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第1章
第66話:ベルクとの激闘に終止符
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互いに一歩も引かず、睨み合う。
ベルクの肩口からは先程より深い傷が刻まれ、黒い血が滴り落ちている。
それでも、笑みは消えない。
「……いいじゃねぇか。ますますお前の事を知りたくなってきた」
蒼真は無言のまま剣を下げず、呼吸を整える。
内心では、相手の攻撃を見切れた手応えと同時に、次はもっと速く、もっと重く来るという確信があった。
ベルクはゆっくりと姿勢を低くし、両腕に再び瘴氣を纏わせる。
その濃度は先程までとは比べものにならず、まるで黒い雷雲の塊が形を持ったかのよう。
次の一撃は、本当に決着を分ける。
互いの氣がぶつかり合い、戦場の空気が耳鳴りを伴って震え始めた――。
ベルクの全身から噴き出す瘴氣が、黒い雷鳴のように空間を震わせた。
その圧力に、石床が軋み、壁の亀裂がさらに広がる。
「これで終わりだ、人間ッ!!」
獣の咆哮のような声と共に、ベルクが爆ぜるように踏み込む。
両腕に纏った瘴氣が刃のように鋭く変質し、振り下ろされるその一撃は避け場のない死の宣告だった。
だが――蒼真は逃げなかった。
呼吸を深く一つ吸い、全身の力を解き放つようにして剣を構える。
(……これで終わらせる)
ベルクの腕が届く寸前、蒼真の意識は極限まで研ぎ澄まされ、相手の動きが一瞬だけ鈍く見えた。筋肉の収縮、足裏の重心、瘴氣の流れ――すべてが手に取るようにわかる。
「はぁぁぁッ!」
瞬きよりも速く踏み込み、剣が閃光となって走った。
瘴氣の刃を真正面から切り裂き、そのままベルクの胸元を一直線に貫く。
「……ッがはッ!」
血飛沫と共に、ベルクが後方へ吹き飛んだ。
背後の壁を突き破り、瓦礫と煙を撒き散らして崩れ落ちる。
瘴氣が急速に薄れ、戦場に重苦しい気配が消えていく。
ベルクは膝をつきながら、なお嗤っていた。
「……お前……やっぱり……ただものじゃ、ねぇな……」
その言葉を最後に崩れ落ちた。
蒼真は剣を静かに納め、息を吐く。
足音すら立てぬよう静かに背を向け、瘴氣がすっかり消え去った戦場を後にする。
焼け焦げた大地と、崩れ落ちた瓦礫の残骸が遠ざかるたび、戦いの余韻が背後に薄れていく。
だが蒼真の胸に去来するのは、勝者としての誇りや安堵ではなかった。
あるのは、これで終わりではないという確信と、次に訪れる戦いへと心を切り替える静かな覚悟だけ。
やがて、横に並んだリリーナに目を向け、短く問いかける。
「……例の爆破兵器、解体は済んだのか」
「もちろんです、蒼真さん。完全に処理しました。これで当面は安全です」
彼女の報告に、蒼真は小さく頷いた。
しかし視線は遠く、思考はすでに次の行動へと向けられている。
「……なら、次はセリスに連絡を取る。あの兵器を王国内に持ち込んだ魔族が、まだどこかに潜んでいる可能性がある」
その声音には、先ほどの戦い以上の緊張が混じっていた。
ベルクのような単体の脅威ではない。兵器と物資、それを運用するための計画がある以上、背後にもっと大きな網が張られている。
リリーナは腰の短剣を指先で叩き、わずかに眉を寄せた。
「……魔族がただ暴れるだけなら、まだ分かりやすいです。でも兵器を持ち込むってことは狙いは連合会議か、王都そのものかもしれない」
「どちらにせよ、放っておけば王国が一瞬で混乱する……直接動けない分、向こうに警告を送る」
リリーナは軽く顎を引き、周囲を一瞥してから小声で続ける。
「じゃあ急ぎましょう。……こっちも動きがバレる前に」
二人は人目を避けながら裏路地を抜け、灯りの少ない路の奥へと消えていく。
彼らが去ったあと、瓦礫の山の中で黒い瘴氣がじわじわと滲み出す。
崩れた壁の下から、ひび割れた爪が石をかき分けた。
「……チッ……やるじゃねぇか……」
のそりと立ち上がったベルクの胸元には、深く抉られた傷跡がまだ残っている。
だが、その裂け目は瘴氣の触手のような肉が蠢き、じきに塞がり始めていた。
「……だが甘ぇな、人間……生死を確認していかないとは」
低く吐き捨てる声に、嗜虐と愉悦が混ざる。
「強ぇくせに、実戦慣れしてねぇ……仕留め損ねりゃ意味がねぇんだよ」
口元を歪め、黒い血を吐きながらも笑う。
石床に落ちた血がじゅうっと煙を上げ、瘴氣と共に空気を汚す。
「ソウマとか呼ばれてたな……次に会ったら……骨も残さず叩き潰してやる……」
ベルクはゆっくりと辺りを見回す。
戦場と化したこの場所には、魔族の兵器や物資の残骸が散乱していた。
それらに視線を走らせたあと、低く吐き捨てる。
「……とりあえず仲間に報告だ。ここはもう用済み……痕跡ごと消す」
両掌に瘴氣を溜め、地面へと押し当てる。
次の瞬間、黒炎が爆ぜ、建物と瓦礫を包み込んだ。
乾いた爆音と共に、瘴氣の炎はすべてを飲み込み、跡形もなく焼き払っていく。
