麗しの超人お姫様はへっぽこ竜を溺愛する〜今さら無理とか言わせません。育てた責任とってもらうわ〜

ナカナカ田

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12 フィア視点

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「フィア、フィア!よかった!大丈夫?痛いところはない?」

聞き慣れた声がする。

フィアが大好きなリザの声。

今は、どこか焦ったようなそれでも安堵をにじませたような声。

ぼんやりと目を開けると、思っていたのとは違う姿をした人物が、フィアを抱き抱えていた。

「…リザ…?」

まだ少しボーッとする頭で、フィアは一連の流れを思い出す。

リザの兄だという赤い男が来て、ものすごく腹が立ったので、天誅を下すべく襲いかかったが、返り討ちにされた…ハズ。その後の記憶がない。

(…リザの兄とかいうあのクソは、人の姿をしていた。ということは)

「そうだよ。あっ、そうか!今、人型だもんね。驚いたよね。でもごめん、竜の姿だとフィアを運びにくいから、もう少しこの姿でいさせてね」

みっともなくて悪いけど…と最後の辺りをゴニョゴニョ言っているのは。

「…リザ!」

フィアは、目の前にあるリザの顔を両手でガッツリと包んだ。

それはツルツルスベスベの、自分と同じ人間の肌だった。こげ茶の瞳が驚いている。短い髪は薄い茶色でふんわりとしていた。

たまらず、フィアはリザの首に抱きついた。

(リザ、リザ、リザ!)

「人型のリザもたまらなく好き」

フィアの勢いに押されたリザは、座ったまま後ろ向きにドサリと倒れた。

「ごっ、ごめん!フィア、大丈夫?」

フィアのせいで倒れたのに、真っ先にフィアの心配をしてくれる。

その身体は、中肉中背でヒョロリとしていて頼りなく、事実とっさにフィアが抱きついただけでよろめいてしまうけれど。

フィアにとってリザは世界一大好きな存在だ。

「大丈夫だ。リザの方こそどこかぶつけてないか?」

そう言いつつ、ちゃっかりリザの腕の中を堪能する。リザの腕に包まれるなんて、竜の姿じゃできないし。

「ありがとう。人型でもボクも一応竜だから、頑丈なんだよ。だから、多少ぶつけたって大丈夫」

フフフと笑ってリザが答える。

(なんて可愛い生き物なんだろう…)

人型のリザは、フワフワとしていてどこか儚げだ。骨格も華奢だから、男とも女ともとれる中性的な雰囲気を漂わせている。フフフと笑う姿はたまらなく素敵だった。

「そこだけはなー、お前も竜なんだって思えるところだな」

頼んでもいないのに相槌がきた。

「そこ以外はホントダメだけどなー」

リザのクソ兄がいちいち割り込んでくる。

(ちっ、いいところなのにこのクソが!)

力の限りガンくれてやる。
それに気づいたクソ兄は、

「おっまえ、いい度胸してるよな。フツー睨むか?竜族だぞ?恐れとか敬いとか、ねーのかよ?」

呆れたように、しかし、どこか面白そうに言ってくる。

「そんなの関係ない。竜だろうが、兄だろうが、リザを傷つける奴は敵だ」

心からの敵意をにじませてフィアは言った。

「ジュラルドラだ」

男は唐突に言った。

(なぜ今名のる?)

クソ兄の意図が全く理解できないフィアは訝しげにジュラルドラと名のった男を見た。

「竜族のエリートであるオレが名のってやったんだ。普通名のり返すもんだろ?」

おいおいマジかよ~と勝手なことを言っている男が、フィアは心底キライだと思った。こんなのがリザと兄弟だなんて、何かの間違いではないだろうか?

「お前のような失礼な奴に名のる名はない」

キッパリとそう言ってやった。

どんな反応を示すかと思えば、男はブッと破顔した。怒っても不機嫌でもなさそうだ。それどころか、ニヤリと笑ってこう言った。

「そうか。なら、お前はチビだ」

ホントにチビだしなー。と言われれば、本日何度目だろう、フィアの中で何かがプツリと切れた。

「…フィアルーナだ。チビではない!」

頭にきてそう言い放てば、ジュラルドラはアハハと笑って去っていった。

嵐のような男だった。

(2度と来るな!クソ野郎!)

呪いのようにフィアは思った。
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