永遠故に愛は流離う

未知之みちる

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懐古の音が鳴り響けば

( 六 )

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 星が瞬く、目を凝らすように目を細めて夜空を見つめる篤は綺麗だ。
 篤が好むものを前にする時の姿はとても綺麗に見える。その綺麗さがどこから来ているのか、天音は無性に知りたくなったが、どう聞けばいのかわからなければ、知らない方が良いこともある。
 突然天音はある衝動に駆られた。今の自分が彼のなになのかを正確に知りたくなったのだ。
 篤と自分の間には重なるものがある。それだけは確かだと天音は思う。
 恋慕が存在しているに違いないとわかってしまっている彼女は重なりすぎることに対して最近怖気だしていた。彼を置いて先へ行ってしまうから。
 これ以上自分から重なりを求めてはいけないという警鐘が響きだして少し経っていた。
 求める重なりとその先に感じたいものには、どうしてか相違がある気がしてならない。
 少しだけ味わったことのある恋愛は儚かった。終わりが見えているように徐々に蝋燭が溶けていくようでもあれば、線香花火のように危うい灯を放った途端にぽとりと落ちる。
なにかが違っているとわかってしまう。なにが違うのかはわからない。
 篤に対してはその儚さを覚えたことがなかった。それは安心に繋がった。時々味わう苦しみを伴う感覚はいつでも顔を出すわけではない。篤の優しさが苦しみから逃してくれているように感じる時もある。
 篤は彼の困らない方法で天音の苦しみをいつだって取り除いてくれていた。
 今となっては安心してとなりに居るはずなのに、しかし満足感はまるで得ない。篤の可能な限りの優しさへ更に欲求が膨らんでいくのとも違う。
 この関係は儚くはない、それだけは確かなものとして胸の内に存在していたが、儚くなければどんな形でこの関係が発展していくのかなど見えない。
 見えないものに恐怖を覚えることが最近多くなったと天音は感じる。
 その恐怖から逃れるために、彼女は自分の中で一番綺麗であるものがなにかを見つけたい。
 右隣に座る天音の表情が少し翳っているように見えた篤が缶ビールを縁側に置いた。手を伸ばし天音の頭を撫でると、彼女はきっと睨みつけてきたから彼は慄いた。
 今のでそんな反応をされる理由がわからない。
 いつぞやを除けば、彼女の頭を撫でて睨み付けられるのは初めてのことだった。
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