祖母がざまぁされたヒロインだったので、孫の私はひっそりと暮らしたい

ナカナカ田

文字の大きさ
18 / 20

18

しおりを挟む
「ルナ、ルナ。おい、ルナさん。そのくらいにしとけよ」

自分でも制御できない怒りに突き動かされたルナを止めたのは、のんきなノーヴァの声だった。

その声に、ルナは振り返る。

腕のケガはひどいが、わりとピンピンしながらノーヴァが手招きしている。

「ルナ、ルナ。俺のために怒ってくれてるなら、もういいから。そんな大したことをされたわけでもないし」

な?と言いながらちょっと困ったように手招きしている。

「ハァ⁉︎」

ノーヴァの言葉に、一瞬冷めかけた怒りが再燃する。

ノーヴァのもとへ小走りで向かいながら、今度はノーヴァの胸ぐらをつかんで言う。一応というか、ものすごくケガ人なので、あまりひどくはできないが。

「大したことない⁉︎大したことないわけないじゃない!こんなっ、こんなケガさせられて!ってか、そもそもなんで私になにも言わないのよっ!そこも許せないのよ!」

怒りの矛先が今度はノーヴァへ向いていく。

「なんでっ!ノーヴァは!私になんにも言わないの⁉︎なんにも、言って、…くれないのよぅ。…私、そんなに頼りない?ノーヴァが困っているときに相談もできないほど、頼りたくない、…ダメなやつ…?」

八つ当たりだと分かっていたが止まらなかった。

私の顔は涙と鼻水でグチャグチャになっているだろう。

「…私、…私は!ノーヴァに感謝してる!一緒に学院に来てくれて。いつも、うっとうしいって言っちゃうけど、でも!ホントはすごく感謝してる!ノーヴァのおかげで、学院で好きな勉強が思いっきりできる。ノーヴァのおかげで、安全で快適な生活ができてる。ノーヴァのおかげで、学院生活が楽しい。…でも、ノーヴァは学院生活で嫌な思いをしてた!私のせいで!」

悔しさと、申し訳なさ、情けなさでグチャグチャだった。

「ルナ、ルナ。…大丈夫だから」

胸ぐらをつかむルナをすっぽり包みこむように、ノーヴァはルナを抱きしめていた。

「なにが大丈夫なのよ!なんにも大丈夫じゃないじゃない。私のために一緒に来てくれたノーヴァが、私のせいで嫌な目にあってるのに、そんなことも知らず、私はのうのうと過ごしてた!私は、そんな自分が許せない。ノーヴァをいじめたヤツも絶対許せないけど、私は、私を、許せない!」

腕が痛むのか、私の背をポンポンとでるノーヴァの手がぎこちない。

「ルナ、ルナ。本当にいいんだ。俺は大丈夫だから」

こんな時にも優しいノーヴァの声に、悔しさと情けなさが倍増する。

「もっと頼ってよ…ノーヴァも。ノーヴァが、私にしてくれるみたいに。私だって、ノーヴァを守りたいと思ってる。ノーヴァに、楽しい毎日を送って欲しいと思ってる。ノーヴァが私を大事にしてくれるように、私だってノーヴァのこと大切に思ってるんだから!…結局、厄病神やくびょうがみにしかなれないんだけど…」

「ルナ、それはちがう」

今まで優しかったのが、嘘のような強い口調でノーヴァが言った。

驚いて、ついノーヴァを見上げてしまう。

美しい藍色の瞳が、私を見ている。

「今回のこと、ルナは自分のせいだって言うけど、それで申し訳ないって思ってるんだろうけど、俺にとっては、本当に大丈夫なんだ。…大丈夫って言葉がよくないな。本当に、俺自身が気にしてないんだ」