ベルクは炎を背に、ゆっくりと闇の中へ消えていった。
その歩みは重くも確実で、次の獲物を探す獣のそれだった。
ベルクの肩口からは先程より深い傷が刻まれ、黒い血が滴り落ちている。
それでも、笑みは消えない。
「……いいじゃねぇか。ますますお前の事を知りたくなってきた」
蒼真は無言のまま剣を下げず、呼吸を整える。
内心では、相手の攻撃を見切れた手応えと同時に、次はもっと速く、もっと重く来るという確信があった。
ベルクはゆっくりと姿勢を低くし、両腕に再び瘴氣を纏わせる。
その濃度は先程までとは比べものにならず、まるで黒い雷雲の塊が形を持ったかのよう。
次の一撃は、本当に決着を分ける。
互いの氣がぶつかり合い、戦場の空気が耳鳴りを伴って震え始めた――。
ベルクの全身から噴き出す瘴氣が、黒い雷鳴のように空間を震わせた。
その圧力に、石床が軋み、壁の亀裂がさらに広がる。
「これで終わりだ、人間ッ!!」
獣の咆哮のような声と共に、ベルクが爆ぜるように踏み込む。
両腕に纏った瘴氣が刃のように鋭く変質し、振り下ろされるその一撃は避け場のない死の宣告だった。
だが――蒼真は逃げなかった。
呼吸を深く一つ吸い、全身の力を解き放つようにして剣を構える。
(……これで終わらせる)
ベルクの腕が届く寸前、蒼真の意識は極限まで研ぎ澄まされ、相手の動きが一瞬だけ鈍く見えた。筋肉の収縮、足裏の重心、瘴氣の流れ――すべてが手に取るようにわかる。
「はぁぁぁッ!」
瞬きよりも速く踏み込み、剣が閃光となって走った。
瘴氣の刃を真正面から切り裂き、そのままベルクの胸元を一直線に貫く。
「……ッがはッ!」
血飛沫と共に、ベルクが後方へ吹き飛んだ。
背後の壁を突き破り、瓦礫と煙を撒き散らして崩れ落ちる。
瘴氣が急速に薄れ、戦場に重苦しい気配が消えていく。
ベルクは膝をつきながら、なお嗤っていた。
「……お前……やっぱり……ただものじゃ、ねぇな……」
その言葉を最後に崩れ落ちた。
蒼真は剣を静かに納め、息を吐く。
足音すら立てぬよう静かに背を向け、瘴氣がすっかり消え去った戦場を後にする。
焼け焦げた大地と、崩れ落ちた瓦礫の残骸が遠ざかるたび、戦いの余韻が背後に薄れていく。
だが蒼真の胸に去来するのは、勝者としての誇りや安堵ではなかった。
あるのは、これで終わりではないという確信と、次に訪れる戦いへと心を切り替える静かな覚悟だけ。
やがて、横に並んだリリーナに目を向け、短く問いかける。
「……例の爆破兵器、解体は済んだのか」
「もちろんです、蒼真さん。完全に処理しました。これで当面は安全です」
彼女の報告に、蒼真は小さく頷いた。
しかし視線は遠く、思考はすでに次の行動へと向けられている。
「……なら、次はセリスに連絡を取る。あの兵器を王国内に持ち込んだ魔族が、まだどこかに潜んでいる可能性がある」
その声音には、先ほどの戦い以上の緊張が混じっていた。
ベルクのような単体の脅威ではない。兵器と物資、それを運用するための計画がある以上、背後にもっと大きな網が張られている。
リリーナは腰の短剣を指先で叩き、わずかに眉を寄せた。
「……魔族がただ暴れるだけなら、まだ分かりやすいです。でも兵器を持ち込むってことは狙いは連合会議か、王都そのものかもしれない」
「どちらにせよ、放っておけば王国が一瞬で混乱する……直接動けない分、向こうに警告を送る」
リリーナは軽く顎を引き、周囲を一瞥してから小声で続ける。
「じゃあ急ぎましょう。……こっちも動きがバレる前に」
二人は人目を避けながら裏路地を抜け、灯りの少ない路の奥へと消えていく。
彼らが去ったあと、瓦礫の山の中で黒い瘴氣がじわじわと滲み出す。
崩れた壁の下から、ひび割れた爪が石をかき分けた。
「……チッ……やるじゃねぇか……」
のそりと立ち上がったベルクの胸元には、深く抉られた傷跡がまだ残っている。
だが、その裂け目は瘴氣の触手のような肉が蠢き、じきに塞がり始めていた。
「……だが甘ぇな、人間……生死を確認していかないとは」
低く吐き捨てる声に、嗜虐と愉悦が混ざる。
「強ぇくせに、実戦慣れしてねぇ……仕留め損ねりゃ意味がねぇんだよ」
口元を歪め、黒い血を吐きながらも笑う。
石床に落ちた血がじゅうっと煙を上げ、瘴氣と共に空気を汚す。
「ソウマとか呼ばれてたな……次に会ったら……骨も残さず叩き潰してやる……」
ベルクはゆっくりと辺りを見回す。
戦場と化したこの場所には、魔族の兵器や物資の残骸が散乱していた。
それらに視線を走らせたあと、低く吐き捨てる。
「……とりあえず仲間に報告だ。ここはもう用済み……痕跡ごと消す」
両掌に瘴氣を溜め、地面へと押し当てる。
次の瞬間、黒炎が爆ぜ、建物と瓦礫を包み込んだ。
乾いた爆音と共に、瘴氣の炎はすべてを飲み込み、跡形もなく焼き払っていく。
ベルクは炎を背に、ゆっくりと闇の中へ消えていった。
その歩みは重くも確実で、次の獲物を探す獣のそれだった。
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