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第二部 剣神と呼ばれた男
50 ティナVSマギサ 2
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私は呪文を紡いでいく。
「――烈火を封じ、大地を天変する――」
「あら、まだ戦う気があるのね」
驚いたように立ち止まるマギサ。
しかし動揺はない。
「何度試せば分かるのかしら? 貴女の攻撃は無駄なの。私の剛翼の前には、どんな攻撃も無力。それが分かったのなら素直にひれ伏すがいい……わ?」
そこでようやくその違和感に気付いたのだろう。
マギサはずっと私を注視し、魔術の発動を待っていた。
けれど、私には百メートルの魔力操作範囲がある。
発動場所と選択したのは私の周囲ではなく、マギサの懐。
「なっ、これは一体!?」
あそこなら、翼の防御は間に合わない。
それどころか翼の内側で発動されれば、何倍の威力がマギサに襲い掛かるはずだ。
そんな希望も込めて、私は叫んだ。
「氷嶽!」
巨大な氷山がマギサを発信源として出現する。
手応えは十分。これで彼女の生け捕りに成功したはず――
「――な~んちゃって、よ」
「なっ!」
爆発音と共に、氷山が粉砕される。
中から現れたマギサは、驚愕する私の目の前まで瞬時に移動した。
「氷――」
「させないわ」
ギシッ、と、マギサの手が私の喉を掴み空中に持ち上げる。
しかし、あえてそうしているのか、私が声を出せる程度には力を緩めていた。
「ど、う、して……魔術は、成功したはず……」
「ええ、成功したわ。私もさすがに驚いたもの。けれど貴女には誤算があったみたいね。これを見るといいわ」
言って、マギサは自身の体に視線を落とす。
そこには私の魔術によってズタズタに引き裂かれた服……そしてその内側には、鱗で覆われた胴が存在していた。
「う、ろこ……」
翼と尻尾だけではなかった。
竜族である彼女は他にもドラゴンの特性を持っているのだろう。
簡単に言ってしまえば、私の魔術は翼で防ぐ必要すらなかったということだ。
「さて、貴女の隠し玉もなくなったことだし、今度こそ終わりね。けど安心してくれていいわよ。貴女は想像していたより素敵だったもの。目をくり抜いたりなんてしないわ。美しさを保ったままコレクションにいれてあげるわ」
そんなふざけたことを抜かすマギサに、問わなければならないことがある。
「貴女が、人間界に来たのは、そんな理由……?」
「もちろん本命は別だけれど、私個人としてはその通りよ。人族には貴女のような美しい方がまだまだいるのかしら? ああ、ときめくわ。何百人を私のコレクションの中に入れられるかしら?」
「……そうですか」
それを聞いて、私の中の覚悟が決まった。
「それは、安心しました」
「――――ッ!?」
マギサは私から何を感じ取ったのか、手を離し後方に飛びのく。
マギサ自分がなぜそんな行動を取ったのか分からないような表情を浮かべている。
「ふ、ふふ。驚いたわ。いきなり声のトーンが変わったからかしら? 思わず飛びのいてしまったけれど……それで何が安心したのかしら? まさかお仲間が助けに来てくれるだなんて妄想でもしているのかしら?」
「いいえ、そうではありません。むしろお兄様たちがいないほうが好都合です。これから私が行うことを、あまり他の人に見られたくないですからね」
「見られたくない? 頭を地につけて許しを請うとでも言うのかしら?」
「違いますよ。ここから行うのは……ただの虐殺です」
「虐、殺……?」
マギサは素っ頓狂な表情を浮かべた後、楽しそうに笑いだす。
「ふふ、ふふふ、何を言い出すかと思ったら! まだ分からないのかしら? 貴女の攻撃は私の前には無力なのよ!?」
「御託は結構です。いきますよ」
「ッ!?」
マギサは翼で自身の体を覆い、私の攻撃に身構える。
けれど、そんなものは全て無駄だ。
“この力”を前に、そんな小手先の防御など役に立たない。
本当は使いたくなかった。
魔族が相手とはいえ、人によく似た敵に対してだなんて。
けれどマギサは駄目だ。
彼女が生き延びることで犠牲になる者のことを考えたら、ここで私が始末する必要がある。
だから唱えた。
“絶対絶命”の魔術の名を。
「氷磔」
瞬間、マギサを起点として氷の花が咲いた。
彼女の体は串刺し状態となり、口から血を吐き出す。
「何を、したの……?」
自分がやられたという事実を呑み込めていないマギサに、私は魔術の仕組みを教える。
「簡単なことです。貴女を起点として魔術を発動しました」
「そんなことは分かっているわ! けど、さっきの魔術は鱗の鎧で簡単に防げた! なのに、どうして今回に限って……」
「ああ、言い方を変えますね。“貴女の体内”を起点としたんです」
「体、内……?」
そう、体内だ。
いくら強力な肉体を持っている者でも、体内まで鍛え上げることはできない。
脆弱な内側からなら、ダメージを与えることは容易い。
「そんな馬鹿げた力を、持っているなら……どうして初めから使わなかったの? まさか、手を抜いていたとでも……?」
「そういう訳じゃありません。この力は確実に敵を殺します。だから普段は制限をしているだけです。だけど」
ここで一度言葉を止め、崩壊間際のマギサを見下ろす。
「貴女は確実に殺さないといけない敵だった。ただそれだけの話です」
それを聞いたマギサは、何かを理解したように小さく笑った。
体が消えていくなか、彼女は最期に小さくこう零した。
ああ、やはり、貴女は世界一美しいと――
魔族の評価になど興味はない。
私が愛するのはお兄様だけだと決めているからだ。
