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第一部 最弱魔術師から最強剣士への成り上がり
23 ルークのアトリエ
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フルールに連れられて入った部屋は職員しか入ることを許されないスペースだったようで、冒険者の人たちはついてこなかった。
「ティナさんとルークさんはAランクとして登録を行うよ。さっきはSランクにしたいって言ったけど色々と決まりがあってね、すぐに上げる訳にはいかないんだ」
「それで大丈夫です」
「問題ありませんわ」
色々と大変なことがあったが、ようやく登録が終わるみたいだ。
これで依頼を受けることができる。
ほっと一息ついていると、フルールが二枚のカードを取り出す。
「はい、これが登録の証である冒険者カードだよ。二人の情報が入っているから大切にしてね。依頼を受ける時にも必要になるから」
安堵したまま冒険者カードを受け取った次の瞬間、フルールは衝撃的なことを告げる。
「じゃあ最後に、二人の魔力を冒険者カードに登録しようか」
「――え?」
想定していなかった一言に、俺の動きが止まる。
「ルークさん、どうしたの?」
「い、いえ、魔力の登録は必要なんですか?」
「ん、当たり前だよ。じゃないと冒険者カードが正しく使えないからね。ほら早く早く」
俺が何に困っているのか心当たりがないからか、当然のようにそう促してくるフルール。
これはまずい。先ほどのように筋力で解決できる問題ではない。
溢れ出る知性が必要になる場面だ――!
だが、俺は特に何も思いつかなかった。
ゆっくり立ち上がると、その場で深く頭を下げる。
「すみません、嘘ついてました」
「えっ?」
「お兄様!?」
俺は罪を懺悔した。
全てを聞いたフルールは、何を言っているのか分からないとばかりに額に手を当てる。
「ま、待って。てことはつまり、ルークさんは筋力だけで水晶玉を壊し、魔硬石を真っ二つにしたってことかな?」
「正確には身体強化もですけど」
「身体強化って魔力を体の内部で使用して、動きなどを早くするあれのこと? えっ、あれってそんな効果のあるものだったっけ? おまじない程度に使用するもののはずじゃ……いやそれよりも、身体強化を使えるってことは魔力自体はあるんだね?」
「はい、だいたいティナと同じくらいには」
「けどおかしいな。魔力を放出できないなら魔力量を測るなんてできないはずだけど」
「ああ、それは――」
仕方がないと判断し、俺は自分たちが貴族であることを伝えた。
それと同時に、貴族は体の内部の魔力量を測ることのできる魔道具を持っているということもだ。
「そっか、貴族か……」
「やはり貴族の登録は認めてもらえませんか?」
「ううん、そんなことないよ。実際に身分を明かして登録している者もいるくらいだからね。二人は権威をひけらかすような人ではないのはもう分かっているし、そこについては問題ないよ。二人が貴族であることもボクの心の中に留めておくから安心してくれていい。隠しておきたいんだよね?」
「ありがとうございます」
「感謝いたしますわ」
フルールはこくりと頷く。
「うん、決めたよ。せっかくAランク相当の実力者が二人もボクのギルドに登録してくれるんだ。貴族だとか魔力を放出できないだとかそんな些細なことは気にしないよ。ルークさんの冒険者カードについてはボクの方で処理しておく。これからよろしく頼むよ、ティナさん、ルークさん」
フルールが差し出した手を、ティナ、俺の順番で握る。
「ええ、よろしくお願いしますわ」
「色々と助かります、フルールさん……ん?」
