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第6話:圧倒的な強さ
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静馬の意識が戻ったとき、そこには眩いほどの光があった。
自分の身体が、何かに満たされていく。
焼けるような熱ではなく、深く、静かに灯る炎のような“力”。
(……これが、ラウラの……)
その瞬間、耳元で声がした。
「おかえり、静馬」
その声に、目を開けた。
そこにいたのは、ラウラだった。だが実体ではない。
霧のようにたゆたう、透き通った姿。
封印は解かれた――しかし完全ではない。
彼女は今、霊体として彼と契約を果たし、その身を委ねていた。
「私の身体はまだ戻らない。でも今はそれでいい。
君と繋がってる。君の中に、私はいる」
ラウラの手が触れた気がした。
その手が、静馬の背を押す。
「静馬。行って。君のやり方で、終わらせて」
彼は立ち上がった。
肩の傷は塞がり、全身の筋肉が、研ぎ澄まされた糸のように動き始めていた。
仮面の者たちが、静馬の変化に気づく。
「……回復してる……? あれだけの重症がなぜ?」
「まさか契約を……いや、そんな馬鹿な」
「攻撃を――!」
しかし、もう遅かった。
静馬は一瞬で間合いを詰めた。
ひとりの仮面の男の武器を受け止め、そのまま地面に投げ飛ばす。
骨も折らない、傷もつけない。
ただ、“戦えない”状態にする。
次の敵が術式を展開するより早く、静馬は後ろに回り込み、肘で気絶させた。
残りの者たちも、為す術もなく倒されていく。
――誰も、殺されなかった。
それは、“怒り”でも“報復”でもなかった。
ただ、“守る”ためだけに使われた力。
静馬はラウラの姿をちらりと見る。
霊体のまま浮かぶ彼女は、どこか誇らしげに微笑んでいた。
「君は、私が思ってたよりもずっと――」
「ラウラ、黙って。集中してるから」
「……ふふっ、ごめん」
残るはただ一人。
静馬を撃った、あの隊員。
手を震わせながら、後ずさる。
「ま、待ってくれ……参った。殺さないでくれ……!」
静馬はゆっくりと近づいた。
だが、拳を振るわなかった。
彼はただ、その隊員の前で立ち止まり、静かに言った。
「撃たれたことは忘れない。でも……殺しはしないよ」
その言葉に、男はその場に崩れ落ちた。
「でも、ムカついたからお前だけは殴るよ。覚悟しろよ」
「へ?……ごぶふぉおおおおおおおお!!!!」
静馬は隊員に強烈なボディーブローをぶち込んだ。骨が折れる感触が伝わってくるが
死にはしないだろう……たぶん。
「……さて、帰るか」
すべてが終わった後、静馬はぽつりとそう言った。
肩にはもう痛みはない。
だが、戦いの余韻がじんじんと身体の奥に残っている。
その隣に浮かぶ、霧のようなラウラの霊体が揺れた。
「……帰るって、どこに?」
「とりあえず俺の家に。ここにもういれないだろ」
ラウラは少し目を丸くした。
「え、いいの? 私、今こういう状態なんだけど。透けてるし」
「たぶん幽霊と間違えられるだけだろ。
それに、俺んとこ人来ないし」
「それって大丈夫なの?」
そう言って、静馬たちは地下から地上へと歩き出した。
夜の街。
午前1時過ぎ。人通りはない。
静馬が連れてきた先は、都心部のタワーマンション。
エントランスにセキュリティを通し、エレベーターで最上階近くまで上がる。
「……え、なにここ……めっちゃ高そうなところじゃない?」
「まあな。親が買った。俺が住んでるのは端っこの一室だけだけど」
「親、どんな人なの?」
「海外にいる。仕事で年中。帰ってきたの……最後に会ったの、たぶん三年くらい前」
「そっか」
ラウラは、それ以上何も聞かなかった。
静馬はカードキーで部屋を開ける。
中は広いリビングに、高級ソファと無機質な家具。
テレビは大きいが、埃をかぶっていた。
「……使ってないの丸わかりね、これ」
「だって一人じゃ見ないし」
ため息をついて靴を脱ぎ、リビングの照明をつける。
柔らかい暖色の光が部屋を満たした瞬間――
ラウラがふっと浮かび、天井近くで横たわるように漂った。
「ふぅ~……なんか、安心したかも。
空気が普通。ちゃんと生活の匂いがする」
「こんな部屋で安心すんなよ」
「でも、“生きてる場所”って感じがする。君の部屋、君の空気」
静馬はソファに倒れ込み、ラウラの浮かぶ方向を見上げた。
「……なんか、すごい現実感ないよな」
「私もそう思う。霊体で人の部屋に泊まるなんて初めてよ」
「そりゃそうだろうな」
