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第二部 剣神と呼ばれた男
48 遭遇と分断
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俺たち四人はラピス遺跡に入った後、最深部を目指して全速力で駆けていた。
その途中、視界に映る光景には驚くべきものがあった。
「これは凄まじいな……」
死体。死体。死体。
魔物の死体がそこら中に転がっている。
Bランク以上の強力な魔物にもかかわらず、ほとんどは一撃でやられたようだ。
この先にいる者たちの実力が窺える。
おかげで俺たちに魔物が襲い掛かってくることはないため、順調に進めているが。
それにしても、いつまで経っても敵の姿が見えない。
どれほど先に進んでいるのだろうか。
このままでは魔硬石を奪われてしまう可能性が高い。
「ルーク師匠、私たちだけでも急ごう。時間がない」
「……そうだな。ティナ、ユナ、俺とレオノーラは先に行く!」
「分かりました!」
「分かった!」
この場にいる四人の中で、速度という面では俺とレオノーラが圧倒的だ。
高水準の身体強化を扱えるようになったユナでも、まだ付いてこられるレベルには達していない。
「いくぞ、レオノーラ」
「ああ!」
俺たちは一段階スピードを上げ、颯爽と駆けだした。
その禍々しい気配を感じたのは、それからわずか一分後のことだ。
ほんの少し先に敵がいる。
俺とレオノーラは視線を交わし、こくりと頷いてからさらに速度を上げた。
戦闘の心構えはとっくに終わっている。
そんな俺たちが辿り着いたのは、ラピス遺跡の最深部の少し手前にある、巨大な一室だった。
儀式でも行うための空間なのか、美しい正方形に整えられ、中心には何らかの祭壇が備わっている。
しかし、いつまでも感慨深く室内を見渡すことはできない。
そこには俺とレオノーラ以外に五人の魔族がいたからだ。
「あれ? おかしいな。魔力の気配的に追ってきているのは一人だって思ってたんだけど」
肩まで伸びる銀髪が特徴的な、落ち着いた雰囲気のある男魔族がおもむろにそう呟いた。
俺の魔力を感知できず、レオノーラの存在にのみ気付いていたということだろう。
何はともあれ、これで追いついた。
俺は状況を把握するために、彼らに問いを投げかける。
「お前たちは魔族だな?」
「うん、まあそうだけど。見たら分からないかな? 君たちとは見た目が違うと思うんだけど」
銀髪男は自分の額から伸びる角を指さす。
続けて、他の四人の特徴も確認する。
鮮血のような赤色の長髪に、背から生える黒色の翼が特徴的な女魔族。
茶髪のツインテールに、額から伸びる二本の純白の角が特徴的な女魔族。
身長が二メートルを優に超え、鍛え抜かれた体躯を誇り、さらに四本の腕が生えている男魔族。
最後に、頭から猫耳が生えている、小さくつかみどころのない無表情な女魔族。
これまでに遭遇してきた魔族とは格が違う、正真正銘の強敵だと直感する。
下手をすれば、異世界での四天王に匹敵するかもしれない。
しかし違和感がある。
強力な気配を放つ者たちの中で、中心にいる銀髪の男からはオーラを感じない。
例えば町中ですれ違っても気付けないほど、非常に希薄な気配だ。
「まあせっかくだから自己紹介でもしようかい? 僕はクレアス、得意魔術は――」
「いや、必要ない」
クレアスと名乗った銀髪男の声を遮ったのはレオノーラだった。
話を聞く価値もないとばかりに、七色の魔力を浮遊させ攻撃の態勢を整えていた。
「開口一番でなんだが――滅べ」
言って放たれたのは、強力な光の柱。
とある魔族(名は忘れた)を一瞬で消滅させた魔術だ。
だが、それを見てもクレアスに焦りはない。
「はあ、話の途中に攻撃を仕掛けてくるだなんて、躾がなっていないね」
クレアスが自身に迫る魔術に対し、手をかざす。
あろうことか、ただそれだけで魔術は消滅した。
「なんだと!?」
