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第一部 最弱魔術師から最強剣士への成り上がり
18 アートアルド家 家族会議 2
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俺は幾つかの疑問を、レーニスに尋ねる。
「しかし、だとするなら訊きたいことがあります」
「なんだ?」
「次期当主を発表した時のことです。私がティナを助けた時、父上は私の実力を認めてくれたとおっしゃいました。しかし、その直後父上は次期当主を私ではなくティナにすると告げたはずです。どうしてそのタイミングだったのでしょう?」
元からティナの方が次期当主に相応しいと周囲の者が噂していたため、覚悟はしていたし、実際に俺もそう思っていた。
けれどレーニスの口から直接聞いた時は、それなりにショックを受けたものだ。
今から考えてみても、実力を認めてくれた直後にそのような発表をするというのは違和感がある。
「それは簡単なことだ。私は確かにルークの実力を認めたが、それは魔物などを相手にした際の戦闘能力についてだ。魔術を使えないという事実自体は変わっていない。そうだろう?」
「はい、その通りです」
「であるならば、やはり当主に向かないことに変わりはない。アートアルド家の当主とは、すなわち広大な領地を持つアートアルド領を治める領主になることを意味する。結界魔術や伝達魔術などを使えないようでは、やはり領主を務めるのは難しいと考えたのだ」
「なるほど」
すごく真っ当な理由だった。
確かに今でもなお、俺には剣士として戦う力しか持たない。
万能性には著しく欠けている。
「私ではなくティナを当主に選んだ理由は分かりました。私もそれが正しいと考えています」
「そうか」
「しかし、重ねて訊きたいことがあります。あの日以降、父上の私に対する態度が非常に冷たいものになったと思うのです。それは何故だったのでしょう?」
「む……」
ここにきて、レーニスの様子が変わった。
どこか動揺したように視線を俺から外す。
「それはだな……ティナが」
「ティナが?」
「私ですか?」
まさか自分に矛先が向くとは思っていなかったのだろう。
ティナはきょとんと首を傾げる。
そんな中、レーニスはおずおずと口を開く。
「度々、ティナが私の前で告げるのだ。ルーク、お前への愛を」
「……はあ」
「まあ、お父様! お兄様の前で言わないでほしいです! 恥ずかしいではありませんか」
いや普段から直接言われてるんだけど。
なんでここで恥ずかしがっているんだろう。
「けれど、それがどうかしたのですか?」
「“それが”!? お兄様、いま私の愛をそれがと言いましたか!」
「どうかしたどころではない。大いに関係ある」
ティナをいったん無視し、俺とレーニスの会話は続く。
「次期当主になるための学習中、特訓中、ティナは常にお前への愛を語り、そして必ず最後に告げるのだ――相思相愛の私たちは将来結婚してみせるのです、と」
「け、けっこん?」
さすがにティナから結婚を直接申し込まれたことはないため、動揺してしまう。
てか二人でいつもそんな会話をしていたのか。
硬派だったレーニスのイメージがどんどんと瓦解していく。
そんな感想を抱く俺の前で、レーニスは真剣な表情を浮かべる。
そしてそのまま言った。
「ルーク、例えお前が相手であっても、私が愛する娘は渡さない!」
「何言ってんだこの人」
はっ! 思わず敬語を忘れてしまった!
けど、そんなことがどうでもよくなるくらいに訳の分からない発言だった。
そもそも何でこんな話になったんだっけ?
確か最初は俺の質問で……まさか!
「まさか私に冷たく当たっていたのはそれが理由ですか!?」
「冷たく当たったつもりなどない。ただティナから愛を語られた直後は、少々機嫌が悪くなっていたかもしれぬ」
「堂々と言わないでください!」
「そうですよお父様! そろそろ素直に私たちの関係を祝福してくださいませ! ねっ、お兄様?」
「ティナはティナで、一人で突っ走らないでくれ……」
ツッコミがまったく追い付かない。
俺はいったい何をしているんだろう。
異世界でのどんな強敵との戦いより、対応しがたい状況だ。
よし、いったん冷静になろう。
色々と忘れておくことにしよう。
大切なのは勘違いがなくなり、レーニスとの仲が修復されたであろうことだけ。
それで十分だ。
「父上、いったん場をリセットしましょう」
「うむ、そうだな」
とりあえず意見を一致させ、既に冷め切った紅茶を一気に飲み干す。
空になったカップを置き、レーニスは改めて真剣な表情を浮かべる。
「改めて、第一学園に入学したことを祝おう。よくやった、ルーク」
「はっ、称賛の言葉、ありがたく存じます」
これでひとまず体裁は保たれただろうか。
この場に使用人などがいなくてよかったと心から思う。
そろそろ解散かと思った矢先、レーニスはゆっくりと立ち上がる。
「では場所を移そうか」
「場所を? 解散ではなくてですか?」
「うむ。私はまだルークの実力を見てはいないからな。一度はこの目で確かめておきたい。ティナ、訓練場の使用許可を貰ってきてくれるか」
「っ! お兄様とお父様が模擬戦を行うのですね!? かしこまりました、行ってまいります!」
ティナは嬉しそうに笑いながら、先にサロンを出ていく。
それを見送りながら、俺の胸は僅かに高鳴っていた。
予想外の展開だが、これは喜ばしい。
そもそも俺が第一学園を目指したのも、その方が実力者と出会う機会が増えると思ったからだ。
そんな俺の前にレーニスが立ちはだかってくれるという。
貴族の中でも実力者中の実力者。
冒険者としてならば優にSランクに届くと言われているレーニスが。
きっとこれまでにない白熱した戦いができる。
そんな期待を胸に抱き、俺たちは訓練場に向かった。
