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第1章
第40話:連合会議の準備(朱音side)
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「聖女セリス、まもなく王都港に到着予定です」
使令の報告が静かな緊張を孕んだ空気を震わせる。
それはつまり、連合会議の開幕がいよいよ目前に迫ったことを意味していた。
この会議に招集されたのは、四大国にそれぞれ召喚された勇者たち。
報せを受けた王室執務官の言葉に、部屋の空気がわずかに引き締まる。
なぜなら、この地に集うのはただの賢人や軍人ではない。
異世界から召喚された勇者。
それも、ただ一国ではない。
今回の会議には、四つの大国がそれぞれに召喚した勇者が招かれていた。
魔術と王権を重んじる【リグゼリア王国】。
剣と軍律に支配された【グラディア王国】。
学と商の自由を掲げる【ミレイダ王国】。
自然と霊との共生を旨とする【デルオルス王国】。
それぞれが異なる価値観と文化を持ち、それぞれが己の正義と国家の未来を背負う。
勇者たちもまた、その在り方を象徴するように、多彩な力と信念を宿していた。
そんな静かな緊張が王都を包むなか、
木製の階段を駆け上がる音とともに、扉が勢いよく開け放たれた。
「ねえ、ちょっと聞いてもいい?」
手には湯気の立つカップ。少し眠たそうな顔のままソファにいた隼人が、朱音の声に眉を上げた。
「……朝から元気だねぇ、朱音ちゃん」
「うるさい。ていうかさ、ちょっと気になってたんだけど」
朱音は窓辺に立ち、外の陽光を背にしながら、腕を組む。
「他の国の勇者って……どんな人たちなんだろうなって」
その言葉に、隼人はカップを傾けひと口啜ってから答える。
「知らないよ?会ったことも話したこともないし」
「……は?」
朱音はぽかんと口を開けた。
「え、あんたが知らなかったら誰が知ってんのよ。召喚された勇者同士なんだから、情報交換とかあるでしょ?」
「いや~、なんかそのうち顔合わせあるかもよって王様に言われただけだったし」
「それで終わり!?」
「だって、会っても仲良くなれる気しないし」
隼人はそう言って、肩をすくめた。
「それに俺、他人への興味薄いの。名前も顔も知らない相手を、わざわざ調べる気にならないっていうか」
「ちょっと待って、世界の危機に向けて連携するって話じゃないの?」
「うん。でも、戦うときに困らなきゃそれでよくない?」
あまりにも無頓着な言葉に、朱音は呆れを通り越して額を押さえた。
「……ほんっと、勇者って何なんだろうね……」
「まぁ、俺が一番そう思ってるけどね。勇者なんて勝手に呼ばれてるだけだし」
カラカラと笑う隼人の隣に、いつの間にか紫苑が静かに現れていた。
その問いに、紫苑は小さく目を伏せ、静かに答える。
「正直なところ、他国の勇者の情報は乏しいですね。公式の記録に名前すらほとんど出てきません。意図的に伏せられているのでしょう」
「ってことは、あたしたちと同じくらいの年齢かもわかんないんだ?」
「ええ。見た目も、性格も、どんな力を持ってるかも、すべては会ってからでしょうね。手の内を見せてくるかはわかりませんが」
「うわぁ、それってめちゃくちゃ警戒するしかないやつじゃん」
美咲は身体を起こして、膝を抱えながら言った。
「とはいえ、油断は禁物です」
「……何が?」
「他国の勇者たち。すでに各地で魔物の討伐や国境警備などの任務に就いていると聞いています。少なくとも、無能ではないでしょう」
朱音はその言葉に頷いた。
「そうだよね。相手がどんな人間かもわからないまま会議とか……何考えてるか探る隙すらないよ」
「むしろ、そういう探り合いこそが本番でしょう。勇者たちだけでなく、各国の王や貴族も含めて」
紫苑の目は真剣だった。
「私たちは、世界を救うために集められたと同時に選別されているのかもしれません」
朱音の表情が少しだけ引き締まる。
「選別、か……」
「だからこそ、隼人さん」
「ん?」
「会議では、もう少し勇者らしくしていただけると助かります」
「うぇ……」
隼人は情けなく首を垂れ、ソファに沈んだ。
「めんどくさいなぁ……俺、勇者って柄じゃないんだけどなあ……」
「今さら何言ってんのよ」
呆れたように言いつつ、朱音は視線を遠くに投げた。
港のほう。セリスがやって来る海の方角を、じっと見つめる。
(それでも、やるしかない。あたしたちは、ここに立ってるんだから)
静かな決意を胸に、朱音はその場を離れた。
