魔術学院の最強剣士 〜初級魔術すら使えない無能と蔑まれましたが、剣を使えば世界最強なので問題ありません。というか既に世界を一つ救っています〜

八又ナガト

文字の大きさ
35 / 55
第二部 剣神と呼ばれた男

38 Aクラスへ

しおりを挟む
「ルークさん、お荷物お持ちいたしましょうか!」
「いや、いい」

 セルパンの申し出を俺は一蹴する。
 というか、なぜいきなりこんな態度になったんだろうか?
 俺はこれまでに至る経緯を思い出す。

 昨日俺は突如として現れたヒュドラを討伐した。
 その後、Sランク魔物が現れる緊急事態により実戦演習は急遽中止になった。
 学生たちは解散となり寮に戻ることになった。
 そして翌日、こうしてクラスに顔を出した途端、セルパンの態度が急変していたという訳だ。
 ……うん、よく分からん。

 何でも話を聞くと、ヒュドラを圧倒する俺の戦いぶりを見て尊敬の念を抱いたのだとか。
 そう悪く感じる訳でもないが、特にうれしくもなかった。
 わざわざ言葉には出さないが。

「アートアルドさん、少しよろしいですか?」

 セルパンの対応に困っていると、担任から呼び出される。

「実はですね、昨日アートアルドさんがSランク魔物を倒したことにより、規定として大量に加点されることになりました。よって期末試験を待つことなく、Aクラスへの転入資格を手に入れる運びとなりました」
「また試験があるんですか?」
「いえ、希望を出していただければ本日にでも異動が叶いますがいかがいたしますか?」

 これは嬉しい誤算だ。
 答えはもちろん。

「はい、行きます」

 俺は迷うことなく頷いた。


 そんなこんなで数十分後。
 俺はAクラスの者たちの前に立っていた。

「ルーク・アートアルドです。よろしくお願いします」

 次の瞬間、クラスの一番後ろに座っていたティナが勢いよく立ち上がる。

「とうとう、とうとうこの時が来ましたわ! お待ちしておりました、お兄様!」
「落ち着け、ティナ」
「はい、お兄様」

 ティナはにこにこ笑顔のまま席に着く。
 その様子を見て、教室の者たちがざわざわと騒ぎ始める。

「おい、ティナ様が笑ったぞ」
「ティナ様があんなに感情を表に出すのなんて初めて見た」
「ああ、なんてお美しい……私はこの光景を見るためだけにAクラスに所属しているのですわ!」

 何だか怪しい人も混じっているような気がしたが、ほとんどの者はティナが笑うところを見たことがなかったらしい。
 俺と一緒にいる時は常に満面の笑みだから不思議な感じだ。

 と、誰もが転入生の俺ではなくティナを見る中、最前列に座る茶髪の優男が立ち上がり、俺に微笑みかけてくる。

「やあ、君が噂のルーク・アートアルド君だね。あのティナさんが尊敬するほどの実力を持つという」
「そういう貴方は?」
「ああ、申し訳ない。言い忘れていたね。僕はゼーエン・ランプロン。この通り、ティナさんと同じ絢爛学生会(ブルーム)の一員さ」

 そう言いながら、ゼーエンは胸元にかけられる金色のブローチを見せつけてくる。
 なるほど、絢爛学生会(ブルーム)だというならばその実力は確かだろう。
 今後のためにも親交を深めておくのはいいかもしれない。

「そうか。これからよろしく頼む、ゼーエン」
「こちらこそさ」

 言って、俺とゼーエンは握手を交わした。
 挨拶に一区切りがついたタイミングを見計らってか、Aクラスの担任であるオルドが声を上げる。

「んじゃ、ルークの自己紹介も済んだところで移動だ。各自訓練場に移れ」

 その言葉に従うように、学生たちが移動し始める。
 そんな中、ティナは嬉しそうに俺のもとに駆け寄り、腕を抱きしめる。

「それでは行きましょう、お兄様」
「ああ」

 それは俺からすれば見慣れた光景だが、周りにとってはそうではないらしい。

「なっ、あのティナ様に抱きしめてもらえるだなんて! 兄妹とはいえ羨ましすぎる!」
「許せねぇ……模擬戦でボコボコにしてやらあ」
「ふふ、ふふふ、つまりあの男の腕にはティナ様のエキスが染みついているという訳ですね。どのようにして入手してみせましょうか? ふふ、ふふふふふ」

 やっぱりちょっと危ない人がいると思うんだけど。
 防衛策とか考えておいた方がいいのかな?

「ところで、訓練場に移動して何をするんだ?」
「あら、そう言えばお兄様は初めてでしたわね。本日は四年生と五年生のAクラスによる共同訓練です。お互いに刺激を受けることが目的なんです」
「なるほど、そういう講義もあるのか」

 第二学園ではなかった形式だ。
 まああちらでは本当の意味で強くなろうと考えている者はいなかったため、それに合わせた講義内容になっていたからだろう。

 期待感を抱きながら訓練場に辿り着くと、そこには見慣れた人物がいた。

「あっ、ルーク、ティナ!」
「……ユナ」

 そこにいたのは綺麗な銀髪を肩まで伸ばす少女、ユナだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』 恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。 戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。 だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】 導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。 「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」 「誰も本当の私なんて見てくれない」 「私の力は……人を傷つけるだけ」 「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」 傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。 しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。 ――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。 「君たちを、大陸最強にプロデュースする」 「「「「……はぁ!?」」」」 落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。 俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。 ◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

処理中です...