「うん、やっぱりこの程度か。敵じゃないね。君たちも、後ろにいる彼女たちも」
クレアスの言葉に、俺は反射的に振り返る。
そこには遅れてこの場に辿り着いたティナとユナの姿があった。
「お兄様、追い付きました!」
「あの五人が魔族!?」
状況を瞬時に把握する二人。
戦闘準備を整えるように指示を出そうと考えていると、クレアスが「あれ」と声を漏らした。
「これは嬉しい誤算だね。まさか君が自らこの場に来てくれるだなんて」
「え……?」
クレアスの視線の先にいたのはユナだった。
ユナは驚いたように目を丸くしている。
クレアスはそんなユナの反応を気にする素振りもなく、嬉しそうに表情を緩める。
「ははっ、いいね。少し計画を修正しよう――アルマ!」
「うん、分かった」
猫耳が特徴的な女魔族――アルマがこくりと頷き、手元に灰色の魔力を集める。
瞬間、遺跡全体が揺れだした。
「なっ、これは!」
「地面が動いている!?」
俺たちが立っている足場が分裂し、動き出す。
相手の思惑通りにか、こちらの四人が離れ離れになってしまう。
「っ、皆、一ヵ所に集ま――」
「させねえよ」
指示を出そうとした俺の前に四本腕の男魔族が立ちはだかる。
男魔族はそのまま四本の腕を振るい、続けて俺に殴りかかってくる。
「む――」
剣を抜くタイミングを潰され、仕方なく距離を置く。
その間にも状況はがらりと変わっていた。
「あらあら、私の相手は貴女ね。なぶりがいがありそうだわ」
「近寄らないでください、汚らわしいです」
ティナは赤髪の女魔族と。
「あらら、相変わらず引きが悪いみたい、アタシ。貴女、強そうだから嫌なんだけどなぁ」
「――何を言っているんだ、化物が」
レオノーラは茶髪のツインテール魔族と。
「君はこっちだよ」
「……」
「――――!」
ユナは、クレアス、アルマと。
それぞれに敵をあてがわれ分断される。
部屋すら変えられたのか、すぐに他の者たちの姿は見えなくなった。
分かるのは、目の前の敵を倒さなければ他の者に合流することができないということだけ。
「ははは、怯えたっていいんだぜ! なんせテメェを相手にするのはこの魔族最強の男、ブラッソ様なんだからな!」
俺は静かに剣を抜き、目の前の戦いに挑んだ。
その途中、視界に映る光景には驚くべきものがあった。
「これは凄まじいな……」
死体。死体。死体。
魔物の死体がそこら中に転がっている。
Bランク以上の強力な魔物にもかかわらず、ほとんどは一撃でやられたようだ。
この先にいる者たちの実力が窺える。
おかげで俺たちに魔物が襲い掛かってくることはないため、順調に進めているが。
それにしても、いつまで経っても敵の姿が見えない。
どれほど先に進んでいるのだろうか。
このままでは魔硬石を奪われてしまう可能性が高い。
「ルーク師匠、私たちだけでも急ごう。時間がない」
「……そうだな。ティナ、ユナ、俺とレオノーラは先に行く!」
「分かりました!」
「分かった!」
この場にいる四人の中で、速度という面では俺とレオノーラが圧倒的だ。
高水準の身体強化を扱えるようになったユナでも、まだ付いてこられるレベルには達していない。
「いくぞ、レオノーラ」
「ああ!」
俺たちは一段階スピードを上げ、颯爽と駆けだした。
その禍々しい気配を感じたのは、それからわずか一分後のことだ。
ほんの少し先に敵がいる。
俺とレオノーラは視線を交わし、こくりと頷いてからさらに速度を上げた。
戦闘の心構えはとっくに終わっている。
そんな俺たちが辿り着いたのは、ラピス遺跡の最深部の少し手前にある、巨大な一室だった。
儀式でも行うための空間なのか、美しい正方形に整えられ、中心には何らかの祭壇が備わっている。
しかし、いつまでも感慨深く室内を見渡すことはできない。
そこには俺とレオノーラ以外に五人の魔族がいたからだ。
「あれ? おかしいな。魔力の気配的に追ってきているのは一人だって思ってたんだけど」
肩まで伸びる銀髪が特徴的な、落ち着いた雰囲気のある男魔族がおもむろにそう呟いた。
