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第二部 剣神と呼ばれた男
53 ユナVSクレアス&アルマ
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私――ユナ・ミアレルトの前には二人の魔族がいた。
落ち着いた雰囲気で、銀髪のクレアス。
猫耳と何を考えているのか分からない無表情が特徴的な少女アルマ。
おそらくは二人とも、圧倒的な力を持っている。
以前、ミアレルト領を襲ってきたエレジィを遥かに上回るだろう。
私はそのエレジィにさえ全く敵わなかった。
そう考えると、私一人でこの二人に勝つのは難しい。
「だけど、退くわけにはいかないよね」
魔心を体に纏いながら、眼前の敵に目標を据える。
そんな私を見て、クレアスはにっと笑う。
「そうだ、それを使うのを待っていた」
「――――」
言い切るのと同時に、下降し続けていた足場が動きを止める。
恐らくは最深部に至ったのだろう、広い空間だった。
そんな中、一際目を引くものがある。
空間の中心に存在する、人の体を優に超える巨大な透明な石――魔硬石だ。
クレアスはそれに手を当てる。
「本当は、これを利用するつもりだった。この世界でも硬度では上位に君臨するこれを加工したうえで使用すれば、十分な器になると考えたからだ」
「器……?」
「ああ、そうだよ。けど、それを遥かに上回る素材を持った者がこうして目の前に現れた。これは運命だ――君の力は、奪わせてもらう」
「!?」
クレアスが何を言っているのかは分からない。
ただ、嫌な予感がした。
何かをされる前に、こちらから攻撃を仕掛けなくてはならない。
「はあっ!」
身体強化と、魔心を纏ったうえでの突撃。
特訓はしてきた。魔族相手でもある程度は通用する威力のはずだ。
油断している今のうちに、ダメージを与える!
「無駄だよ、僕には通じない」
「……え?」
パンッ! という音と共に、私の拳はクレアスの手のひらで受け止められた。
同時に理解したその事実に、私は驚愕する。
――魔心が掻き消されている!? どうして!?
クレアスが何をしたのかは分からないが、私が纏う魔心が彼に触れた瞬間消え去っていた。
どころか、身体強化すらも満足に行使できなくなっている。
一体何をされたのだろう。
「驚いているみたいだね、ネタ晴らしをしてあげようか」
「くっ!」
クレアスは私の手を離すと、余裕を隠すこともなく語りだす。
「これは僕が生まれながらに持つ特異能力――魔滅(まめつ)の力だ」
「ま、めつ……?」
「そうさ、僕に触れた魔力によって生み出されたもの、特に魔術は跡形もなく消滅する。君たち魔法使いでは、僕には傷一つ付けることはできないということさ」
「――――ッ」
そんなことがありえるのだろうか。
けれど、今目の前にいるのは魔族だ。人族の常識など通用しない。
それが事実であると、私は自然に受け入れていた。
しかし、そうなると一つの疑問も解消する。
魔族がどうして人間界に現れたのか、ずっと議論が行われていた。
人間界と魔界の間には戦妨滝(フリーデントーア)がある。それをどうやって乗り越えたのかと。
「貴方がいたから、戦妨滝(フリーデントーア)を突破できたんだね」
「ん? ああ、そうだよ。僕が触れた箇所は一時的に消失するからね。そこを通ってきたんだ。これで君の疑問には全て答えられたかな? 時間稼ぎに付き合ってくれてありがとう」
「えっ――なっ!」
なぜ気付けなかったのだろうか。
私の真後ろにアルマの姿があった。
このままだとまずい!
反射的に、私は魔心を纏う。
アルマが振るった拳は、魔心によって止められる。
その結果を確認し、ほっと胸をなでおろす。
どうやらこれを消滅させられるのはクレアスだけみたいだ。
「君に安堵している暇があるのかい?」
だが、追撃が襲い掛かってくる。
クレアスは素早い動きで私に迫ってくる。
彼相手に魔心は通用しない。回避に徹しなければ。
そう思った直後、足場が消えた。
「ッ!」
踏み込む場所を失い、態勢を崩す。
消えたのは片足の足場だけだったが、戦闘の場でこれは致命的な隙になる。
「成功」
焦燥する私の耳に届いたのは、アルマの小さな声。
私やルークたちを分断したのと同じように、足場を操ったのだと理解する。
けど、それが分かったところでもう手遅れだ。
クレアスの手が私目掛けて伸びる。
触れた部分を起点に、魔心が解除されていく。
それだけでは終わらない。
「まだ」
魔心の解除とタイミングを合わせて、アルマの手が私の背に触れる。
瞬間、表現しようもない気持ち悪さが襲い掛かってくる。
体の中心から大切な何かが奪われていくかのような、そんな感覚だ。
「止めて!」
再度発動した魔心によって、なんとかアルマを追い払う。
けれど私の体は取り返しのつかないほどに摩耗していた。
魔力を、奪われた。
それだけじゃない。この感覚はきっと。
「よくやった、アルマ」
「うん」
満足気に笑うクレアスのもとに、アルマがゆっくりと歩いていく。
その手の中には透明の球体が握られている。
魔心だ。私は今、魔心そのものを彼女に奪われたのだ。
「素晴らしいな。これならば魔王様の器にするのに相応しい。この時代にこれの使い手が現れたのも、きっと偶然ではなく運命だったのだろう。なにせ――」
