37 / 55
第二部 剣神と呼ばれた男
40 最強との遭遇
しおりを挟む
「っと、もうこんな時間か」
王都にある雑貨屋を出ると、外はもう暗くなっていた。
帰路につきながら、俺はここ数日のことを思い出す。
第一学院に通うようになってから、もう数日が過ぎた。
実戦演習や模擬戦を重ねるうちに、俺は少しずつ周りから実力を認められるようになっていった。
しかし俺から皆に対する感想は、正直なところ拍子抜けもいいところだった。
ブルームと呼ばれる者たちも、ティナの実力に遠く及ばない。
単独で魔族を打ち破ることすらできないだろう。
俺が異世界からこちらの世界に戻ってきて思ったこと。
それは多くの実力者と戦い、自分の力を試すこと。
そのため最初の目標が第一学院の者たちと戦うことだったが、そろそろ次の段階に進んだ方がいいかもしれない。
そんなことを考えながら歩いていると、ふと違和感を覚える。
「なんだ? 人の気配がしない?」
貴族が暮らす北区でこんな時間に出歩く者は普通いないため、人がいないのは理解できる。
けれど今に限っては気配すらなかった。
……他人の侵入を防ぐような大規模な結界が張られているのか?
けど何のために?
そんな疑問を考えている余裕はなかった。
「シャァアアア」
「――む」
背後から、高音と共に何かが襲い掛かってくる。
俺は前方に跳んだあと、身を翻し剣を構える。
「こいつは……」
そこにいたのは蛇型の魔物だった。
それも一匹や二匹ではない。数十匹の魔物がいた。
「これは……」
直前まで気配を感じなかったということは、今この場で召喚された魔物だろう。
でも一体だれが――
「ふっ、躱すなんてつれないねぇ」
「――お前は」
飄々とした男らしき声と共に、暗闇から何者かが姿を現す。
ローブに身を隠しているが、それでも二本の黒い角は隠せていない。
ほぼ間違いなく魔族だ。
「僕かい? 僕はベルク。ただの魔族さ。エレジィよりはちょびっとだけ強めのさ」
エレジィのことを知っているのか。
「俺にエレジィの話題を出すってことは、もう知っているんだな」
「もちろん。君がエレジィを殺したんだよね? ああ、いいんだよ別に。責任は感じなくていい。僕たちは魔族と人族、敵同士だ。殺し合うことにいちいち文句なんてつけてらんないからね」
「なら何で俺のところにきた? わざわざ結界まで張って」
「決まってるじゃない。気分だよ気分。仲間を殺したあげく、僕が使役する最強の魔物であるヒュドラを瞬殺する人族に興味を持つのは当然だろ?」
「あのヒュドラもお前のせいだったのか」
「うんうん、手っ取り早く王国の学院生を殺せると思ったんだけど、君に防がれちゃった。まあいいよそれは別に。そんなことよりもさ――早く殺し合おうよ!」
瞬間、目の前に異様な光景が広がる。
ベルクと名乗った魔族の両腕が人体の法則を無視したかのようにぐにゃぐにゃとうねると、巨大な蛇に変貌する。
四つの金色の眼が俺を射抜く。
「さあ、死んじゃってよ!」
ギュンっと伸びるようにして俺に迫る二匹の巨大な蛇と、数十匹の小さな蛇たち。
厄介なことになったと思いながら、俺は剣を構えて力強く振るう――
直前、“それ”は起きた。
「シュナイツ」
透き通るような声が高らかに響いたかと思えば、上空から数十もの光の柱が落ちてくる。
その光の柱に触れた蛇の魔物たちは、一瞬のうちに浄化されていく。
「何者だ!」
突然の出来事に声を荒げるベルク。
しかし返ってきたのは名ではなく、詠唱だった。
「ジャッジメント」
それは数十の光の柱を一つに集めたような、巨大で強力な光だった。
「ふざけるな! こんな訳のわからん流れで、僕が滅ぶわけ――」
その光を浴びたベルクは、言葉を最後まで紡ぐことなく消滅する。
強力な魔族を瞬殺する、圧倒的な魔術だった。
ただ、ここからが本番だった。
上空から射す光の中を、一人の女性がゆっくりと下っていく。
赤みがかった茶髪を腰元まで伸ばし、翡翠の瞳を持つ美しい女性。
その女性は着地した後、静かに俺に視線を向ける。
「やっと見つけた」
ドクンと心臓が跳ねる。
この感覚を俺は知っている。
異世界で嫌というほど経験してきた。
自分の命を脅かす強敵と邂逅した時に感じるものだ。
「君がルーク・アートアルドだね?」
その女性は間違いなく俺のことを知っていた。
「お前は一体……」
その問いに、女性は答える。
「私かい? 私はレオノーラ・フォルティス。ただの通りすがりの冒険者だが――」
国内最強の魔術師と名高い、Sランク冒険者の名を。
「とりあえず、君に決闘を申し込もう」
瞬間、レオノーラの周囲に七色の光が集い、その全てが俺に向けて放たれた。
王都にある雑貨屋を出ると、外はもう暗くなっていた。
帰路につきながら、俺はここ数日のことを思い出す。
第一学院に通うようになってから、もう数日が過ぎた。
実戦演習や模擬戦を重ねるうちに、俺は少しずつ周りから実力を認められるようになっていった。
しかし俺から皆に対する感想は、正直なところ拍子抜けもいいところだった。
ブルームと呼ばれる者たちも、ティナの実力に遠く及ばない。
単独で魔族を打ち破ることすらできないだろう。
俺が異世界からこちらの世界に戻ってきて思ったこと。
それは多くの実力者と戦い、自分の力を試すこと。
そのため最初の目標が第一学院の者たちと戦うことだったが、そろそろ次の段階に進んだ方がいいかもしれない。
そんなことを考えながら歩いていると、ふと違和感を覚える。
「なんだ? 人の気配がしない?」
貴族が暮らす北区でこんな時間に出歩く者は普通いないため、人がいないのは理解できる。
けれど今に限っては気配すらなかった。
……他人の侵入を防ぐような大規模な結界が張られているのか?
