結いの約束~記憶に残る蜜の香り【異能覚醒編】

蓮華(れんげ)

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第十章 幾年の時を埋めるように

深澤くんの苦しみ

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私が、スマホのメッセージを見ていた頃・・・・
深澤くんは、今にも泣きそうな顔で血相を変え色んなところを行ったり来たりしていたようだ。



(中居さん談※中居さんとすれ違ったりしたようだが気づかなかった。なんなら、ほぼ泣いていた様子。)





中居さんからのメッセージでわかった。




しかも、中居さんが追加で動画を送ってくれた。

映しているのを気づかないくらいに探しているらしい。

「連絡してあげたら?」

と、再度メッセージが中居さんから来た。

ベンチで肩を落としている深澤くんの姿の写メ付きで。






((笑)深澤くん。自宅に帰ったわけでもないのに慌てようがすごいな)






愛おしさで胸が苦しくなったので、メッセージに既読を付けて、返した。





「私を探して。」






ちょっとだけ、意地悪。







・・・・・石段に腰を下ろした。












――――――――――帰ってからの事を考えていた。



ここまで、好きになってしまったら、そのうち離婚なんて呑気な事は言ってはいられない。
それに、今の時代微力ながら私の異能力は必要だろう。
その際は深澤くんが必要という事なら、尚更、一緒に居る機会が増える。





帰ったら、リョウに話をして、母ちゃまにも話をして・・・




決着をつけないと、みんなが傷つく。




早く、動かなければならない、か。








(浴衣で、石段に長居はキツイな。椅子に座ろう)






立ち上がった時だった。









「見つけた、蓮伽さん。」







声と共に、後ろから深澤くんのニオイがした。








「あーあ、見つかっちゃった。」



「なんで、こんなところにいるの.....探したんだよ。」



「...頭、冷やそうと思って、散歩してて...あの、深澤く......」







唇に”ごめんね”を阻まれてしまった。








深澤くんの唇は、愛しあっている時の温かさはなく、ひんやりと冷たかった。








「あやまるのは僕の方、ごめんなさい、蓮伽さん。僕が幼いから、蓮伽さんを傷つけてしまった。」






そういっては唇をついばみ、温度が戻ってくる。







「私も、ごめんね。感情に任せてつい、で、言ってしまったの。
寂しい思いさせてしまったね。でも、何があっても離れないから安心してね。
深澤くん、必要以上に何かを怖がっているけど、どこへも行かないよ?」





唇を離し、まっすぐに私を見つめるそのには涙が溜まっていた。





目を一度だけつむり、溜まっていた涙は頬をつたってひとすじ流れた。





「ありがとう.....蓮伽さん、ずっとそばにいて。
どんな蓮伽さんでもいいから、どんなに傷つけてもいいから、離れないでそばにいて。僕は、、、僕は、、、」






苦しくて、愛おしくて、震える深澤くんの唇を塞がずにはいられなかった。






「......ん.....大好きだよ、大好き。愛してるからね、深澤くん...
だから、大丈夫。辛かったね、過去に何か苦しい事があったんだね。
離れていかないよ…心配しないで。ね、今、頑張って我慢してきた分、吐き出しちゃって。」






しゃくり上げ、しばらくの間....彼は泣いた。

きっと、人に言えない苦しみがあっても、

色んなことを我慢して、笑って生きて来たのだろうと思う。







愛おしい、深澤くん。
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