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日常への帰還
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ボス撃破の興奮と感動は、しばらくチャット欄の熱狂として続いた。
祝福のコメント。称賛のスパチャの嵐。その一つ一つに『砂糖しゅがあ』は、いつものあざと可愛い声で丁寧にお礼を言っていく。
「みんな、本当に本当にありがとう!しゅがあ一人じゃ絶対勝てなかったよ!みんなは、しゅがあの勇者様だね!」
そんな言葉を聞きながら、僕は燃え尽きたように椅子の背もたれに深く体を預けていた。
心臓はまだ少しだけ速く脈打っている。
指先には、キーボードを高速で叩いた後の心地よい疲労感が残っていた。
エンディングの雑談パートが始まる。
今日の配信の感想。
次回の配信の告知。
新衣装のデザイン案をファンに問いかけるコーナー。
祭りの後の、穏やかで幸福な時間。
僕はチャットを打つ手も休めて、ただ、彼の声に耳を傾けていた。
この時間が永遠に続けばいいのに。本気でそう思う。
でも、どんな祭りにも終わりは来る。
「それじゃあ、そろそろお別れの時間だね。寂しいけど…また明日、会いに来てくれるかな?」
もちろん。と心の中で即答する。
チャット欄も「絶対行く!」「待ってる!」という言葉で埋まった。
「よかった。約束だよ?じゃあ、みんな、おつしゅがー!ばいばーい!」
最後に最高の笑顔のキメ顔を見せて、画面はぷつりと暗転した。
映し出されたのは、チャンネルのアイコンと『配信は終了しました』という無機質な文字。
途端に、世界から音が消えた。
いや、違う。
今までヘッドホンが拾っていた熱狂的な声援とBGMが消え、僕の部屋のありふれた生活音が耳に戻ってきただけだ。
ジーッと低い音を立てる冷蔵庫のモーター音。
カチ、カチ、と無感情に時を刻む壁の時計の秒針。
急に訪れた静寂に、胸のあたりがツンとする。
僕はゆっくりとヘッドホンを外した。
キーボードの上に置くと、カタンと乾いた音がした。
さっきまでの熱気はどこへやら、部屋の空気はひんやりと冷たい。
あれだけ盛り上がっていたチャット欄は、今はもうない。
ただの黒い背景が表示されているだけ。
ほんの数秒前まで、何千という仲間たちと繋がっていた場所が、今は虚空になっていた。
このギャップが、いつも少しだけ僕を寂しくさせる。
しばらくは動けなかった。
椅子の上で、先ほどの二時間の出来事を頭の中で再生する。
猫耳衣装のしゅがあ。
ゲームでやられて泣きべそをかくしゅがあ。
僕のスパチャに気づいて、驚き、そして喜んでくれたしゅがあ。
僕の名前を呼んでくれた、あの声。
「湊さん、大好き!」
祝福のコメント。称賛のスパチャの嵐。その一つ一つに『砂糖しゅがあ』は、いつものあざと可愛い声で丁寧にお礼を言っていく。
「みんな、本当に本当にありがとう!しゅがあ一人じゃ絶対勝てなかったよ!みんなは、しゅがあの勇者様だね!」
そんな言葉を聞きながら、僕は燃え尽きたように椅子の背もたれに深く体を預けていた。
心臓はまだ少しだけ速く脈打っている。
指先には、キーボードを高速で叩いた後の心地よい疲労感が残っていた。
エンディングの雑談パートが始まる。
今日の配信の感想。
次回の配信の告知。
新衣装のデザイン案をファンに問いかけるコーナー。
祭りの後の、穏やかで幸福な時間。
僕はチャットを打つ手も休めて、ただ、彼の声に耳を傾けていた。
この時間が永遠に続けばいいのに。本気でそう思う。
でも、どんな祭りにも終わりは来る。
「それじゃあ、そろそろお別れの時間だね。寂しいけど…また明日、会いに来てくれるかな?」
もちろん。と心の中で即答する。
チャット欄も「絶対行く!」「待ってる!」という言葉で埋まった。
「よかった。約束だよ?じゃあ、みんな、おつしゅがー!ばいばーい!」
最後に最高の笑顔のキメ顔を見せて、画面はぷつりと暗転した。
映し出されたのは、チャンネルのアイコンと『配信は終了しました』という無機質な文字。
途端に、世界から音が消えた。
いや、違う。
今までヘッドホンが拾っていた熱狂的な声援とBGMが消え、僕の部屋のありふれた生活音が耳に戻ってきただけだ。
ジーッと低い音を立てる冷蔵庫のモーター音。
カチ、カチ、と無感情に時を刻む壁の時計の秒針。
急に訪れた静寂に、胸のあたりがツンとする。
僕はゆっくりとヘッドホンを外した。
キーボードの上に置くと、カタンと乾いた音がした。
さっきまでの熱気はどこへやら、部屋の空気はひんやりと冷たい。
あれだけ盛り上がっていたチャット欄は、今はもうない。
ただの黒い背景が表示されているだけ。
ほんの数秒前まで、何千という仲間たちと繋がっていた場所が、今は虚空になっていた。
このギャップが、いつも少しだけ僕を寂しくさせる。
しばらくは動けなかった。
椅子の上で、先ほどの二時間の出来事を頭の中で再生する。
猫耳衣装のしゅがあ。
ゲームでやられて泣きべそをかくしゅがあ。
僕のスパチャに気づいて、驚き、そして喜んでくれたしゅがあ。
僕の名前を呼んでくれた、あの声。
「湊さん、大好き!」
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