けど何のために?
そんな疑問を考えている余裕はなかった。
「シャァアアア」
「――む」
背後から、高音と共に何かが襲い掛かってくる。
俺は前方に跳んだあと、身を翻し剣を構える。
「こいつは……」
そこにいたのは蛇型の魔物だった。
それも一匹や二匹ではない。数十匹の魔物がいた。
「これは……」
直前まで気配を感じなかったということは、今この場で召喚された魔物だろう。
でも一体だれが――
「ふっ、躱すなんてつれないねぇ」
「――お前は」
飄々とした男らしき声と共に、暗闇から何者かが姿を現す。
ローブに身を隠しているが、それでも二本の黒い角は隠せていない。
ほぼ間違いなく魔族だ。
「僕かい? 僕はベルク。ただの魔族さ。エレジィよりはちょびっとだけ強めのさ」
エレジィのことを知っているのか。
「俺にエレジィの話題を出すってことは、もう知っているんだな」
「もちろん。君がエレジィを殺したんだよね? ああ、いいんだよ別に。責任は感じなくていい。僕たちは魔族と人族、敵同士だ。殺し合うことにいちいち文句なんてつけてらんないからね」
「なら何で俺のところにきた? わざわざ結界まで張って」
「決まってるじゃない。気分だよ気分。仲間を殺したあげく、僕が使役する最強の魔物であるヒュドラを瞬殺する人族に興味を持つのは当然だろ?」
「あのヒュドラもお前のせいだったのか」
「うんうん、手っ取り早く王国の学院生を殺せると思ったんだけど、君に防がれちゃった。まあいいよそれは別に。そんなことよりもさ――早く殺し合おうよ!」
瞬間、目の前に異様な光景が広がる。
ベルクと名乗った魔族の両腕が人体の法則を無視したかのようにぐにゃぐにゃとうねると、巨大な蛇に変貌する。
四つの金色の眼が俺を射抜く。
「さあ、死んじゃってよ!」
ギュンっと伸びるようにして俺に迫る二匹の巨大な蛇と、数十匹の小さな蛇たち。
厄介なことになったと思いながら、俺は剣を構えて力強く振るう――
直前、“それ”は起きた。
「シュナイツ」
透き通るような声が高らかに響いたかと思えば、上空から数十もの光の柱が落ちてくる。
その光の柱に触れた蛇の魔物たちは、一瞬のうちに浄化されていく。
「何者だ!」
突然の出来事に声を荒げるベルク。
しかし返ってきたのは名ではなく、詠唱だった。
「ジャッジメント」
それは数十の光の柱を一つに集めたような、巨大で強力な光だった。
「ふざけるな! こんな訳のわからん流れで、僕が滅ぶわけ――」
その光を浴びたベルクは、言葉を最後まで紡ぐことなく消滅する。
強力な魔族を瞬殺する、圧倒的な魔術だった。
ただ、ここからが本番だった。
上空から射す光の中を、一人の女性がゆっくりと下っていく。
赤みがかった茶髪を腰元まで伸ばし、翡翠の瞳を持つ美しい女性。
その女性は着地した後、静かに俺に視線を向ける。
「やっと見つけた」
ドクンと心臓が跳ねる。
この感覚を俺は知っている。
異世界で嫌というほど経験してきた。
自分の命を脅かす強敵と邂逅した時に感じるものだ。
「君がルーク・アートアルドだね?」
その女性は間違いなく俺のことを知っていた。
「お前は一体……」
その問いに、女性は答える。
「私かい? 私はレオノーラ・フォルティス。ただの通りすがりの冒険者だが――」
国内最強の魔術師と名高い、Sランク冒険者の名を。
「とりあえず、君に決闘を申し込もう」
瞬間、レオノーラの周囲に七色の光が集い、その全てが俺に向けて放たれた。
1
あなたにおすすめの小説
ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい
空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。
孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。
竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。
火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜?
いやいや、ないでしょ……。
【お知らせ】2018/2/27 完結しました。
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件
言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」
──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。
だが彼は思った。
「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」
そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら……
気づけば村が巨大都市になっていた。
農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。
「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」
一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前!
慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが……
「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」
もはや世界最強の領主となったレオンは、
「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、
今日ものんびり温泉につかるのだった。
ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!
転生無双学院~追放された田舎貴族、実は神剣と女神に愛されていた件~
eringi
ファンタジー
「役立たず」と呼ばれ、貴族家を追放された少年エリアス。
すべてを失った彼が辿り着いたのは、見捨てられた古の神殿。
そこで眠っていた「神剣」ルミナと「女神」セリアに出会い、隠された真の力――“世界の法則を書き換える権能”を得る。
学院で最底辺だった少年は、無自覚のまま神々と王族すら凌駕していく。
やがて彼の傍らには、かつて彼を見下した者たちが跪き、彼を理解した者たちは彼に恋をする。
繰り返される“ざまぁ”の果てに、無自覚の英雄は世界を救う。
これは、「追い出された少年」が気づかぬうちに“世界最強”となり、
女神と共に愛と赦しとざまぁを与えていく物語。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる