才能に打ち砕かれた日から、僕の最強は始まった

雷覇

文字の大きさ
66 / 96
第1章

第66話:ベルクとの激闘に終止符

しおりを挟む
互いに一歩も引かず、睨み合う。
ベルクの肩口からは先程より深い傷が刻まれ、黒い血が滴り落ちている。
それでも、笑みは消えない。

「……いいじゃねぇか。ますますお前の事を知りたくなってきた」

蒼真は無言のまま剣を下げず、呼吸を整える。
内心では、相手の攻撃を見切れた手応えと同時に、次はもっと速く、もっと重く来るという確信があった。

ベルクはゆっくりと姿勢を低くし、両腕に再び瘴氣を纏わせる。
その濃度は先程までとは比べものにならず、まるで黒い雷雲の塊が形を持ったかのよう。

次の一撃は、本当に決着を分ける。
互いの氣がぶつかり合い、戦場の空気が耳鳴りを伴って震え始めた――。

ベルクの全身から噴き出す瘴氣が、黒い雷鳴のように空間を震わせた。
その圧力に、石床が軋み、壁の亀裂がさらに広がる。

「これで終わりだ、人間ッ!!」

獣の咆哮のような声と共に、ベルクが爆ぜるように踏み込む。
両腕に纏った瘴氣が刃のように鋭く変質し、振り下ろされるその一撃は避け場のない死の宣告だった。

だが――蒼真は逃げなかった。
呼吸を深く一つ吸い、全身の力を解き放つようにして剣を構える。

(……これで終わらせる)

ベルクの腕が届く寸前、蒼真の意識は極限まで研ぎ澄まされ、相手の動きが一瞬だけ鈍く見えた。筋肉の収縮、足裏の重心、瘴氣の流れ――すべてが手に取るようにわかる。

「はぁぁぁッ!」

瞬きよりも速く踏み込み、剣が閃光となって走った。
瘴氣の刃を真正面から切り裂き、そのままベルクの胸元を一直線に貫く。

「……ッがはッ!」

血飛沫と共に、ベルクが後方へ吹き飛んだ。
背後の壁を突き破り、瓦礫と煙を撒き散らして崩れ落ちる。

瘴氣が急速に薄れ、戦場に重苦しい気配が消えていく。
ベルクは膝をつきながら、なお嗤っていた。

「……お前……やっぱり……ただものじゃ、ねぇな……」

その言葉を最後に崩れ落ちた。
蒼真は剣を静かに納め、息を吐く。

足音すら立てぬよう静かに背を向け、瘴氣がすっかり消え去った戦場を後にする。
焼け焦げた大地と、崩れ落ちた瓦礫の残骸が遠ざかるたび、戦いの余韻が背後に薄れていく。

だが蒼真の胸に去来するのは、勝者としての誇りや安堵ではなかった。
あるのは、これで終わりではないという確信と、次に訪れる戦いへと心を切り替える静かな覚悟だけ。

やがて、横に並んだリリーナに目を向け、短く問いかける。
「……例の爆破兵器、解体は済んだのか」

「もちろんです、蒼真さん。完全に処理しました。これで当面は安全です」

彼女の報告に、蒼真は小さく頷いた。
しかし視線は遠く、思考はすでに次の行動へと向けられている。

「……なら、次はセリスに連絡を取る。あの兵器を王国内に持ち込んだ魔族が、まだどこかに潜んでいる可能性がある」

その声音には、先ほどの戦い以上の緊張が混じっていた。
ベルクのような単体の脅威ではない。兵器と物資、それを運用するための計画がある以上、背後にもっと大きな網が張られている。

リリーナは腰の短剣を指先で叩き、わずかに眉を寄せた。

「……魔族がただ暴れるだけなら、まだ分かりやすいです。でも兵器を持ち込むってことは狙いは連合会議か、王都そのものかもしれない」

「どちらにせよ、放っておけば王国が一瞬で混乱する……直接動けない分、向こうに警告を送る」

リリーナは軽く顎を引き、周囲を一瞥してから小声で続ける。

「じゃあ急ぎましょう。……こっちも動きがバレる前に」

二人は人目を避けながら裏路地を抜け、灯りの少ない路の奥へと消えていく。

彼らが去ったあと、瓦礫の山の中で黒い瘴氣がじわじわと滲み出す。
崩れた壁の下から、ひび割れた爪が石をかき分けた。

「……チッ……やるじゃねぇか……」

のそりと立ち上がったベルクの胸元には、深く抉られた傷跡がまだ残っている。
だが、その裂け目は瘴氣の触手のような肉が蠢き、じきに塞がり始めていた。

「……だが甘ぇな、人間……生死を確認していかないとは」

低く吐き捨てる声に、嗜虐と愉悦が混ざる。

「強ぇくせに、実戦慣れしてねぇ……仕留め損ねりゃ意味がねぇんだよ」

口元を歪め、黒い血を吐きながらも笑う。
石床に落ちた血がじゅうっと煙を上げ、瘴氣と共に空気を汚す。

「ソウマとか呼ばれてたな……次に会ったら……骨も残さず叩き潰してやる……」

ベルクはゆっくりと辺りを見回す。
戦場と化したこの場所には、魔族の兵器や物資の残骸が散乱していた。
それらに視線を走らせたあと、低く吐き捨てる。

「……とりあえず仲間に報告だ。ここはもう用済み……痕跡ごと消す」

両掌に瘴氣を溜め、地面へと押し当てる。
次の瞬間、黒炎が爆ぜ、建物と瓦礫を包み込んだ。
乾いた爆音と共に、瘴氣の炎はすべてを飲み込み、跡形もなく焼き払っていく。

ベルクは炎を背に、ゆっくりと闇の中へ消えていった。
その歩みは重くも確実で、次の獲物を探す獣のそれだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

チート魔力を持ったせいで世界を束ねる管理者に目を付けられたが、巻き込まれたくないので金稼ぎします

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。 無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。 やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。

現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜

涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。 ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。 しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。 奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。 そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。

処理中です...