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「ノーヴァさん、ルナ。ごめんなさい。謝ってすむ問題ではないけれど、これはこちらの落ち度だわ。すぐに医師を呼びますので、治療を受けてください」
メルキュールを遮り、ルナとノーヴァをルミエール王子達から守るように立ちながら、サチュルヌはルナとノーヴァに頭を下げた。
「メ、メテオール様…」
「あら、いつものようにサッちゃんと呼んでくれてかまわないのよ。ルナ」
ニコッと茶目っ気たっぷりに、サチュルヌが言う。その笑顔はさわやかで、こんな時なのに見惚れてしまうほど素敵だった。
「私、もう吹っ切れました。そもそも私がいけなかったのだわ。コソコソ隠れて貴方達と仲良くするのは終わりにします。これからは、学院でもいつも通りにしましょう」
「えっ、あっ、そうなの…?い、いつも通り…で…」
爆弾発言である。
どう対応していいのかわからず、支離滅裂な言葉しか出てこない。
「そうよ。ルナ。これからは学院でもいつも通りでいいわ。さ、この場はなんとかするから、さっさと治療に行きなさい」
いつもの、ノーヴァの研究所にいる時のサチュルヌの口調で言ってくる。
「まぁ、お嬢がそういうなら、そうするか。ただ、医師の手配はしなくていいぞ。エトワール家にもなかなか優秀なヤツがいるからな」
こういう時のノーヴァの順応力の高さは見事である。
「そうですか。では、お大事にしてください。ルナ、貴女は顔に傷ができているんだから、きちんと治療しなきゃダメよ。その辺はぬかりなくやってくださると思うけど」
「まぁ、一応女子だしな。あと、帰る前にココだけ戻しておくか。殿下の結界のおかげで、たぶん他の連中には見えてないと思うから、証拠隠滅しておけば、そんな大ごとにならなくてすむだろうし」
ノーヴァがメルキュールの魔法でできた地面の穴を指しながらいう。
「それは…いいのですか?こちらにとってあまりに都合のいい処置ではないですか?」
「いいよな?ルナ。それに戻すのはお嬢だし。俺のコレは授業料ってことで俺はいいよ」
そう言って自分の腕を指すノーヴァ。
「ノーヴァがいいなら、今回、私は役立たずだったからそれでいい。戻すのサッちゃんみたいだし」
いつものやりとりに、少しずつ気持ちが落ち着いてくる。
「私にできるのでしたら、もちろんやらせていただきますけど…どのようにしたらいいのでしょう?」
「お嬢には、魔力を注いでもらいたい。魔法陣の展開は俺がやるから」
そう言ってノーヴァが手をかざすと、銀色の魔法陣がえぐれた地面の上に現れた。
複雑で美しい魔法陣。
サチュルヌの後ろで見ていたルミエール達が息をのみ、目を見張っているのが見えた。
(ノーヴァはすごいでしょ)
誇らしい気持ちで胸を張る。
「じゃあ、お嬢はここの真ん中あたりに魔力を注いでくれ。色がプラチナになるくらいまで」
「わかりました」
そう言ってサチュルヌが魔力を注ぐ。
「そうそう、いい感じ。あ、ちょっと多いな。戻せる?あ、そう。それでいいよ」
ノーヴァが言い終わるや否や、魔法陣が輝き出す。
プラチナの美しい光がフンワリとえぐれた地面を覆った。
「キレイ…」
思わずつぶやいてしまうほど美しい光だった。
そして、光が消えると。
「おぉ、いい感じだな」
メルキュールの魔法でボコボコになっていた地面は元どおりになっていた。
「サッちゃんやったね」
笑顔でサチュルヌに言う。
「今日のお嬢は、かなり上手く魔力コントロールが出来たな」
うんうんとノーヴァがうなずいている。
「フフフ、ありがとうございます。これもノーヴァさんとルナのおかげよ。さぁ、貴方たちはそろそろ治療に行った方がいいわ。お詫びと報告は、またきちんとさせてもらうから」
花が綻ぶようにサチュルヌが微笑む。
こんなふうに笑うサチュルヌを見たことがないのだろう、ルミエール王子達は動揺していた。
「わかった。でも、それとは別に今日も夜、時間があったら話そう。また蝶を飛ばすね」
