魔術学院の最強剣士 〜初級魔術すら使えない無能と蔑まれましたが、剣を使えば世界最強なので問題ありません。というか既に世界を一つ救っています〜

八又ナガト

文字の大きさ
46 / 55
第二部 剣神と呼ばれた男

49 ティナVSマギサ 1

しおりを挟む
 私――ティナ・アートアルドの前には一人の女魔族がいた。
 血塗られたかのごとき赤髪に、その身を覆ってしまえるほどの大きさを誇る漆黒の翼。
 余裕を隠すこともなく、嬉しそうにペロリと舌舐めずりする。

「ふふっ、いいわね。キラキラと輝く、まるで宝石のような青色の瞳。くり抜いて私のコレクションにしてあげたいわ」
「……気持ち悪いですね」
「ふふっ、その理解できないものを見下すような視線、素晴らしいわ。その気高さが今から地に落ちると思えば、ゾクゾクするもの」
「――死んでください」

 会話を続けるのも不快だった。
 私は詠唱破棄で氷の上級魔術を放った。

 しかし、

「あらあら、いきなり攻撃だなんて失礼ね。まあ、そこもまた素敵なのだけれど」

 上級魔術は彼女の翼によって簡単に弾かれてしまう。
 傷一つ与えることはできなかった。
 私は思わず、ギリッと歯を強く噛み締めた。

「あら、そういえば自己紹介がまだだったかしら。だから親しみが持てないのね。仕方ないわね」

 私の様子には気付いていないのか、女魔族はそう言ってその場で一礼する。

「私は魔族の中でも特別な力を持つ、竜族のマギサよ。どうぞよろしくね、お嬢さん?」
「――――ッ」

 女魔族――マギサからとてつもない量の魔力が吹き荒れる。
 戦闘準備を終えたということだろう。
 間違いなく自分よりも上位の実力者であることを肌で実感する。

 だとしても退くことはできない。
 私たち四人が分断された以上、目の前の敵は自分自身で倒す必要がある。
 ――もう、お兄様には頼れない。

「氷石(アイスストーン)!」

 最大限まで圧縮した氷の石を、瞬時に数十個生み出しマギサに向けて放つ。

「甘いわ!」

 だが、マギサは焦った様子もなく漆黒の翼で自身の体を覆う。
 氷の石は翼の防御の前に呆気なく砕け散っていく。

 ……あの翼がある限り、私の攻撃は通じないみたいですね。

 マギサの防御の要が何であるかを把握し、すぐに策を練り始める。
 相手がどんな魔術を放ってこようが、対応できるだけの注意はしておく。
 しかし誤算があった。
 今回私が相手にしているのは人族ではなく魔族なのだ。

 魔術を使わずとも、彼女たちには――

「それじゃあ、次はこちらの番ね」
「ッ!?」

 ――十分な攻撃手段がある!

 マギサは翼を羽ばたかせると地面を蹴り、恐るべき速度で私に迫る。
 けど、お兄様の全速力にはとても程遠い。
 何とか対応が可能だ。

「喰らいなさい!」
「断ります!」

 マギサの大振りの拳を、バックステップで躱す。
 安堵しかけたその瞬間、信じられない光景が視界に飛び込んでくる。
 マギサの拳は躱した。
 しかしその背後から、何かの塊が私目掛けて襲い掛かってくる。

「氷壁(アイスウォール)!」

 反射的に生み出したのは、硬質な氷の壁だった。
 だが、それはパリン! という甲高い音と共に呆気なく破壊される。
 氷壁を破壊した塊は、そのまま私の体に叩きつけられた。

「がはっ」

 骨が何本も同時に折れる感覚がした。
 瞬時に治癒魔術を使うも、瞬時に回復することは不可能だ。
 私は着地に失敗し、片膝を地面につける。
 そして私を攻撃したものの正体を見た。

「尻尾……?」

 マギサから生えているのは、紛れもない尻尾だった。
 確かに彼女は自身のことを竜族だといった。
 竜の特性を持っているのは間違いない。
 翼だけではなく、尻尾もその範疇だったという話だろう。

 ボロボロの頭で分析する私に対して、マギサは無傷だった。
 楽しそうに口角を上げる。

「ふふっ、素敵よ。やはり美しいものが傷だらけになる姿は良いわね」

 コツ、コツと。
 マギサは両腕を広げながらゆっくりと近づいてくる。
 私に反撃する気力がないと見ているのか、それとも攻撃されても対応する自信があるからか、隙だらけだ。

 ならばまだ現状を打開する手はある。
 この戦いではまだ使用していていないが、私にはとっておきの手がある。
 それを使用すれば、挽回の可能性はある!

 そのとっておきをお見舞いするためにも、私はさっそく呪文を唱え始めた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい

空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。 孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。 竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。 火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜? いやいや、ないでしょ……。 【お知らせ】2018/2/27 完結しました。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位 転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件

言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」 ──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。 だが彼は思った。 「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」 そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら…… 気づけば村が巨大都市になっていた。 農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。 「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」 一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前! 慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが…… 「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」 もはや世界最強の領主となったレオンは、 「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、 今日ものんびり温泉につかるのだった。 ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!

転生無双学院~追放された田舎貴族、実は神剣と女神に愛されていた件~

eringi
ファンタジー
「役立たず」と呼ばれ、貴族家を追放された少年エリアス。 すべてを失った彼が辿り着いたのは、見捨てられた古の神殿。 そこで眠っていた「神剣」ルミナと「女神」セリアに出会い、隠された真の力――“世界の法則を書き換える権能”を得る。 学院で最底辺だった少年は、無自覚のまま神々と王族すら凌駕していく。 やがて彼の傍らには、かつて彼を見下した者たちが跪き、彼を理解した者たちは彼に恋をする。 繰り返される“ざまぁ”の果てに、無自覚の英雄は世界を救う。 これは、「追い出された少年」が気づかぬうちに“世界最強”となり、 女神と共に愛と赦しとざまぁを与えていく物語。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

処理中です...