桜は君の無邪気な笑顔を思い出させるけれど、君は今も僕を覚えていますか?

星村桃摩

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第22話〜守りたかったもの〜

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 必死に頬を叩く。唇に耳を寄せて湊尹の声を待った。

 反応して…!目を開けて…!

「湊尹っ!お願い…!目を開けて…!私をおいて逝かないで…っ」

 必死に叫んだ。必死に何度も呼んだ。悲鳴に近い声があたりに響き渡った――

「湊尹…っ!逝かないで…っ逝かないで…!お願いだから目を開けてえ…っ!!」

 湊尹の顔や着物が私の涙で濡れていく。

「湊尹――――ッ!!!」








どれだけの時間が過ぎたのだろう


―――…もう…

 どんなに揺すっても、呼んでも、湊尹は目を覚ますことはなかった。








「湊尹…起きて…」

 今はもう……流れ落ちる涙を止めようとは思わなかった…。

 ただあなたを守りたくて

 あなたがどこかで元気に暮らしていてくれれば、私はどうなってもいいと思っていた―――

 だけどね、湊尹…私は初めて知ったよ。

…あなたも同じ事を思ってくれていたんだね…。

「湊尹のおかげだよ…」

 もう何も語ってくれない唇を私は震える指で撫でた。

「ずっと、好きだよ」

 私はこの日、生まれて初めてキスをした。

 愛しくてたまらない…あなたと―……
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