祖母がざまぁされたヒロインだったので、孫の私はひっそりと暮らしたい

ナカナカ田

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今日は王立学院の入学式である。

学校にしてはやや華美な全校生徒を集めるホールの壇上で、王子が新入生代表の挨拶をしている。

キラキラと輝く金髪。明るい空のような透き通った青い瞳。整った目鼻立ちに品よくスラリとしたいでたち。制服を着た王子。まさに王子様である。

(なんというか、多少の雰囲気の違いはあれど、ラブラビに出てきた王子にソックリね)

まぁ、ルナも人のことを言えた義理でないが。

ピンクブロンドにエメラルドの瞳、肌は白く小柄で守ってあげたくなるような儚げな雰囲気。あくまでしゃべらなければだが。

(新入生代表の挨拶は入試のトップがするはずで、私は当然断ったから、その次は王子ってこと?…それなりに優秀なのかしら?)

入試の挨拶を断った時のことを思い出し、ルナはフッと笑ってしまう。

(私が断ることを全力で祈っている顔をしてたわね)

学院にやってきた日、学院長室に呼び出されて行ってみればその話で、コンコンとノックして中に入れば、見るからに動揺し目が泳いでいる学院長がそこにいた。

「にゅ、入学式での新入生代表の挨拶は、にゅ、入試のトップの者がするものなのだが、こ、今回は、こ、今回の入試のトップは、あ、アース男爵令嬢、あ、あなたなのだが。なのだが…」

壊れた人形のように、なのだがを繰り返す学院長。

そんな学院長にルナは丁重に挨拶をお断りしたのだった。

あからさまにホッとした表情を浮かべた学院長。

(小娘相手に腹芸もできない、あんなおどおどした人がよく学院のトップである学院長になれたわね)

王国1の学力を誇るはずの王立学院である。その学院長ともなれば学術界ではかなりの力を持つ人物になるはずなのだが。

「今の挨拶で面白いトコあったか?」

隣に座るノーヴァがこっそり聞いてくる。

ルナは前を向いたままこっそり答える。

「挨拶?あぁ、聞いてないわよ。そんなの。ただ、挨拶を断った時の学院長の様子を思い出していたのよ」

「あぁ。なのだが人形だったっていう学院長な。今日の様子からは想像もつかねーけど」

「そうね。それは私も驚いたわ。今日はずいぶん立派に見えるもの。あれなら立派に学院長に見えるわ」

そんな失礼なことをノーヴァとアレコレ話していると入学式はあっという間に終わった。

今日は入学式だけなので授業はない。入学式のあとは自然解散で自宅や寮に帰るもの、学院を見てまわるものなど様々だ。

ルナとノーヴァは帰宅組だ。というか、ルナは現在ノーヴァの家に居候している。アース家には、王都に住む屋敷などあるはずもなく、最初ルナは寮暮らしをしようと思っていたが、ノーヴァも学院に行くということで、エトワール家にお世話になることになったのだ。もちろんお互いの両親公認のもとである。

ノーヴァと一緒にホールから外に出るための廊下を歩いていると、反対から賑やかな一団がやってきた。

王子とその側近そしてその取り巻きである。

(やれやれ)

と思いつつ、ルナは廊下の端により道をあける。

動きの悪いノーヴァに、

「アンタもさっさと避けなさいよ」

と注意しているとあちらもこちらに気づいたらしい。

ルナはなるべく王子達の方を見ないようにして、王子達が去るのを待った。

(さっさと通りすぎてくれますように。さっさと通りすぎてくれますように。さっさと通りすぎてくれますように)

ひたすらそう心の中で呟いていたのだが。

王子がふとルナの隣に来たときに足をとめた。

「君がアース男爵家の令嬢だろうか?」

そしてこう声をかけてきた。

その瞬間、私の隣にいるノーヴァが私にだけ聞こえるくらいの舌打ちをした。

私もまさに同じ気持ちだったが、なんとかこらえた。

「顔をあげてくれないか?君がアース男爵家令嬢なんだろう?」

もう一度、王子が言った。

その場はなんとも嫌な雰囲気だった。

王子に悪気はないのかもしれない。だが、王子の周りの者や遠巻きに私たちを見ている者からは、あなどりや嫌悪けんおなど、悪意しか感じられない。

なぜ王子はわざわざいわくつきのアース家の娘に声をかけるのだろう?

(関わりたくないのはお互いさまだろうに)

だが、これは逆にいい機会かもしれない。

(ちょうどたくさんギャラリーもいるしね)
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