続けて、クレアスは告げた。
「魔心とは、魔王様の心臓そのものなのだから」
落ち着いた雰囲気で、銀髪のクレアス。
猫耳と何を考えているのか分からない無表情が特徴的な少女アルマ。
おそらくは二人とも、圧倒的な力を持っている。
以前、ミアレルト領を襲ってきたエレジィを遥かに上回るだろう。
私はそのエレジィにさえ全く敵わなかった。
そう考えると、私一人でこの二人に勝つのは難しい。
「だけど、退くわけにはいかないよね」
魔心を体に纏いながら、眼前の敵に目標を据える。
そんな私を見て、クレアスはにっと笑う。
「そうだ、それを使うのを待っていた」
「――――」
言い切るのと同時に、下降し続けていた足場が動きを止める。
恐らくは最深部に至ったのだろう、広い空間だった。
そんな中、一際目を引くものがある。
空間の中心に存在する、人の体を優に超える巨大な透明な石――魔硬石だ。
クレアスはそれに手を当てる。
「本当は、これを利用するつもりだった。この世界でも硬度では上位に君臨するこれを加工したうえで使用すれば、十分な器になると考えたからだ」
「器……?」
「ああ、そうだよ。けど、それを遥かに上回る素材を持った者がこうして目の前に現れた。これは運命だ――君の力は、奪わせてもらう」
「!?」
クレアスが何を言っているのかは分からない。
ただ、嫌な予感がした。
何かをされる前に、こちらから攻撃を仕掛けなくてはならない。
「はあっ!」
身体強化と、魔心を纏ったうえでの突撃。
特訓はしてきた。魔族相手でもある程度は通用する威力のはずだ。
油断している今のうちに、ダメージを与える!
「無駄だよ、僕には通じない」
「……え?」
パンッ! という音と共に、私の拳はクレアスの手のひらで受け止められた。
同時に理解したその事実に、私は驚愕する。
――魔心が掻き消されている!? どうして!?
クレアスが何をしたのかは分からないが、私が纏う魔心が彼に触れた瞬間消え去っていた。
どころか、身体強化すらも満足に行使できなくなっている。
一体何をされたのだろう。
「驚いているみたいだね、ネタ晴らしをしてあげようか」
「くっ!」
クレアスは私の手を離すと、余裕を隠すこともなく語りだす。
「これは僕が生まれながらに持つ特異能力――魔滅(まめつ)の力だ」
「ま、めつ……?」
「そうさ、僕に触れた魔力によって生み出されたもの、特に魔術は跡形もなく消滅する。君たち魔法使いでは、僕には傷一つ付けることはできないということさ」
「――――ッ」
そんなことがありえるのだろうか。
けれど、今目の前にいるのは魔族だ。人族の常識など通用しない。
それが事実であると、私は自然に受け入れていた。
しかし、そうなると一つの疑問も解消する。
魔族がどうして人間界に現れたのか、ずっと議論が行われていた。
人間界と魔界の間には戦妨滝(フリーデントーア)がある。それをどうやって乗り越えたのかと。
「貴方がいたから、戦妨滝(フリーデントーア)を突破できたんだね」
「ん? ああ、そうだよ。僕が触れた箇所は一時的に消失するからね。そこを通ってきたんだ。これで君の疑問には全て答えられたかな? 時間稼ぎに付き合ってくれてありがとう」
「えっ――なっ!」
なぜ気付けなかったのだろうか。
私の真後ろにアルマの姿があった。
このままだとまずい!
反射的に、私は魔心を纏う。
アルマが振るった拳は、魔心によって止められる。
その結果を確認し、ほっと胸をなでおろす。
どうやらこれを消滅させられるのはクレアスだけみたいだ。
「君に安堵している暇があるのかい?」
だが、追撃が襲い掛かってくる。
クレアスは素早い動きで私に迫ってくる。
彼相手に魔心は通用しない。回避に徹しなければ。
そう思った直後、足場が消えた。
「ッ!」
踏み込む場所を失い、態勢を崩す。
消えたのは片足の足場だけだったが、戦闘の場でこれは致命的な隙になる。
「成功」
焦燥する私の耳に届いたのは、アルマの小さな声。
私やルークたちを分断したのと同じように、足場を操ったのだと理解する。
けど、それが分かったところでもう手遅れだ。
クレアスの手が私目掛けて伸びる。
触れた部分を起点に、魔心が解除されていく。
それだけでは終わらない。
「まだ」
魔心の解除とタイミングを合わせて、アルマの手が私の背に触れる。
瞬間、表現しようもない気持ち悪さが襲い掛かってくる。
体の中心から大切な何かが奪われていくかのような、そんな感覚だ。
「止めて!」
再度発動した魔心によって、なんとかアルマを追い払う。
けれど私の体は取り返しのつかないほどに摩耗していた。
魔力を、奪われた。
それだけじゃない。この感覚はきっと。
「よくやった、アルマ」
「うん」
満足気に笑うクレアスのもとに、アルマがゆっくりと歩いていく。
その手の中には透明の球体が握られている。
魔心だ。私は今、魔心そのものを彼女に奪われたのだ。
「素晴らしいな。これならば魔王様の器にするのに相応しい。この時代にこれの使い手が現れたのも、きっと偶然ではなく運命だったのだろう。なにせ――」
続けて、クレアスは告げた。
「魔心とは、魔王様の心臓そのものなのだから」
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