柔らかに満ちる

未知之みちる

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 わたしは今、不安はあっても割と穏やかに毎日を過ごせていると思う。

 わたしの大切な人が贈ってくれる、大切な言葉があるから。

 あんなに眩しかったのに、わたしの欲しい言葉をくれて、わたしの大切な人は心を柔らかくしてくれる。

 半身のようなわたしの大切な人は、やっぱりそばで肩を寄せ合いたいわたしの半身なのだ。

 わたしの大切な人の言葉は、まるでとなりで微笑みながら語りかけるように、わたしの中にじんと溶けていく。

 わたしは涙に暮れることがなくなった。
 わたしは溜め込むのをやめた。

 不安に襲われる時は、大切な人がわたしにくれた沢山の言葉を何度も読み返す。

 わたしの大切な人がわたしだけにくれた言葉を心に留めてから、大切な人が書いた大切な物語を読む。

 わたしのちっぽけな感情は、わたしの大切な人が作り上げた世界に居ると、まるで我儘を覚える必要がないことを教えてくれた。

 友人と別れて家に帰ると、机の引き出しから眠っていた便箋を取り出し、わたしはペンを手にしていた。

 言葉が溢れそうになり、きっと長い長い手紙を認めるのだろうと思っていた。

 ペンが滑る。

 自然と浮かんだものはとても簡潔だった。

 わたしの大切な人が、少ない言葉でいつも全てを伝えてくれるように。

 わたしの大切な人へ贈るこの言葉が、ちゃんと届きますようにと願いながら、大切な人に語りかけるように言葉が生まれた。

 わたしの大切な人の微笑みが浮かび上がって、認め終えた手紙を封筒に仕舞うと、そっと抱きしめて祈りを込めてから封をした。

 半身のような大切な人の心は、今もわたしと重なり続けていると思いたい。

 いつまでも大切な人の言葉は、いつもわたしのとなりに居て、和やかな感覚が胸のうちを広げる。

 わたしの背中を押してくれるから、わたしは今、一応微笑みを絶やさずに居られる。
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