クールで近寄りがたい同級生、「あざと可愛い」配信者推し仲間でした……え?本人?

天音ねる(旧:えんとっぷ)

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スパチャと最高の瞬間

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一時間が経過した頃には、しゅがあもすっかり疲弊していた。
「はぁ…はぁ…もうだめかも…。しゅがあの魔力、切れちゃう…」
弱々しい声。それはもちろん計算された演技だ。分かっている。でも、その演技に、僕の心は鷲掴みにされる。

ここで僕が彼に力を与えなくて、どうする。
僕は意を決して、画面のドルマークのアイコンをクリックした。スーパーチャット。いわゆる「スパチャ」だ。配信者への投げ銭機能。なけなしのバイト代を、僕はこの瞬間のために貯めてきた。

金額の欄に、自分にとっては大金である数字を打ち込む。
そして、メッセージ欄。
伝えたいことはたくさんある。いつもありがとう。君のおかげで毎日頑張れる。でも、短い言葉に想いを凝縮させなければ。

僕は深呼吸を一つして、こう打ち込んだ。
『しゅがあくんの頑張りが僕の魔力です!これで最強の武器を買って!』

送信ボタンを押す。
一瞬の間を置いて、チャット欄の上部に、僕のアカウント名とメッセージが、鮮やかな虹色の背景で固定表示された。心臓が、ドクンと大きく跳ねる。

配信に集中していたしゅがあが、その表示に気づいて「あっ」と声を上げた。
ヘッドホン越しに聞こえる彼の声が、僕の脳を直接揺さぶる。

「あ、湊さん、スパチャありがとう!すごい、こんなにたくさん!」

名前を、呼ばれた。
何千人もいる視聴者の中から、僕の名前が。
湊さん、と。
その三文字が、僕の世界のすべてになった。
頭が真っ白になる。指先が痺れる。視界がぐにゃりと歪んだ気がした。

しゅがあは、少し興奮した声で続ける。
「え、なになに?『最強の武器を買って』?うん、分かった!湊さんがくれたこの魔力で、しゅがあ、最強になっちゃうよ!」

彼はゲーム内のショップへ移動し、一番高価な、光り輝く剣を購入した。

「見て見て!すごい剣!湊さん、本当にありがとう!これで勝てるよ!大好き!」

大好き。

その言葉は、ファン全員に向けられたものだ。分かっている。ビジネス「大好き」だ。
それでも。
僕の心臓は、はち切れそうなくらいに高鳴っていた。
学校では誰からも必要とされていない僕が。クラスの隅で空気をやっているだけの僕が。今、この瞬間、『砂糖しゅがあ』という物語の登場人物になった。彼を勝利に導くためのキーアイテムを渡す、重要な役目を果たしたんだ。

もう、学校での内気な僕なんてどこにもいなかった。
僕は、生きている。ここにいる。
このモニターの中の世界で、僕は確かに息をしていた。

新しい武器を手にしたしゅがあの動きは、見違えるように良くなっていた。いや、武器の性能が上がっただけじゃない。僕が、僕たちが送った声援が、彼の力になっている。そう信じられた。

チャット欄の熱気も最高潮に達している。
「いけえええええ!」
「湊さんナイスパ!」
「俺たちの想いを剣に乗せろ!」
「勝てるぞ!」

僕も、もう無我夢中だった。
キーボードが壊れるんじゃないかというくらいの勢いで、応援の言葉を打ち込み続ける。

そして、激闘の末、ついにその瞬間は訪れた。
しゅがあが渾身の一撃を叩き込む。ボスの巨大な体が、断末魔の叫びとともに光の粒子となって消えていった。

静寂。
からの、爆発するような歓喜の声。

「やったー!やったよみんなー!勝てたーっ!」

しゅがあの喜びが、そのまま僕の喜びになった。
チャット欄は「おめでとう!」「ないすぱ!」「やったー!」という祝福の嵐。僕も涙で滲む視界のまま、「ないすぱ!おめでとう!」と打ち込んだ。自分のことのように嬉しい。いや、自分のこと以上に嬉しいかもしれない。

この一体感。達成感。
これがあるから、僕は彼のファンをやめられない。
この時間こそが、僕にとって唯一の心の拠り所。明日からまた始まる退屈で息苦しい現実を生き抜くための、唯一のエネルギー源なんだ。

最高の瞬間だった。

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