そして三日後。
王都の港には、白き帆船が現れる。
すべての始まりが、静かに王城へと近づいていた――。
使令の報告が静かな緊張を孕んだ空気を震わせる。
それはつまり、連合会議の開幕がいよいよ目前に迫ったことを意味していた。
この会議に招集されたのは、四大国にそれぞれ召喚された勇者たち。
報せを受けた王室執務官の言葉に、部屋の空気がわずかに引き締まる。
なぜなら、この地に集うのはただの賢人や軍人ではない。
異世界から召喚された勇者。
それも、ただ一国ではない。
今回の会議には、四つの大国がそれぞれに召喚した勇者が招かれていた。
魔術と王権を重んじる【リグゼリア王国】。
剣と軍律に支配された【グラディア王国】。
学と商の自由を掲げる【ミレイダ王国】。
自然と霊との共生を旨とする【デルオルス王国】。
それぞれが異なる価値観と文化を持ち、それぞれが己の正義と国家の未来を背負う。
勇者たちもまた、その在り方を象徴するように、多彩な力と信念を宿していた。
そんな静かな緊張が王都を包むなか、
木製の階段を駆け上がる音とともに、扉が勢いよく開け放たれた。
「ねえ、ちょっと聞いてもいい?」
手には湯気の立つカップ。少し眠たそうな顔のままソファにいた隼人が、朱音の声に眉を上げた。
「……朝から元気だねぇ、朱音ちゃん」
「うるさい。ていうかさ、ちょっと気になってたんだけど」
朱音は窓辺に立ち、外の陽光を背にしながら、腕を組む。
「他の国の勇者って……どんな人たちなんだろうなって」
その言葉に、隼人はカップを傾けひと口啜ってから答える。
「知らないよ?会ったことも話したこともないし」
「……は?」
朱音はぽかんと口を開けた。
「え、あんたが知らなかったら誰が知ってんのよ。召喚された勇者同士なんだから、情報交換とかあるでしょ?」
「いや~、なんかそのうち顔合わせあるかもよって王様に言われただけだったし」
「それで終わり!?」
「だって、会っても仲良くなれる気しないし」
隼人はそう言って、肩をすくめた。
「それに俺、他人への興味薄いの。名前も顔も知らない相手を、わざわざ調べる気にならないっていうか」
「ちょっと待って、世界の危機に向けて連携するって話じゃないの?」
「うん。でも、戦うときに困らなきゃそれでよくない?」
あまりにも無頓着な言葉に、朱音は呆れを通り越して額を押さえた。
「……ほんっと、勇者って何なんだろうね……」
「まぁ、俺が一番そう思ってるけどね。勇者なんて勝手に呼ばれてるだけだし」
カラカラと笑う隼人の隣に、いつの間にか紫苑が静かに現れていた。
その問いに、紫苑は小さく目を伏せ、静かに答える。
「正直なところ、他国の勇者の情報は乏しいですね。公式の記録に名前すらほとんど出てきません。意図的に伏せられているのでしょう」
「ってことは、あたしたちと同じくらいの年齢かもわかんないんだ?」
「ええ。見た目も、性格も、どんな力を持ってるかも、すべては会ってからでしょうね。手の内を見せてくるかはわかりませんが」
「うわぁ、それってめちゃくちゃ警戒するしかないやつじゃん」
美咲は身体を起こして、膝を抱えながら言った。
「とはいえ、油断は禁物です」
「……何が?」
「他国の勇者たち。すでに各地で魔物の討伐や国境警備などの任務に就いていると聞いています。少なくとも、無能ではないでしょう」
朱音はその言葉に頷いた。
「そうだよね。相手がどんな人間かもわからないまま会議とか……何考えてるか探る隙すらないよ」
「むしろ、そういう探り合いこそが本番でしょう。勇者たちだけでなく、各国の王や貴族も含めて」
紫苑の目は真剣だった。
「私たちは、世界を救うために集められたと同時に選別されているのかもしれません」
朱音の表情が少しだけ引き締まる。
「選別、か……」
「だからこそ、隼人さん」
「ん?」
「会議では、もう少し勇者らしくしていただけると助かります」
「うぇ……」
隼人は情けなく首を垂れ、ソファに沈んだ。
「めんどくさいなぁ……俺、勇者って柄じゃないんだけどなあ……」
「今さら何言ってんのよ」
呆れたように言いつつ、朱音は視線を遠くに投げた。
港のほう。セリスがやって来る海の方角を、じっと見つめる。
(それでも、やるしかない。あたしたちは、ここに立ってるんだから)
静かな決意を胸に、朱音はその場を離れた。
そして三日後。
王都の港には、白き帆船が現れる。
すべての始まりが、静かに王城へと近づいていた――。
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