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第一部 最弱魔術師から最強剣士への成り上がり
26 最高速で
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ヌーイは自分が敗北したのが信じられないのか、苛立ったように声を上げる。
「お、俺が負けた……? 嘘だ、こんなのは嘘だ! 何のために魔族にまでなったと思っている! 全部お前を殺すためだ!」
「俺を殺すためだけにか。割に合ってない条件のようだが、誰に唆された?」
「全ては俺の意思でやったことだ! 誰にも唆されてなどいない!」
「魔族に会っていないというのか?」
「当然だ!」
「……ふむ」
どうやら話が通じないようだ。
人族が魔族になるためには、他の魔族から力を分け与えてもらう必要がある。
が、その存在のことをヌーイは覚えていないらしい。
故意的に記憶を操られたと考えるのが自然だろう。
しかし、これは厄介なことになった。
人族を魔族化できるのは、優れた魔族だけだ。
ランクで表せば、どれほど低く見積もってもAランクには至る。
レーニスが言っていたのと同じ魔族かは不明だが、対応する必要がある。
今すぐ王都に帰還し各所に伝えるべきだ。
魔族がいた証拠としてヌーイを連れて行きたいところだが、恐らくこいつはもう長くない。
器に見合わない改造を施されたせいだろう。
間もなく命が尽き消滅する。
その際に魔力の暴走が起きたりしたらまずい。
ここら一体が吹き飛ぶ可能性がある。
……まあ、こうなるか。
「聞け、クズルーク! 貴様を殺すのは俺だ! 俺が貴様を、貴様を――」
「二の型――凪」
無音の斬撃。
ヌーイの首は落ち、それにともなって体が消滅していく。
人族が魔族化した際の特徴的な現象だ。
無理やりこの世に繋ぎとめていた糸のようなものが切れ、形を保てなくなってしまうのだ。
せめて最後は痛みなく死ねたことだけが救いになればいいのだが。
「……お兄様」
一部始終を見届けていたティナが、結界を解除しこちらに歩いてくる。
そして優しく俺を抱きしめる。
「どうしたんだ?」
「いえ、何でもありません。抱きしめたくなってしまっただけです」
そうは言うが、いつもと様子が違う。
きっと知人を殺した俺を慰めようとしてくれているのだろう。
相変わらず優しい妹だ。
さすがに異世界で過ごした中で、魔族を殺すことには慣れているなどと伝える訳にはいかない。
ティナの頭を撫でながら、カルドたちに視線を向ける。
カルドは無事に一命を取り留めたようだ。
ようやく一安心といったところか。
しかし幾つか疑問は残る。
なぜヌーイが魔族化の対象に選ばれたのだろう?
特別な何かを持っているとは思えない。
あるとすれば……俺を殺したいほど憎んでいたという部分だろうか?
自意識過剰のようになってしまうが、どこかで俺の戦い方を見た魔族が、自身の天敵として排除を試みた可能性がある。
だが、それも呆気なく失敗したことを考えると違っている気がする。
俺ではなく、俺に近い誰かを狙った?
だとしたら、それはきっと――
思考が核心に迫ろうとした瞬間だった。
どこからともなく現れた透明な鳥がティナに止まり、手紙に変わる。
「お兄様、ユナ様からの伝達魔術です」
その言葉を聞いた瞬間、ドクンと心臓が跳ねた。
なぜならそれは、いま俺が考えていた最悪の可能性と一致するから。
「っ、これは……見てください、お兄様!」
手紙を読んでいたティナが血相を変え俺にそう告げる。
渡された手紙にはたった一言、こう書かれてあった。
『助けて』と。
覚悟は一瞬で決まった。
「ティナ、俺はミアレルト領に向かう」
「っ、今からですか?」
「そうだ。わざわざ一言しか書かないほどに緊迫した状況だとするなら全く時間がない」
伝達魔術は、そこに書かれた文字数によって速度が大きく変わる。
ミアレルト領との距離と伝達魔術の内容がたった一言だということを考慮すれば、20分ほど前に発動されたはずだ。
本当に魔族がいるのかどうかはともかくとして、取り返しのつかない事態になっていたとしてもおかしくはない。
「向かう理由は分かりました。けれど本当にユナ様はミアレルト領にいますか? もしかしたら王都に戻る途中かもしれませんよ」
「いや、もしそうなら内容が増えたとしても記載してあるはずだ。場所が書いていないということは伝える必要がないということ。俺たちはユナが帰郷していることを知っている――まず間違いない」
「なるほど、理解できました。私も同行いたします」
「ティナもか?」
「はい、ユナ様は私の友人でもありますので」
「……分かった。ティナがいれば対応できる幅が広がる。期待してるぞ」
「はい、お兄様!」
方針は決まった。
ここにいる皆には自分たちで王都に戻ってもらわなければならないが、ただ事ではない状況であることは理解しているのか快く受け入れてもらえた。
遺跡の外までは全員で移動した後、俺はミアレルト領のある方向に視線を向ける。
ここからなら馬車で三日ほどかかる距離だ。普通に移動しても間に合わない。