「だって、でも、嫌な目に…あったでしょ?」

「モノ隠されたり、ぶつかって来られたりしたやつか?そんなのでまいったりするほど、金に困ったりバカだったりしないつもりだけど?ルナはそう思わない?」

「それは…そうかもしれないけど…」

「そうだろ?ルナも知ってのとおり、俺は金持ちだからな。日常の学用品や制服なんて、新品を毎日3年間買い続けたってなんてことないし、そもそも教科書なんていらないし、俺がそんな簡単に貴族のお坊ちゃんなんかにぶつかられてやるわけがないだろ?」

「そうかもしれないけど、そういう…問題なの?」

「問題ですらないだろ。そもそも、さっきのだってルナが出てこなければこんなことになってなかったと思うけど」

そう言ってノーヴァは私の頬の傷を親指でなぞる。けっこう力がこもっており、痛い。

「…けっこう痛いんだけど…ノーヴァ、怒ってる?」

「まぁね。誰かさんがバカみたいに飛び出して、バカみたいに傷つくってるからな」

言いながら、傷をグリグリしてくる。

「痛いってば!もう!」

「いつも言ってるけどルナ、お前は危機感が足りない。今回は間に合ったからよかったけど、間に合わなかったらかなりヤバかったんだぞ」

真剣な顔で言われ、さすがに反省する。

「それは…ごめん…」

「ただ、まぁ俺にも反省点はある。そこは考えなおしたところだ。…あぁ、いい具合にそろってるな」

ノーヴァはまわりを見渡し、うなずいている。

この場には私とノーヴァとメルキュールとマルス、サチュルヌとルミエールがいた。

「アンタ方に言いたいことは1つだ。。以上だ。忠告はした。これからは、自分を出し惜しみしたりしない。全力で行く。それでもルナに手を出そうとするなら、アンタ方を叩きつぶす」

メルキュールとマルス、ルミエールを見据え、よく通る声でノーヴァが言った。

「そっ、そんなことができるとっ!」

「できるのよ。彼なら。引きなさいメルキュール。彼が手を出さないでいてくれる間に」

メルキュールをサチュルヌがさえぎった。

しおりを挟む
感想 72

あなたにおすすめの小説

初恋の人と再会したら、妹の取り巻きになっていました

山科ひさき
恋愛
物心ついた頃から美しい双子の妹の陰に隠れ、実の両親にすら愛されることのなかったエミリー。彼女は妹のみの誕生日会を開いている最中の家から抜け出し、その先で出会った少年に恋をする。 だが再会した彼は美しい妹の言葉を信じ、エミリーを「妹を執拗にいじめる最低な姉」だと思い込んでいた。 なろうにも投稿しています。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

無実ですが、喜んで国を去ります!

霜月満月
恋愛
お姉様曰く、ここは乙女ゲームの世界だそうだ。 そして私は悪役令嬢。 よし。ちょうど私の婚約者の第二王子殿下は私もお姉様も好きじゃない。濡れ衣を着せられるのが分かっているならやりようはある。 ━━これは前世から家族である、転生一家の国外逃亡までの一部始終です。

いや、無理。 (本編完結)

詩海猫(8/29書籍発売)
恋愛
細かいことは気にせずお読みください。 一旦完結にしましたが、他者視点を随時更新の間連載中に戻します。 もはや定番となった卒業パーティー、急に冷たくなって公の場にエスコートすらしなくなった婚約者に身に覚えのない言い掛かりをつけられ、婚約破棄を突きつけられるーーからの新しい婚約者の紹介へ移るという、公式行事の私物化も甚だしい一連の行動に、私は冷めた瞳をむけていたーー目の前の男は言い訳が終わると、 「わかってくれるだろう?ミーナ」 と手を差し伸べた。 だから私はこう答えた。 「いや、無理」 と。

ある朝、結婚式用に仕立ててもらったドレスが裂かれていました。~婚約破棄され家出したために命拾いしました~

四季
恋愛
ある朝、結婚式用に仕立ててもらったドレスが裂かれていました。

【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!

りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。 食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。 だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。 食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。 パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。 そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。 王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。 そんなの自分でしろ!!!!!

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

処理中です...