魔術学院の最強剣士 〜初級魔術すら使えない無能と蔑まれましたが、剣を使えば世界最強なので問題ありません。というか既に世界を一つ救っています〜

八又ナガト

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第二部 剣神と呼ばれた男

52 レオノーラVSカテーナ 2

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 なんだ、これは……?
 私は自分に訪れたある変化に疑問を抱く。

 まるで世界の流れが遅くなってしまったかのように、ゆっくりと光景が過ぎ去っていく。
 同時に思考速度が何倍にも引き延ばされたかのようだ。

 広がった視野で状況を確認してみれば、今までに気付けなかったことを確認できる。

 まず、カテーナ。
 彼女は私に追撃してこないわけではなく、その場で小刻みに体を動かしていた。
 その動きは戦闘の構えというよりはむしろ、意図的に隙を作っているように見えた。
 先ほどまでの私なら、直感でその隙を認識し攻撃を放っていただろう。

 ……攻撃を誘っている?

 もう一つ。
 カテーナの二本の角が、純白に戻っていた。
 先ほど色が変わっていたのは一時的なものだったのだろうか?
 違和感を覚える。

「――――まさか」

 瞬間、一つの考えが私の頭に浮かび上がる。
 その予想が正しければ、彼女の力は非常に厄介だ。
 まずは確証を得なければならない。

 ずっと思考の中にいる私に痺れを切らしたのか、カテーナは少し苛立ったように声を上げる。

「ねえ、いつまでも動かないみたいだけど、降参ってことでいいのかな? だったら次は私が攻撃しちゃうよ?」
「……いや、お望み通り喰らわせてやる」

 私はカテーナに向けて、再び魔術を放つ。
 今度は七属性ではなく、複合属性も含めた四十四色。

死色光アビス
「っ、ははっ! あいかわらずとんでもない!」

 言葉ではそう言いながらも、カテーナに焦った様子はない。
 カテーナは両手に黒色の魔力を集めると、襲い掛かってくる光に向けて放つ。

「さあ、無力化するよ!」
「――――」

 見ろ!
 この瞬間の光景を、絶対に見逃すな!

 カテーナから放たれた黒色の魔力は、魔術の威力を削ぐ効果があるのか、光の勢いがみるみるうちに衰えていく。
 しかし完全に消し去るには至らない。
 死色光アビスは威力を落としながらも敵の魔力を打ち破り、カテーナに直撃した。

 その時私は確かに見た。
 カテーナの角に死色光アビスと同じ色が付いたのを。

「やはりか」

 もう間違いないだろう。
 カテーナは私の魔力を、いや魔術そのものを吸収している。
 だとするなら――

「じゃあ、もう一回お返しだよ!」

 カテーナの手から放たれたのは、死色光アビスそのものだった。
 私の退路を塞ぐように、360度から襲い掛かってくる。

 やはりそうだ。
 カテーナは吸収した魔術を発動することが可能なのだ。
 初見では動揺のあまり対処しきれないのも仕方ない。

 ――が、分かっていれば対処は容易い。

死色光アビス

 私は再び死色光アビスを放つ。
 相手が私と同じ魔術を使うのなら、相殺してしまうのが一番早い。

 数十の爆発が起きる中を、私は全速力でカテーナ目掛けて駆けていく。

「へえ、もうタネが分かったんだね。けど、それはちょっと愚策かな!」

 カテーナは、私が接近戦に持ち込もうとしていることを悟ったらしい。
 ここにきて、カテーナは初めて獰猛な笑みを浮かべた。
 
「魔族相手に、身体能力で勝つつもり!?」
「ああ、その通りだ!」
「なっ、速い――」

 身体強化を用い、二段階ほどギアを上げる。
 ルーク師匠に教わっておきながら、恥ずかしくも今まで辿り着けなかった領域。
 この土壇場に来て、ようやく至った。

「けど、その程度じゃまだアタシには敵わないよ!」
「そんなことは、やってみないことには分からない!」

 私はまだルーク師匠から剣技を教えてもらっていない。
 故に、接近戦の方法など肉弾戦しか知らない。
 対するカテーナもそうなのであろう。
 生まれながらの恵まれた肉体を持つ彼女は、自身を制限する武器を必要としない。

