魔術学院の最強剣士 〜初級魔術すら使えない無能と蔑まれましたが、剣を使えば世界最強なので問題ありません。というか既に世界を一つ救っています〜

八又ナガト

文字の大きさ
15 / 55
第一部 最弱魔術師から最強剣士への成り上がり

15 私のお兄様 1

しおりを挟む
「そろそろですね、お兄様」
「そうだな」

 私(わたくし)――ティナ・アートアルドとお兄様は、王都の北門でお父様の到着を待っていた。

 私たちとお父様の関係は、正直なところ良好とはいえない。
 お父様は魔術師としての才能に欠けているという理由でお兄様を認めていないからだ。
 それ故か、お兄様とお父様の関係は険悪と言ってもいい。
 家にいたころは、同じ食卓を囲んでいる時でさえ一言も会話しないことがほとんどだった。

 常にお兄様の味方である私もまたお父様と気さくに話したりはしないものの、それでもいくらかはマシと言えるだろう。
 次期領主として必要な振る舞いや知識については、お父様から教わらなければならないからだ。
 お兄様とは違い、毎年この時期には帰郷している。
 
 無論、私は今でも次期領主にふさわしいのはお兄様であると考えているし、お兄様がそう望むのであれば喜んで今の立場を譲るつもりだ。

 ふと、疑問に思う。
 私はいつからお兄様にここまで心を奪われたのだろうか?
 確か記憶によるとその頃が、お兄様とお父様の関係が険悪になった時期とも被っている気がする。

 お父様の到着を待つ僅かな時間、私は昔のことを思い出すことにした。
 それは今から三年前。
 学園入学を間近に控えた、私とお兄様が10歳だった時のことだった。


 ◇◆◇


 私はティナ・アートアルド。
 アートアルド子爵家の長女であり、歴代当主と比べても最高クラスに魔術の才能があると言われて育ってきた。
 使用人や教師達からは、次期当主間違いなしと太鼓判を押されている。

 そんな私には双子の兄がいる。
 幼い頃は常に二人で仲良く過ごしていた。
 けれど本格的に魔術の特訓が始まった時期を境に、少しずつ疎遠になっていくことになる。

 お兄様には魔術の才能がなかった。
 魔力の質が通常の人とは違い、体の外に放出することができないらしい。
 それはつまり一切の魔術を扱えないということだ。

 その事実が判明すると同時に、アートアルド家に関わりのある者たちの期待が全て私に向けられるようになった。
 お兄様がそれにどのような感情を抱いたのか分からないが、私から距離を取るようになった。
 私もまた、声をかけにくくなっていった。

「お兄様と、また昔みたいにお話ししたいです……」

 自室で一人、内に秘められた願望を口にする。
 本当は他の誰よりも、お兄様からすごいよって褒めてほしかった。
 何でもない話をしたかった。
 けれどもう、そのやり方も分からなくなってしまった。

「特訓、しなくちゃ……」

 貴族として魔術の実力を高めることは必須だ。
 今日は一人で特訓したい気分だった。
 使用人などにも告げることなく館を出て、近くにある森にやってくる。
 
 すると、ブンッ! という聞きなれない音がした。
 音を立てずにそちらに近づくと、なんとそこにはお兄様がいた。
 木の棒か何かを、一心不乱に振るっている。
 その表情には鬼気迫る何かがあった。

「――――」

 何故だろう。胸がきゅっと締め付けられるような感覚がした。
 魔術が使えないお兄様は、必死にその代わりになるものを探しているんだろう。
 魔術師相手にあんな武器を持ったところで何の役にもたたないことくらい、お兄様が一番よく分かっているはずなのに。

 これ以上、私にはこの光景を見る資格がない気がした。
 少し場所を変えて、改めて特訓を開始する。

 今、私が練習しているのは詠唱破棄だ。
 詠唱を短縮させても魔術を発動することはできるのだが、肝心の威力がすごく下がってしまう。
 この振れ幅をできる限りなくさなくてはならない。

 ――決して注意を怠っていたわけではない。
 しかし特訓に集中しすぎるあまり、私はの接近に気が付くのに遅れた。

「グルゥウウウウウウ!」
「えっ――ッ」

 振り向くと、30メートル程先にいたのは赤黒い毛並みを携えた巨大な狼型の魔物――キングブラッドウルフだった。

 Aランクに限りなく近い、Bランクの魔物!
 普通だったらこの辺りにはCランクまでの魔物しか出現しないはずなのにどうして!?

 戸惑っている暇はない。
 早く対応しなければならない。
 けれど魔物を相手する際に、30メートルという距離はあまりにも近く――

「其は日輪の下、天地凍えるは我が調べ――アイシクル!」

 咄嗟に練習中の詠唱破棄で魔術を発動する。
 私の足元から大地が高速で凍り付いていく。
 そして氷の大地からは、幾つかの氷柱が生えキングブラッドウルフを襲う。
 が――

「っ! きいてない!?」

 威力が全く足りていなかったようで、僅かに皮膚を貫くにとどまる。
 キングブラッドウルフは痛みすら感じていないのか、勢いそのままに襲い掛かってくる。

 ああ、私は、ここで死――

「ティナ!」

 ――私の名を呼ぶ声がした。

 直後、誰かに体を抱えられる感触と浮遊感がした。
 私を抱えているのかが誰かはすぐに分かった。

「……お兄様」

 私を絶望的な危機から救ってくれたのは、ずっと話したくて仕方がなかったお兄様だった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい

空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。 孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。 竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。 火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜? いやいや、ないでしょ……。 【お知らせ】2018/2/27 完結しました。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位 転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件

言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」 ──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。 だが彼は思った。 「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」 そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら…… 気づけば村が巨大都市になっていた。 農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。 「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」 一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前! 慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが…… 「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」 もはや世界最強の領主となったレオンは、 「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、 今日ものんびり温泉につかるのだった。 ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!

転生無双学院~追放された田舎貴族、実は神剣と女神に愛されていた件~

eringi
ファンタジー
「役立たず」と呼ばれ、貴族家を追放された少年エリアス。 すべてを失った彼が辿り着いたのは、見捨てられた古の神殿。 そこで眠っていた「神剣」ルミナと「女神」セリアに出会い、隠された真の力――“世界の法則を書き換える権能”を得る。 学院で最底辺だった少年は、無自覚のまま神々と王族すら凌駕していく。 やがて彼の傍らには、かつて彼を見下した者たちが跪き、彼を理解した者たちは彼に恋をする。 繰り返される“ざまぁ”の果てに、無自覚の英雄は世界を救う。 これは、「追い出された少年」が気づかぬうちに“世界最強”となり、 女神と共に愛と赦しとざまぁを与えていく物語。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

処理中です...