二人は、そこでようやく笑った。
問題がすべて解決したわけじゃない。
だがこの夜だけは、静馬にも、ラウラにも、“帰る場所”があった。
たとえそれが、仮初めのものだとしても。
自分の身体が、何かに満たされていく。
焼けるような熱ではなく、深く、静かに灯る炎のような“力”。
(……これが、ラウラの……)
その瞬間、耳元で声がした。
「おかえり、静馬」
その声に、目を開けた。
そこにいたのは、ラウラだった。だが実体ではない。
霧のようにたゆたう、透き通った姿。
封印は解かれた――しかし完全ではない。
彼女は今、霊体として彼と契約を果たし、その身を委ねていた。
「私の身体はまだ戻らない。でも今はそれでいい。
君と繋がってる。君の中に、私はいる」
ラウラの手が触れた気がした。
その手が、静馬の背を押す。
「静馬。行って。君のやり方で、終わらせて」
彼は立ち上がった。
肩の傷は塞がり、全身の筋肉が、研ぎ澄まされた糸のように動き始めていた。
仮面の者たちが、静馬の変化に気づく。
「……回復してる……? あれだけの重症がなぜ?」
「まさか契約を……いや、そんな馬鹿な」
「攻撃を――!」
しかし、もう遅かった。
静馬は一瞬で間合いを詰めた。
ひとりの仮面の男の武器を受け止め、そのまま地面に投げ飛ばす。
骨も折らない、傷もつけない。
ただ、“戦えない”状態にする。
次の敵が術式を展開するより早く、静馬は後ろに回り込み、肘で気絶させた。
残りの者たちも、為す術もなく倒されていく。
――誰も、殺されなかった。
それは、“怒り”でも“報復”でもなかった。
ただ、“守る”ためだけに使われた力。
静馬はラウラの姿をちらりと見る。
霊体のまま浮かぶ彼女は、どこか誇らしげに微笑んでいた。
「君は、私が思ってたよりもずっと――」
「ラウラ、黙って。集中してるから」
「……ふふっ、ごめん」
残るはただ一人。
静馬を撃った、あの隊員。
手を震わせながら、後ずさる。
「ま、待ってくれ……参った。殺さないでくれ……!」
静馬はゆっくりと近づいた。
だが、拳を振るわなかった。
彼はただ、その隊員の前で立ち止まり、静かに言った。
「撃たれたことは忘れない。でも……殺しはしないよ」
その言葉に、男はその場に崩れ落ちた。
「でも、ムカついたからお前だけは殴るよ。覚悟しろよ」
「へ?……ごぶふぉおおおおおおおお!!!!」
静馬は隊員に強烈なボディーブローをぶち込んだ。骨が折れる感触が伝わってくるが
死にはしないだろう……たぶん。
「……さて、帰るか」
すべてが終わった後、静馬はぽつりとそう言った。
肩にはもう痛みはない。
だが、戦いの余韻がじんじんと身体の奥に残っている。
その隣に浮かぶ、霧のようなラウラの霊体が揺れた。
「……帰るって、どこに?」
「とりあえず俺の家に。ここにもういれないだろ」
ラウラは少し目を丸くした。
「え、いいの? 私、今こういう状態なんだけど。透けてるし」
「たぶん幽霊と間違えられるだけだろ。
それに、俺んとこ人来ないし」
「それって大丈夫なの?」
そう言って、静馬たちは地下から地上へと歩き出した。
夜の街。
午前1時過ぎ。人通りはない。
静馬が連れてきた先は、都心部のタワーマンション。
エントランスにセキュリティを通し、エレベーターで最上階近くまで上がる。
「……え、なにここ……めっちゃ高そうなところじゃない?」
「まあな。親が買った。俺が住んでるのは端っこの一室だけだけど」
「親、どんな人なの?」
「海外にいる。仕事で年中。帰ってきたの……最後に会ったの、たぶん三年くらい前」
「そっか」
ラウラは、それ以上何も聞かなかった。
静馬はカードキーで部屋を開ける。
中は広いリビングに、高級ソファと無機質な家具。
テレビは大きいが、埃をかぶっていた。
「……使ってないの丸わかりね、これ」
「だって一人じゃ見ないし」
ため息をついて靴を脱ぎ、リビングの照明をつける。
柔らかい暖色の光が部屋を満たした瞬間――
ラウラがふっと浮かび、天井近くで横たわるように漂った。
「ふぅ~……なんか、安心したかも。
空気が普通。ちゃんと生活の匂いがする」
「こんな部屋で安心すんなよ」
「でも、“生きてる場所”って感じがする。君の部屋、君の空気」
静馬はソファに倒れ込み、ラウラの浮かぶ方向を見上げた。
「……なんか、すごい現実感ないよな」
「私もそう思う。霊体で人の部屋に泊まるなんて初めてよ」
「そりゃそうだろうな」
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