 だから私たちは拳を振るった。
 それぞれの一撃が、お互いの横顔にめり込む。

「ガハッ!」
「くうっ!」

 ズシン! という重々しい音と共に、私たちの体は後方に吹き飛ばされる。
 しかし退くことはできない。
 地面に足を滑らせるようにして着地し、再度駆けていく。

 アッパー気味の拳がカテーナの横腹にめり込み、
 死角から放たれた蹴りが私の腕を粉砕し、
 倒れそうになった態勢を利用し振り上げた足がカテーナの顎を蹴り上げ、
 反撃を考慮しないような両拳の振り下ろしが、私の後頭部に叩きつけられる。

 魔術師同士ではありえない、恐ろしいまでの痛みが伴う戦い。
 それでもなお、私の胸に生じたのは歓喜だった。

 しかしこの時間が永遠に続くことはない。
 均衡した状況は、カテーナの行動によって崩されることになる。

「ははは! 人族風情がここまでやるとは驚いたよ! けど、それもここまでだ!」
「なっ!」

 カテーナの体から純白の魔力が広がっていき私の体を包み込む。
 その瞬間、私の動きは鈍化した。
 遅れてカテーナの角が透明に輝く。
 これはまさか、身体強化の魔力が奪われたのか!?

「黒魔力は消滅、白魔力は吸収だから、覚えておくといいよ――まあ、貴女はもう死ぬんだけどね!」

 動きが止まった私の前で、カテーナは大きく腕を振り絞る。
 拳には大量の魔力が込められており、あの一撃を喰らえば私の体は跡形もなく消滅するだろう。

 そしてとうとう、私の命を奪う殴打が放たれる。

 そんな絶望的な状況の中で。
 私は笑った。

「いや、死にはしない。ずっと待っていたんだ、この瞬間を」
「――――え?」

 私が選んだのは防御でも回避でもなく、前進だった。
 カテーナの殴打をかいくぐるようにして、彼女の懐に潜り込む。
 僅かに拳が当たっていたのか、頬から血が噴き出すが気にしない。

 私は両手をカテーナの腹に添えた。
 そして大量の魔力を集めていく。
 それを見たカテーナは驚愕の声を上げる。

「無駄だよ! 分かってるでしょ!? 私に魔術は通じないよ!」
「いいや、通じる。貴様の許容量を超える威力ならば」
「――、気付いてッ!?」

 その仕組みに気付くのは、そこまで難しいことではなかった。
 彼女が本当に全ての魔術を吸収できるのならば、私の魔術を躱す必要も、威力を殺そうとする必要もなかった。
 角に蓄えられる魔術には許容量があり、それを超えないように対策しているのだと私は気付いた。

 その許容量がどの程度のものかは分からない。
 けれど、今彼女は私の身体強化を喰らい大量の魔力を蓄えている。
 倒せるのは、今この瞬間しかない!

 私はルーク師匠に鍛えられ、新たな力を手に入れた。
 けれどそれはこれまでの戦い方を捨てることではない。
 私は万能の魔術師だ。
 ありとあらゆる力を利用し、遥か高みに辿り着く。

 そんな決意と共に、私は唱えた。

「千色砲(キャノン)」
「うそ、私が、こんなところで負ける訳――」

 放たれた最大最強の魔術。
 それはカテーナの許容量を遥かに上回った。
 二本の角は虹色に輝き、膨張し、そして。

 周囲一帯を吹き飛ばすような爆発を生み出した。
 熱と暴風の中を、私はゆっくりと歩きながら進んでいく。

「まだ、全ては終わっていない。先に進もう」

 この先には更なる強敵が待ち構えていると。
 私の直感はそう告げていた。
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