俺の魔力を感知できず、レオノーラの存在にのみ気付いていたということだろう。
何はともあれ、これで追いついた。
俺は状況を把握するために、彼らに問いを投げかける。
「お前たちは魔族だな?」
「うん、まあそうだけど。見たら分からないかな? 君たちとは見た目が違うと思うんだけど」
銀髪男は自分の額から伸びる角を指さす。
続けて、他の四人の特徴も確認する。
鮮血のような赤色の長髪に、背から生える黒色の翼が特徴的な女魔族。
茶髪のツインテールに、額から伸びる二本の純白の角が特徴的な女魔族。
身長が二メートルを優に超え、鍛え抜かれた体躯を誇り、さらに四本の腕が生えている男魔族。
最後に、頭から猫耳が生えている、小さくつかみどころのない無表情な女魔族。
これまでに遭遇してきた魔族とは格が違う、正真正銘の強敵だと直感する。
下手をすれば、異世界での四天王に匹敵するかもしれない。
しかし違和感がある。
強力な気配を放つ者たちの中で、中心にいる銀髪の男からはオーラを感じない。
例えば町中ですれ違っても気付けないほど、非常に希薄な気配だ。
「まあせっかくだから自己紹介でもしようかい? 僕はクレアス、得意魔術は――」
「いや、必要ない」
クレアスと名乗った銀髪男の声を遮ったのはレオノーラだった。
話を聞く価値もないとばかりに、七色の魔力を浮遊させ攻撃の態勢を整えていた。
「開口一番でなんだが――滅べ」
言って放たれたのは、強力な光の柱。
とある魔族(名は忘れた)を一瞬で消滅させた魔術だ。
だが、それを見てもクレアスに焦りはない。
「はあ、話の途中に攻撃を仕掛けてくるだなんて、躾がなっていないね」
クレアスが自身に迫る魔術に対し、手をかざす。
あろうことか、ただそれだけで魔術は消滅した。
「なんだと!?」
「うん、やっぱりこの程度か。敵じゃないね。君たちも、後ろにいる彼女たちも」
クレアスの言葉に、俺は反射的に振り返る。
そこには遅れてこの場に辿り着いたティナとユナの姿があった。
「お兄様、追い付きました!」
「あの五人が魔族!?」
状況を瞬時に把握する二人。
戦闘準備を整えるように指示を出そうと考えていると、クレアスが「あれ」と声を漏らした。
「これは嬉しい誤算だね。まさか君が自らこの場に来てくれるだなんて」
「え……?」
クレアスの視線の先にいたのはユナだった。
ユナは驚いたように目を丸くしている。
クレアスはそんなユナの反応を気にする素振りもなく、嬉しそうに表情を緩める。
「ははっ、いいね。少し計画を修正しよう――アルマ!」
「うん、分かった」
猫耳が特徴的な女魔族――アルマがこくりと頷き、手元に灰色の魔力を集める。
瞬間、遺跡全体が揺れだした。
「なっ、これは!」
「地面が動いている!?」
俺たちが立っている足場が分裂し、動き出す。
相手の思惑通りにか、こちらの四人が離れ離れになってしまう。
「っ、皆、一ヵ所に集ま――」
「させねえよ」
指示を出そうとした俺の前に四本腕の男魔族が立ちはだかる。
男魔族はそのまま四本の腕を振るい、続けて俺に殴りかかってくる。
「む――」
剣を抜くタイミングを潰され、仕方なく距離を置く。
その間にも状況はがらりと変わっていた。
「あらあら、私の相手は貴女ね。なぶりがいがありそうだわ」
「近寄らないでください、汚らわしいです」
ティナは赤髪の女魔族と。
「あらら、相変わらず引きが悪いみたい、アタシ。貴女、強そうだから嫌なんだけどなぁ」
「――何を言っているんだ、化物が」
レオノーラは茶髪のツインテール魔族と。
「君はこっちだよ」
「……」
「――――!」
ユナは、クレアス、アルマと。
それぞれに敵をあてがわれ分断される。
部屋すら変えられたのか、すぐに他の者たちの姿は見えなくなった。
分かるのは、目の前の敵を倒さなければ他の者に合流することができないということだけ。
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