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第二章 王国革命からの害虫貴族駆除編
119.あの……クラーラ。もしかして怒ってるのか?(SIDE:トリネー) ※ 4度目の害虫貴族駆除回(その10)
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トリネーはトビアス王から指示された通り、クラーラと共に謁見の間を出る。
クラーラの後ろからは馬鹿達がアーデルの傍に居た侍女と二人の衛兵に引き立てられながら付いてくる。
馬鹿達は何か言いたそうであるが、まだ猿轡で声を封じられた状態だ。トリネーはこれはこれで好都合と思い込む。
こいつらに騒がれると話が進まないのは先ほどの謁見の間で十二分に理解できた。
このまま邪魔が入らないうちにっと思ってると、先にクラーラが話かけてきた。
「お久しぶり……でいいのかな?トリネー様」
「あ、あぁ……クラーラは元気……じゃなさそうだな」
「まぁね。どっかの誰かのせいで王国が滅亡の危機だし~これで元気に居られるなら余程の馬鹿でしょ」
「そ、そうか……」
トリネーはクラーラの嫌味とも皮肉ともいえる物言いに面食らう。
今までトリネーが見てきたクラーラはデルフル王太子達の聞き役に徹し、それに対して慰めたりアドバイスやらを送っていた奥ゆかしい令嬢だったのだ。
アーデルやその近しい者達の愚痴を言う事もあるが、デルフル王太子に近しい者には一切の批難の声をだしてない。
それだけに今のクラーラは別人ではっと思うぐらいの変貌だ。
「あの……クラーラ。もしかして怒ってるのか?」
「怒ってるといえば怒ってる。怒ってないといえば怒ってない……でも、私の機嫌なんて関係ないでしょう。それより私も忙しいから早く本題済ませましょうか。聞きたいのは、私がなぜ王座に就かないかですよね?」
「あぁ、クラーラは望めば王位に就けるのだろう。今まで婚約者が居なかったのは将来王座に就くデルフリ王太子殿下と結婚したいがt!?」
台詞途中でクラーラの纏っていた空気が変わる。
先ほどから不機嫌でイラついてはいたけど、殺意までは抱いてなかった。
だが今は……
そう考えてるうちに、クラーラの伸ばした右手がトリネーの首をガシッと掴んだ。
「何を言ってるのかなー?私があのクズと結婚なんて笑い話も対外にしてほしいですよ~~……ギリギリギリ」
否定の言葉を口にしたクラーラはそのままトリネーの首を締め付けにかかる。
「あ、あぐ……」
今まで暴力沙汰とは全く無縁と思われてたクラーラからの暴力……
箸より重いモノを持ったことないような華奢な細腕だというのに、その力は尋常でなかった。
いつのまにか足が床から離れて宙を浮いてるのに、クラーラの右腕はトリネーの全体重を支えたままピクリとも動かさない。
そんなクラーラはやはり顔こそ笑ってるも、目が全然笑ってない。
まるでゴミをみるかのような目で見つめながら淡々と語り始める。
「私が王位に就かない理由。それは国の安寧のため。今まではあのクズがお飾りの王になって王妃となるアーデルお義姉様が全ての実務を取り仕切る。
それが国の安寧に繋がるからこそ、アーデルお義姉様もクズ達からの扱いに納得してるからこそ、私も大人しくしてたのです。
馬鹿な真似をしない限りは私もアムル辺境伯令嬢でアーデルお義姉様の義妹という立場で接するようにしてました。
でも……私が王の実子という王女の立場になるなら話が変わるのですよ」
クラーラがさらに力を込め始めた。
これによって辛うじて確保されていた気道が完全に遮断。ついでに頸動脈も遮断され、トリネーの意識が遠のいてゆく。
「例え王家から離れようとも私が王家の血筋なのは紛れもない事実。私がどれだけ王位継承権の放棄を表明しようとも周囲は私の意志に関係なく旗頭として担ぎあげられる。
だから、私は言質を取られないよう王位にも国政にも興味ない、将来平民として生きるアムル辺境伯令嬢という立場を周囲にアピールしてたわけ。
実際、私自身口にした事ないはずですよ。クズ王太子の正妃の座は愚か、権力がほしいなんて言葉」
遠のいていく意識の中、トリネーはクラーラの言動を思い出す。
デルフリ王太子や側近達は殿下とクラーラとの仲を『真実と愛』と称するも、クラーラはその声に一切賛同してない。
デルフリ王太子と結婚できない、するつもりはないっと常に言っていた。
当時は王太子妃の座にこだわるアーデルに脅されてのものと思っていたが、もしそれがクラーラの本心だとすれば……
「わかった?まぁ私とあのクズは実の兄妹だからどうあがいても結婚できないわけだけど、だからといって貴方達にもワンチャンあるとか思わないでくださいよ」
言い終えると同時に右手を離す。トリネーを支える力がなくなって両足が地面に付く。
たまらず地面に膝をつけ、うずくまったままゴホゴホとせき込むトリネー。
今まで首で遮断されていた空気と血液が脳に回って意識が戻ってゆく。
焦点の合わなかった視界も元に戻り、見上げれば……真っ先に飛び込んできたのはクラーラの屈託のない笑顔だった。
普段からよくみる、見る者の心を癒すクラーラの笑顔。
ただ一つ違う点として、額に謎の紋様が浮かんでいた。一体なぜと思うも、その疑問が解決する前にクラーラが問いかけてきた。