マギサの消滅を確認した私は、踵を返し歩き始めた。
「さあ、先に進みましょう」
「――烈火を封じ、大地を天変する――」
「あら、まだ戦う気があるのね」
驚いたように立ち止まるマギサ。
しかし動揺はない。
「何度試せば分かるのかしら? 貴女の攻撃は無駄なの。私の剛翼の前には、どんな攻撃も無力。それが分かったのなら素直にひれ伏すがいい……わ?」
そこでようやくその違和感に気付いたのだろう。
マギサはずっと私を注視し、魔術の発動を待っていた。
けれど、私には百メートルの魔力操作範囲がある。
発動場所と選択したのは私の周囲ではなく、マギサの懐。
「なっ、これは一体!?」
あそこなら、翼の防御は間に合わない。
それどころか翼の内側で発動されれば、何倍の威力がマギサに襲い掛かるはずだ。
そんな希望も込めて、私は叫んだ。
「氷嶽!」
巨大な氷山がマギサを発信源として出現する。
手応えは十分。これで彼女の生け捕りに成功したはず――
「――な~んちゃって、よ」
「なっ!」
爆発音と共に、氷山が粉砕される。
中から現れたマギサは、驚愕する私の目の前まで瞬時に移動した。
「氷――」
「させないわ」
ギシッ、と、マギサの手が私の喉を掴み空中に持ち上げる。
しかし、あえてそうしているのか、私が声を出せる程度には力を緩めていた。
「ど、う、して……魔術は、成功したはず……」
「ええ、成功したわ。私もさすがに驚いたもの。けれど貴女には誤算があったみたいね。これを見るといいわ」
言って、マギサは自身の体に視線を落とす。
そこには私の魔術によってズタズタに引き裂かれた服……そしてその内側には、鱗で覆われた胴が存在していた。
「う、ろこ……」
翼と尻尾だけではなかった。
竜族である彼女は他にもドラゴンの特性を持っているのだろう。
簡単に言ってしまえば、私の魔術は翼で防ぐ必要すらなかったということだ。
「さて、貴女の隠し玉もなくなったことだし、今度こそ終わりね。けど安心してくれていいわよ。貴女は想像していたより素敵だったもの。目をくり抜いたりなんてしないわ。美しさを保ったままコレクションにいれてあげるわ」
そんなふざけたことを抜かすマギサに、問わなければならないことがある。
「貴女が、人間界に来たのは、そんな理由……?」
「もちろん本命は別だけれど、私個人としてはその通りよ。人族には貴女のような美しい方がまだまだいるのかしら? ああ、ときめくわ。何百人を私のコレクションの中に入れられるかしら?」
「……そうですか」
それを聞いて、私の中の覚悟が決まった。
「それは、安心しました」
「――――ッ!?」
マギサは私から何を感じ取ったのか、手を離し後方に飛びのく。
マギサ自分がなぜそんな行動を取ったのか分からないような表情を浮かべている。
「ふ、ふふ。驚いたわ。いきなり声のトーンが変わったからかしら? 思わず飛びのいてしまったけれど……それで何が安心したのかしら? まさかお仲間が助けに来てくれるだなんて妄想でもしているのかしら?」
「いいえ、そうではありません。むしろお兄様たちがいないほうが好都合です。これから私が行うことを、あまり他の人に見られたくないですからね」
「見られたくない? 頭を地につけて許しを請うとでも言うのかしら?」
「違いますよ。ここから行うのは……ただの虐殺です」
「虐、殺……?」
マギサは素っ頓狂な表情を浮かべた後、楽しそうに笑いだす。
「ふふ、ふふふ、何を言い出すかと思ったら! まだ分からないのかしら? 貴女の攻撃は私の前には無力なのよ!?」
「御託は結構です。いきますよ」
「ッ!?」
マギサは翼で自身の体を覆い、私の攻撃に身構える。
けれど、そんなものは全て無駄だ。
“この力”を前に、そんな小手先の防御など役に立たない。
本当は使いたくなかった。
魔族が相手とはいえ、人によく似た敵に対してだなんて。
けれどマギサは駄目だ。
彼女が生き延びることで犠牲になる者のことを考えたら、ここで私が始末する必要がある。
だから唱えた。
“絶対絶命”の魔術の名を。
「氷磔」
瞬間、マギサを起点として氷の花が咲いた。
彼女の体は串刺し状態となり、口から血を吐き出す。
「何を、したの……?」
自分がやられたという事実を呑み込めていないマギサに、私は魔術の仕組みを教える。
「簡単なことです。貴女を起点として魔術を発動しました」
「そんなことは分かっているわ! けど、さっきの魔術は鱗の鎧で簡単に防げた! なのに、どうして今回に限って……」
「ああ、言い方を変えますね。“貴女の体内”を起点としたんです」
「体、内……?」
そう、体内だ。
いくら強力な肉体を持っている者でも、体内まで鍛え上げることはできない。
脆弱な内側からなら、ダメージを与えることは容易い。
「そんな馬鹿げた力を、持っているなら……どうして初めから使わなかったの? まさか、手を抜いていたとでも……?」
「そういう訳じゃありません。この力は確実に敵を殺します。だから普段は制限をしているだけです。だけど」
ここで一度言葉を止め、崩壊間際のマギサを見下ろす。
「貴女は確実に殺さないといけない敵だった。ただそれだけの話です」
それを聞いたマギサは、何かを理解したように小さく笑った。
体が消えていくなか、彼女は最期に小さくこう零した。
ああ、やはり、貴女は世界一美しいと――
魔族の評価になど興味はない。
私が愛するのはお兄様だけだと決めているからだ。
マギサの消滅を確認した私は、踵を返し歩き始めた。
「さあ、先に進みましょう」
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