フルールと握手した手がなぜか離れない。
何故だろうと彼女を見ると、清々しいほどの笑みを浮かべていた。
「フルールさん、この手は一体?」
「うん、それよりもね、ルークさんには言っておきたいことがあるんだ」
「なんでしょう?」
「今回の登録する過程で、色々とうちにあるものを壊してくれたよね?」
「いや、それは登録に必要だったからで。それにそれはティナも同じ……」
「ティナさんはこちらのお願いの結果だったからね。うん、ルークさんに関しても確かに魔硬石についてはまだ許容できるよ。実力が見たかったのは本当だからね。けど水晶玉については、事前に魔力が使えないと伝えてくれていれば壊れることはなかったと思わないかな?」
正論過ぎて、返す言葉もなかった。
「実はあれ、すごく高いんだよね……」
「お、俺にどうしろと?」
「いや、別に何をしろとか命令するわけじゃないんだけどね。これを見てくれるかな」
そう言ってフルールは美しい断面が特徴的な、さっき俺が真っ二つにした魔硬石を取り出す。
「魔硬石はそのあまりの硬度から加工が難しいと言われているんだけどね。これを見てボクは閃いちゃったんだよ」
「何をでしょう?」
「ルークさんの腕なら、これを思うがまま加工することが可能だということさ!」
……なるほど。
言いたいことはだいたい分かった。
つまりフルールが言いたいことは。
「という訳で、ルークさんさえよければちょっとだけ手伝ってもらいたいんだけど、駄目かな?」
「……分かりました」
そんなこんなで俺の剣技による魔硬石の加工が始まった。
次々と渡される魔硬石をフルールの指示した形に切り揃えていく。
「すごい、これはすごいよ! 魔硬石の形をここまで自在に変えられるなんて! あっちなみになんだけど、これを粉々にすれば魔道具を作るための高品質な材料になったりするんだけど……って、さすがにこれは望みすぎだね」
「えいっ」
「握っただけで粉砕した!?」
フルールの願望に応えるため、水晶玉と同様に魔硬石を破壊する。
意図的にヒビが入った魔硬石を選び、証拠隠滅成功だなんて思っていない。
ああ、ほっとした。
にしてもフルールは驚いているが、正直なところ魔硬石はこの程度の硬さなのかという驚きが強い。
これならユナの魔心(ましん)の方がよっぽど硬かったのではないだろうか?
何はともあれ、フルールが満足するまで加工作業は続くのだった。
ティナの分も譲ってもらえたことだし、そう悪い結果ではないだろう。
そして俺の鍛冶スキルが1上がった。
「ティナさんとルークさんはAランクとして登録を行うよ。さっきはSランクにしたいって言ったけど色々と決まりがあってね、すぐに上げる訳にはいかないんだ」
「それで大丈夫です」
「問題ありませんわ」
色々と大変なことがあったが、ようやく登録が終わるみたいだ。
これで依頼を受けることができる。
ほっと一息ついていると、フルールが二枚のカードを取り出す。
「はい、これが登録の証である冒険者カードだよ。二人の情報が入っているから大切にしてね。依頼を受ける時にも必要になるから」
安堵したまま冒険者カードを受け取った次の瞬間、フルールは衝撃的なことを告げる。
「じゃあ最後に、二人の魔力を冒険者カードに登録しようか」
「――え?」
想定していなかった一言に、俺の動きが止まる。
「ルークさん、どうしたの?」
「い、いえ、魔力の登録は必要なんですか?」
「ん、当たり前だよ。じゃないと冒険者カードが正しく使えないからね。ほら早く早く」
俺が何に困っているのか心当たりがないからか、当然のようにそう促してくるフルール。
これはまずい。先ほどのように筋力で解決できる問題ではない。
溢れ出る知性が必要になる場面だ――!