「さて、改めてお聞きします……トリネー様。まだ私に王女としての立場を求めるのでしょうか?私に王位を取れと進言するのでしょうか?」
クラーラの問いかけに対し、トリネーの答えは決まっていた。
クラーラの後ろからは馬鹿達がアーデルの傍に居た侍女と二人の衛兵に引き立てられながら付いてくる。
馬鹿達は何か言いたそうであるが、まだ猿轡で声を封じられた状態だ。トリネーはこれはこれで好都合と思い込む。
こいつらに騒がれると話が進まないのは先ほどの謁見の間で十二分に理解できた。
このまま邪魔が入らないうちにっと思ってると、先にクラーラが話かけてきた。
「お久しぶり……でいいのかな?トリネー様」
「あ、あぁ……クラーラは元気……じゃなさそうだな」
「まぁね。どっかの誰かのせいで王国が滅亡の危機だし~これで元気に居られるなら余程の馬鹿でしょ」
「そ、そうか……」
トリネーはクラーラの嫌味とも皮肉ともいえる物言いに面食らう。
今までトリネーが見てきたクラーラはデルフル王太子達の聞き役に徹し、それに対して慰めたりアドバイスやらを送っていた奥ゆかしい令嬢だったのだ。
アーデルやその近しい者達の愚痴を言う事もあるが、デルフル王太子に近しい者には一切の批難の声をだしてない。
それだけに今のクラーラは別人ではっと思うぐらいの変貌だ。
「あの……クラーラ。もしかして怒ってるのか?」
「怒ってるといえば怒ってる。怒ってないといえば怒ってない……でも、私の機嫌なんて関係ないでしょう。それより私も忙しいから早く本題済ませましょうか。聞きたいのは、私がなぜ王座に就かないかですよね?」
「あぁ、クラーラは望めば王位に就けるのだろう。今まで婚約者が居なかったのは将来王座に就くデルフリ王太子殿下と結婚したいがt!?」
台詞途中でクラーラの纏っていた空気が変わる。
先ほどから不機嫌でイラついてはいたけど、殺意までは抱いてなかった。
だが今は……
そう考えてるうちに、クラーラの伸ばした右手がトリネーの首をガシッと掴んだ。
「何を言ってるのかなー?私があのクズと結婚なんて笑い話も対外にしてほしいですよ~~……ギリギリギリ」
否定の言葉を口にしたクラーラはそのままトリネーの首を締め付けにかかる。
「あ、あぐ……」
今まで暴力沙汰とは全く無縁と思われてたクラーラからの暴力……
箸より重いモノを持ったことないような華奢な細腕だというのに、その力は尋常でなかった。
いつのまにか足が床から離れて宙を浮いてるのに、クラーラの右腕はトリネーの全体重を支えたままピクリとも動かさない。
そんなクラーラはやはり顔こそ笑ってるも、目が全然笑ってない。
まるでゴミをみるかのような目で見つめながら淡々と語り始める。
「私が王位に就かない理由。それは国の安寧のため。今まではあのクズがお飾りの王になって王妃となるアーデルお義姉様が全ての実務を取り仕切る。
それが国の安寧に繋がるからこそ、アーデルお義姉様もクズ達からの扱いに納得してるからこそ、私も大人しくしてたのです。
馬鹿な真似をしない限りは私もアムル辺境伯令嬢でアーデルお義姉様の義妹という立場で接するようにしてました。
でも……私が王の実子という王女の立場になるなら話が変わるのですよ」
クラーラがさらに力を込め始めた。
これによって辛うじて確保されていた気道が完全に遮断。ついでに頸動脈も遮断され、トリネーの意識が遠のいてゆく。
「例え王家から離れようとも私が王家の血筋なのは紛れもない事実。私がどれだけ王位継承権の放棄を表明しようとも周囲は私の意志に関係なく旗頭として担ぎあげられる。
だから、私は言質を取られないよう王位にも国政にも興味ない、将来平民として生きるアムル辺境伯令嬢という立場を周囲にアピールしてたわけ。
実際、私自身口にした事ないはずですよ。クズ王太子の正妃の座は愚か、権力がほしいなんて言葉」
遠のいていく意識の中、トリネーはクラーラの言動を思い出す。
デルフリ王太子や側近達は殿下とクラーラとの仲を『真実と愛』と称するも、クラーラはその声に一切賛同してない。
デルフリ王太子と結婚できない、するつもりはないっと常に言っていた。
当時は王太子妃の座にこだわるアーデルに脅されてのものと思っていたが、もしそれがクラーラの本心だとすれば……
「わかった?まぁ私とあのクズは実の兄妹だからどうあがいても結婚できないわけだけど、だからといって貴方達にもワンチャンあるとか思わないでくださいよ」
言い終えると同時に右手を離す。トリネーを支える力がなくなって両足が地面に付く。
たまらず地面に膝をつけ、うずくまったままゴホゴホとせき込むトリネー。
今まで首で遮断されていた空気と血液が脳に回って意識が戻ってゆく。
焦点の合わなかった視界も元に戻り、見上げれば……真っ先に飛び込んできたのはクラーラの屈託のない笑顔だった。
普段からよくみる、見る者の心を癒すクラーラの笑顔。
ただ一つ違う点として、額に謎の紋様が浮かんでいた。一体なぜと思うも、その疑問が解決する前にクラーラが問いかけてきた。
「さて、改めてお聞きします……トリネー様。まだ私に王女としての立場を求めるのでしょうか?私に王位を取れと進言するのでしょうか?」
クラーラの問いかけに対し、トリネーの答えは決まっていた。
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