永遠故に愛は流離う

未知之みちる

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噛み合わずに空回る理由

( 一 )

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 向かいの校舎に見える篤を見つめる天音の瞳が、京子には恋をしているように見える。
 遂に彼女はこそっと聞いた。
「天音ちゃんてさ、なんだかんだ言って、北野先生のこと好きでしょ?」
 天音は驚いた。
 京子がそういう目してるよと教えると、彼女はすぐになにも言わなかった。
 そんな目で篤のことを見ていたことに驚いて、けれどもそれが自分の中で恋には行きつかず、それなのに否定出来ない。
「……そういうのじゃないと思う」
 天音の本質を解りはじめた京子は、彼女が珍しく可憐に見えた。
 高くなった空にもうすぐ三回目の合宿だとふと思った天音が微笑んだ。
 こういう顔をする時だけは、以前騙されていたようにやはり天音は可憐だなと京子は思う。
「ほら、先生見ながら微笑んでる」
「……合宿がもうすぐだから楽しみだと思っただけ」
「その合宿、先生もいるじゃん」
 京子にそう言われると、天音はよくわからなくなってきた。
 放課後勉強を見てもらう時間もみんなと一緒の部活の時間も好きだ。
 部活の時の篤の顔も好きだ。
「……確かに、そうね」
 天文オタクの天音はもちろん星も楽しみなのだろうけど、そこに篤が居るから更に楽しみなのは否めないかもしれない。
 天音は結構わかりやすい。
 気は強いけれど天真爛漫で、よく知った人間の前では言動に感情が乗りやすい。
 わかりづらい時は、本人すらよく解ってない時だ。
 結局、わかりやすい。
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