俺はティナをお姫様抱っこの要領で抱える。
「まあ、お兄様!?」
「行くぞ、ティナ」
そして俺は駆け出した。
目的地まで、あと十五分。
「お、俺が負けた……? 嘘だ、こんなのは嘘だ! 何のために魔族にまでなったと思っている! 全部お前を殺すためだ!」
「俺を殺すためだけにか。割に合ってない条件のようだが、誰に唆された?」
「全ては俺の意思でやったことだ! 誰にも唆されてなどいない!」
「魔族に会っていないというのか?」
「当然だ!」
「……ふむ」
どうやら話が通じないようだ。
人族が魔族になるためには、他の魔族から力を分け与えてもらう必要がある。
が、その存在のことをヌーイは覚えていないらしい。
故意的に記憶を操られたと考えるのが自然だろう。
しかし、これは厄介なことになった。
人族を魔族化できるのは、優れた魔族だけだ。
ランクで表せば、どれほど低く見積もってもAランクには至る。
レーニスが言っていたのと同じ魔族かは不明だが、対応する必要がある。
今すぐ王都に帰還し各所に伝えるべきだ。
魔族がいた証拠としてヌーイを連れて行きたいところだが、恐らくこいつはもう長くない。
器に見合わない改造を施されたせいだろう。
間もなく命が尽き消滅する。
その際に魔力の暴走が起きたりしたらまずい。
ここら一体が吹き飛ぶ可能性がある。
……まあ、こうなるか。
「聞け、クズルーク! 貴様を殺すのは俺だ! 俺が貴様を、貴様を――」
「二の型――凪」
無音の斬撃。
ヌーイの首は落ち、それにともなって体が消滅していく。
人族が魔族化した際の特徴的な現象だ。
無理やりこの世に繋ぎとめていた糸のようなものが切れ、形を保てなくなってしまうのだ。
せめて最後は痛みなく死ねたことだけが救いになればいいのだが。
「……お兄様」
一部始終を見届けていたティナが、結界を解除しこちらに歩いてくる。
そして優しく俺を抱きしめる。
「どうしたんだ?」
「いえ、何でもありません。抱きしめたくなってしまっただけです」
そうは言うが、いつもと様子が違う。
きっと知人を殺した俺を慰めようとしてくれているのだろう。
相変わらず優しい妹だ。
さすがに異世界で過ごした中で、魔族を殺すことには慣れているなどと伝える訳にはいかない。
ティナの頭を撫でながら、カルドたちに視線を向ける。
カルドは無事に一命を取り留めたようだ。
ようやく一安心といったところか。
しかし幾つか疑問は残る。
なぜヌーイが魔族化の対象に選ばれたのだろう?
特別な何かを持っているとは思えない。
あるとすれば……俺を殺したいほど憎んでいたという部分だろうか?
自意識過剰のようになってしまうが、どこかで俺の戦い方を見た魔族が、自身の天敵として排除を試みた可能性がある。
だが、それも呆気なく失敗したことを考えると違っている気がする。
俺ではなく、俺に近い誰かを狙った?
だとしたら、それはきっと――
思考が核心に迫ろうとした瞬間だった。
どこからともなく現れた透明な鳥がティナに止まり、手紙に変わる。
「お兄様、ユナ様からの伝達魔術です」
その言葉を聞いた瞬間、ドクンと心臓が跳ねた。
なぜならそれは、いま俺が考えていた最悪の可能性と一致するから。
「っ、これは……見てください、お兄様!」
手紙を読んでいたティナが血相を変え俺にそう告げる。
渡された手紙にはたった一言、こう書かれてあった。
『助けて』と。
覚悟は一瞬で決まった。
「ティナ、俺はミアレルト領に向かう」
「っ、今からですか?」
「そうだ。わざわざ一言しか書かないほどに緊迫した状況だとするなら全く時間がない」
伝達魔術は、そこに書かれた文字数によって速度が大きく変わる。
ミアレルト領との距離と伝達魔術の内容がたった一言だということを考慮すれば、20分ほど前に発動されたはずだ。
本当に魔族がいるのかどうかはともかくとして、取り返しのつかない事態になっていたとしてもおかしくはない。
「向かう理由は分かりました。けれど本当にユナ様はミアレルト領にいますか? もしかしたら王都に戻る途中かもしれませんよ」
「いや、もしそうなら内容が増えたとしても記載してあるはずだ。場所が書いていないということは伝える必要がないということ。俺たちはユナが帰郷していることを知っている――まず間違いない」
「なるほど、理解できました。私も同行いたします」
「ティナもか?」
「はい、ユナ様は私の友人でもありますので」
「……分かった。ティナがいれば対応できる幅が広がる。期待してるぞ」
「はい、お兄様!」
方針は決まった。
ここにいる皆には自分たちで王都に戻ってもらわなければならないが、ただ事ではない状況であることは理解しているのか快く受け入れてもらえた。
遺跡の外までは全員で移動した後、俺はミアレルト領のある方向に視線を向ける。
ここからなら馬車で三日ほどかかる距離だ。普通に移動しても間に合わない。
俺はティナをお姫様抱っこの要領で抱える。
「まあ、お兄様!?」
「行くぞ、ティナ」
そして俺は駆け出した。
目的地まで、あと十五分。
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