だが、俺は特に何も思いつかなかった。
ゆっくり立ち上がると、その場で深く頭を下げる。
「すみません、嘘ついてました」
「えっ?」
「お兄様!?」
俺は罪を懺悔した。
全てを聞いたフルールは、何を言っているのか分からないとばかりに額に手を当てる。
「ま、待って。てことはつまり、ルークさんは筋力だけで水晶玉を壊し、魔硬石を真っ二つにしたってことかな?」
「正確には身体強化もですけど」
「身体強化って魔力を体の内部で使用して、動きなどを早くするあれのこと? えっ、あれってそんな効果のあるものだったっけ? おまじない程度に使用するもののはずじゃ……いやそれよりも、身体強化を使えるってことは魔力自体はあるんだね?」
「はい、だいたいティナと同じくらいには」
「けどおかしいな。魔力を放出できないなら魔力量を測るなんてできないはずだけど」
「ああ、それは――」
仕方がないと判断し、俺は自分たちが貴族であることを伝えた。
それと同時に、貴族は体の内部の魔力量を測ることのできる魔道具を持っているということもだ。
「そっか、貴族か……」
「やはり貴族の登録は認めてもらえませんか?」
「ううん、そんなことないよ。実際に身分を明かして登録している者もいるくらいだからね。二人は権威をひけらかすような人ではないのはもう分かっているし、そこについては問題ないよ。二人が貴族であることもボクの心の中に留めておくから安心してくれていい。隠しておきたいんだよね?」
「ありがとうございます」
「感謝いたしますわ」
フルールはこくりと頷く。
「うん、決めたよ。せっかくAランク相当の実力者が二人もボクのギルドに登録してくれるんだ。貴族だとか魔力を放出できないだとかそんな些細なことは気にしないよ。ルークさんの冒険者カードについてはボクの方で処理しておく。これからよろしく頼むよ、ティナさん、ルークさん」
フルールが差し出した手を、ティナ、俺の順番で握る。
「ええ、よろしくお願いしますわ」
「色々と助かります、フルールさん……ん?」
フルールと握手した手がなぜか離れない。
何故だろうと彼女を見ると、清々しいほどの笑みを浮かべていた。
「フルールさん、この手は一体?」
「うん、それよりもね、ルークさんには言っておきたいことがあるんだ」
「なんでしょう?」
「今回の登録する過程で、色々とうちにあるものを壊してくれたよね?」
「いや、それは登録に必要だったからで。それにそれはティナも同じ……」
「ティナさんはこちらのお願いの結果だったからね。うん、ルークさんに関しても確かに魔硬石についてはまだ許容できるよ。実力が見たかったのは本当だからね。けど水晶玉については、事前に魔力が使えないと伝えてくれていれば壊れることはなかったと思わないかな?」
正論過ぎて、返す言葉もなかった。
「実はあれ、すごく高いんだよね……」
「お、俺にどうしろと?」
「いや、別に何をしろとか命令するわけじゃないんだけどね。これを見てくれるかな」
そう言ってフルールは美しい断面が特徴的な、さっき俺が真っ二つにした魔硬石を取り出す。
「魔硬石はそのあまりの硬度から加工が難しいと言われているんだけどね。これを見てボクは閃いちゃったんだよ」
「何をでしょう?」
「ルークさんの腕なら、これを思うがまま加工することが可能だということさ!」
……なるほど。
言いたいことはだいたい分かった。
つまりフルールが言いたいことは。
「という訳で、ルークさんさえよければちょっとだけ手伝ってもらいたいんだけど、駄目かな?」
「……分かりました」
そんなこんなで俺の剣技による魔硬石の加工が始まった。
次々と渡される魔硬石をフルールの指示した形に切り揃えていく。
「すごい、これはすごいよ! 魔硬石の形をここまで自在に変えられるなんて! あっちなみになんだけど、これを粉々にすれば魔道具を作るための高品質な材料になったりするんだけど……って、さすがにこれは望みすぎだね」
「えいっ」
「握っただけで粉砕した!?」
フルールの願望に応えるため、水晶玉と同様に魔硬石を破壊する。
意図的にヒビが入った魔硬石を選び、証拠隠滅成功だなんて思っていない。
ああ、ほっとした。
にしてもフルールは驚いているが、正直なところ魔硬石はこの程度の硬さなのかという驚きが強い。
これならユナの魔心(ましん)の方がよっぽど硬かったのではないだろうか?
何はともあれ、フルールが満足するまで加工作業は続くのだった。
ティナの分も譲ってもらえたことだし、そう悪い結果ではないだろう。
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