ヒラヒラとサチュルヌに手を振ってルナとノーヴァはその場を後にした。
メルキュールを遮り、ルナとノーヴァをルミエール王子達から守るように立ちながら、サチュルヌはルナとノーヴァに頭を下げた。
「メ、メテオール様…」
「あら、いつものようにサッちゃんと呼んでくれてかまわないのよ。ルナ」
ニコッと茶目っ気たっぷりに、サチュルヌが言う。その笑顔はさわやかで、こんな時なのに見惚れてしまうほど素敵だった。
「私、もう吹っ切れました。そもそも私がいけなかったのだわ。コソコソ隠れて貴方達と仲良くするのは終わりにします。これからは、学院でもいつも通りにしましょう」
「えっ、あっ、そうなの…?い、いつも通り…で…」
爆弾発言である。
どう対応していいのかわからず、支離滅裂な言葉しか出てこない。
「そうよ。ルナ。これからは学院でもいつも通りでいいわ。さ、この場はなんとかするから、さっさと治療に行きなさい」
いつもの、ノーヴァの研究所にいる時のサチュルヌの口調で言ってくる。
「まぁ、お嬢がそういうなら、そうするか。ただ、医師の手配はしなくていいぞ。エトワール家にもなかなか優秀なヤツがいるからな」
こういう時のノーヴァの順応力の高さは見事である。
「そうですか。では、お大事にしてください。ルナ、貴女は顔に傷ができているんだから、きちんと治療しなきゃダメよ。その辺はぬかりなくやってくださると思うけど」
「まぁ、一応女子だしな。あと、帰る前にココだけ戻しておくか。殿下の結界のおかげで、たぶん他の連中には見えてないと思うから、証拠隠滅しておけば、そんな大ごとにならなくてすむだろうし」
ノーヴァがメルキュールの魔法でできた地面の穴を指しながらいう。
「それは…いいのですか?こちらにとってあまりに都合のいい処置ではないですか?」
「いいよな?ルナ。それに戻すのはお嬢だし。俺のコレは授業料ってことで俺はいいよ」
そう言って自分の腕を指すノーヴァ。
「ノーヴァがいいなら、今回、私は役立たずだったからそれでいい。戻すのサッちゃんみたいだし」
いつものやりとりに、少しずつ気持ちが落ち着いてくる。
「私にできるのでしたら、もちろんやらせていただきますけど…どのようにしたらいいのでしょう?」
「お嬢には、魔力を注いでもらいたい。魔法陣の展開は俺がやるから」
そう言ってノーヴァが手をかざすと、銀色の魔法陣がえぐれた地面の上に現れた。
複雑で美しい魔法陣。
サチュルヌの後ろで見ていたルミエール達が息をのみ、目を見張っているのが見えた。
(ノーヴァはすごいでしょ)
誇らしい気持ちで胸を張る。
「じゃあ、お嬢はここの真ん中あたりに魔力を注いでくれ。色がプラチナになるくらいまで」
「わかりました」
そう言ってサチュルヌが魔力を注ぐ。
「そうそう、いい感じ。あ、ちょっと多いな。戻せる?あ、そう。それでいいよ」
ノーヴァが言い終わるや否や、魔法陣が輝き出す。
プラチナの美しい光がフンワリとえぐれた地面を覆った。
「キレイ…」
思わずつぶやいてしまうほど美しい光だった。
そして、光が消えると。
「おぉ、いい感じだな」
メルキュールの魔法でボコボコになっていた地面は元どおりになっていた。
「サッちゃんやったね」
笑顔でサチュルヌに言う。
「今日のお嬢は、かなり上手く魔力コントロールが出来たな」
うんうんとノーヴァがうなずいている。
「フフフ、ありがとうございます。これもノーヴァさんとルナのおかげよ。さぁ、貴方たちはそろそろ治療に行った方がいいわ。お詫びと報告は、またきちんとさせてもらうから」
花が綻ぶようにサチュルヌが微笑む。
こんなふうに笑うサチュルヌを見たことがないのだろう、ルミエール王子達は動揺していた。
「わかった。でも、それとは別に今日も夜、時間があったら話そう。また蝶を飛ばすね」
ヒラヒラとサチュルヌに手を振ってルナとノーヴァはその場を後にした。
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