オナラをするおばあさんの話

しっかり村

文字の大きさ
4 / 5

オナラをするおばあさんの話④

しおりを挟む
オナラをするおばあさんの話④

お日さまがずい分と傾いて、だんだんと寒くなってきました。そして、雪もチラホラ舞い始めたときです。
「おぉい、何やってんだぁ」
遠くから男の人が走ってきます。見張りのおじさんがやって来ました。昔、おばあさんと子どもたちを無理やり車で連れ去った、あのおじさんです。工場が爆発して危ないから逃げろと言っていました。おばあさんが牛やニワトリはどうするのかと聞いたら、大丈夫だ、草がなくなる前に帰ってこれるから、と力ずくで車に押し込んだのでした。

あれから何年過ぎたかもうわからなくなってしまいました。何度も何度も土がほぐれて草木が芽生え、向日葵が咲き誇って、紅葉を透かした木漏れ日を浴びてきたような気がします。おばあさんの牛とニワトリたちは、すっかり数が減ってやせ細ってしまったけれど、ちゃんと生きて待っていました。
おじさんもあの時と同じです。おばあさんに詰め寄って言います。
「ここは危ないから出なさい」
「どうして出なければいけないのか、草がなくなるまでには帰ってこれると言っていたのに、もうとっくの昔になくなっているじゃないか」
おばあさんはずっと我慢して生きてきて、一生懸命歩いて帰ってきたのです。簡単に引き下がるわけにはいきません。
でも、
「事情が変わったんだ」と、おじさんは取り合ってくれません。
「ここは駄目だ、汚染されて人は住めない」おじさんが言います。
「ここは私の土地だ」おばあさんはひるみません。
「仕方ないんだ」
「仕方ないって何だ。私は牛飼いだ。牛を育てて乳を搾らないと生きていけない」
「この牛は駄目だ、汚染されているから」
「じゃあどうすればいいんだ」
「言うとおりにして遠くで大人しく暮らせばいいだろう」
「誰も知らないところで、言われるままにただ大人しくすることを生きるっていうのか? 私はこの土地で生まれて牛やニワトリたちといっしょに生きてきたんだ。他に生きる方法を知らない」
おばあさんが大声でわめきます。その声は、子どもたちの心にしっかりと届きました。
「じゃあ勝手にしろ」
おじさんは、おばあさんを説得することを諦めました。ほどなくおじさんの仲間の人がたくさんやって来ると、子どもたちを連れていきました。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

ママのごはんはたべたくない

もちっぱち
絵本
おとこのこが ママのごはん たべたくないきもちを ほんに してみました。 ちょっと、おもしろエピソード よんでみてください。  これをよんだら おやこで   ハッピーに なれるかも? 約3600文字あります。 ゆっくり読んで大体20分以内で 読み終えると思います。 寝かしつけの読み聞かせにぜひどうぞ。 表紙作画:ぽん太郎 様  2023.3.7更新

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

童話短編集

木野もくば
児童書・童話
一話完結の物語をまとめています。

星降る夜に落ちた子

千東風子
児童書・童話
 あたしは、いらなかった?  ねえ、お父さん、お母さん。  ずっと心で泣いている女の子がいました。  名前は世羅。  いつもいつも弟ばかり。  何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。  ハイキングなんて、来たくなかった!  世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。  世羅は滑るように落ち、気を失いました。  そして、目が覚めたらそこは。  住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。  気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。  二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。  全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。  苦手な方は回れ右をお願いいたします。  よろしくお願いいたします。  私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。  石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!  こちらは他サイトにも掲載しています。

処理中です...