――――――――
次回更新は本日朝の9時10分です
「しかし、だとするなら訊きたいことがあります」
「なんだ?」
「次期当主を発表した時のことです。私がティナを助けた時、父上は私の実力を認めてくれたとおっしゃいました。しかし、その直後父上は次期当主を私ではなくティナにすると告げたはずです。どうしてそのタイミングだったのでしょう?」
元からティナの方が次期当主に相応しいと周囲の者が噂していたため、覚悟はしていたし、実際に俺もそう思っていた。
けれどレーニスの口から直接聞いた時は、それなりにショックを受けたものだ。
今から考えてみても、実力を認めてくれた直後にそのような発表をするというのは違和感がある。
「それは簡単なことだ。私は確かにルークの実力を認めたが、それは魔物などを相手にした際の戦闘能力についてだ。魔術を使えないという事実自体は変わっていない。そうだろう?」
「はい、その通りです」
「であるならば、やはり当主に向かないことに変わりはない。アートアルド家の当主とは、すなわち広大な領地を持つアートアルド領を治める領主になることを意味する。結界魔術や伝達魔術などを使えないようでは、やはり領主を務めるのは難しいと考えたのだ」
「なるほど」
すごく真っ当な理由だった。
確かに今でもなお、俺には剣士として戦う力しか持たない。
万能性には著しく欠けている。
「私ではなくティナを当主に選んだ理由は分かりました。私もそれが正しいと考えています」
「そうか」
「しかし、重ねて訊きたいことがあります。あの日以降、父上の私に対する態度が非常に冷たいものになったと思うのです。それは何故だったのでしょう?」
「む……」
ここにきて、レーニスの様子が変わった。
どこか動揺したように視線を俺から外す。
「それはだな……ティナが」
「ティナが?」
「私ですか?」
まさか自分に矛先が向くとは思っていなかったのだろう。
ティナはきょとんと首を傾げる。
そんな中、レーニスはおずおずと口を開く。
「度々、ティナが私の前で告げるのだ。ルーク、お前への愛を」
「……はあ」
「まあ、お父様! お兄様の前で言わないでほしいです! 恥ずかしいではありませんか」
いや普段から直接言われてるんだけど。
なんでここで恥ずかしがっているんだろう。
「けれど、それがどうかしたのですか?」
「“それが”!? お兄様、いま私の愛をそれがと言いましたか!」
「どうかしたどころではない。大いに関係ある」
ティナをいったん無視し、俺とレーニスの会話は続く。
「次期当主になるための学習中、特訓中、ティナは常にお前への愛を語り、そして必ず最後に告げるのだ――相思相愛の私たちは将来結婚してみせるのです、と」
「け、けっこん?」
さすがにティナから結婚を直接申し込まれたことはないため、動揺してしまう。
てか二人でいつもそんな会話をしていたのか。
硬派だったレーニスのイメージがどんどんと瓦解していく。
そんな感想を抱く俺の前で、レーニスは真剣な表情を浮かべる。
そしてそのまま言った。
「ルーク、例えお前が相手であっても、私が愛する娘は渡さない!」
「何言ってんだこの人」
はっ! 思わず敬語を忘れてしまった!
けど、そんなことがどうでもよくなるくらいに訳の分からない発言だった。
そもそも何でこんな話になったんだっけ?
確か最初は俺の質問で……まさか!
「まさか私に冷たく当たっていたのはそれが理由ですか!?」
「冷たく当たったつもりなどない。ただティナから愛を語られた直後は、少々機嫌が悪くなっていたかもしれぬ」
「堂々と言わないでください!」
「そうですよお父様! そろそろ素直に私たちの関係を祝福してくださいませ! ねっ、お兄様?」
「ティナはティナで、一人で突っ走らないでくれ……」
ツッコミがまったく追い付かない。
俺はいったい何をしているんだろう。
異世界でのどんな強敵との戦いより、対応しがたい状況だ。
よし、いったん冷静になろう。
色々と忘れておくことにしよう。
大切なのは勘違いがなくなり、レーニスとの仲が修復されたであろうことだけ。
それで十分だ。
「父上、いったん場をリセットしましょう」
「うむ、そうだな」
とりあえず意見を一致させ、既に冷め切った紅茶を一気に飲み干す。
空になったカップを置き、レーニスは改めて真剣な表情を浮かべる。
「改めて、第一学園に入学したことを祝おう。よくやった、ルーク」
「はっ、称賛の言葉、ありがたく存じます」
これでひとまず体裁は保たれただろうか。
この場に使用人などがいなくてよかったと心から思う。
そろそろ解散かと思った矢先、レーニスはゆっくりと立ち上がる。
「では場所を移そうか」
「場所を? 解散ではなくてですか?」
「うむ。私はまだルークの実力を見てはいないからな。一度はこの目で確かめておきたい。ティナ、訓練場の使用許可を貰ってきてくれるか」
「っ! お兄様とお父様が模擬戦を行うのですね!? かしこまりました、行ってまいります!」
ティナは嬉しそうに笑いながら、先にサロンを出ていく。
それを見送りながら、俺の胸は僅かに高鳴っていた。
予想外の展開だが、これは喜ばしい。
そもそも俺が第一学園を目指したのも、その方が実力者と出会う機会が増えると思ったからだ。
そんな俺の前にレーニスが立ちはだかってくれるという。
貴族の中でも実力者中の実力者。
冒険者としてならば優にSランクに届くと言われているレーニスが。
きっとこれまでにない白熱した戦いができる。
そんな期待を胸に抱き、俺たちは訓練場に向かった。
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次回更新は本日朝の9時10分です
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