってくる。
「勝ったよ! やったね、ルーク!」
「ああ、ユナ」
パンと、俺たちは手を合わせた。
2
あなたにおすすめの小説
ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい
空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。
孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。
竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。
火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜?
いやいや、ないでしょ……。
【お知らせ】2018/2/27 完結しました。
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件
言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」
──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。
だが彼は思った。
「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」
そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら……
気づけば村が巨大都市になっていた。
農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。
「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」
一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前!
慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが……
「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」
もはや世界最強の領主となったレオンは、
「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、
今日ものんびり温泉につかるのだった。
ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!
転生無双学院~追放された田舎貴族、実は神剣と女神に愛されていた件~
eringi
ファンタジー
「役立たず」と呼ばれ、貴族家を追放された少年エリアス。
すべてを失った彼が辿り着いたのは、見捨てられた古の神殿。
そこで眠っていた「神剣」ルミナと「女神」セリアに出会い、隠された真の力――“世界の法則を書き換える権能”を得る。
学院で最底辺だった少年は、無自覚のまま神々と王族すら凌駕していく。
やがて彼の傍らには、かつて彼を見下した者たちが跪き、彼を理解した者たちは彼に恋をする。
繰り返される“ざまぁ”の果てに、無自覚の英雄は世界を救う。
これは、「追い出された少年」が気づかぬうちに“世界最強”となり、
女神と共に愛と赦しとざまぁを与えていく物語。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる