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フィアの願いも虚しく、嵐のような男ーージュラルドラーーは、あれから度々フィア達の元へやってくるようになった。
今までは、10~20年に一度くらいの来訪だったのが、最近は週1、多い時には週2で現れる。
もはや天敵とも言える間柄になったフィアとジュラルドラは、会うたび戦っていた。
はじめの頃はその戦いをハラハラと見ていたリザ達であったが、放つ殺気の鋭さとは逆に、2人の戦いはある種の訓練のようで、お互いをひどく傷つけることはないということが、なんとなく感じられるようになってからは、日常の一部として受け入れられるようになっていた。
「そろそろお昼の時間だよー」
朝イチでやってきて、午前中ほぼぶっ通しで戦い続けているフィアとジュラルドラに、リザは声をかける。
「おぉ、もうそんな時間か」
と言って切り上げようとするのがジュラルドラ。
「待て!まだ決着がついてないだろう」
と言っているのがフィア。
「決着もなにも、お前、まだオレの足下にも及ばないだろ?」
ずーずーしいなー。などと、ジュラルドラに言われている。
「図々しいのはお前だ!」
と言って放たれたフィアの一撃はスルリとかわされる。
「ハッハッハ!お前は頭に血が上ると、攻めがホント短調になるよなー!」
愉快そうなジュラルドラとギリリと歯を食いしばり悔しがるフィア。
本人達は否定するが、案外いいコンビだとリザは思っている。
口には出さないが、ジュラルドラはフィアを気に入っていると思う。
まだまだフィアはジュラルドラに及ばないが、それでも毎回ジュラルドラと戦うことができるのだ。多少ケガをする程度で。いくら手加減されているからとはいえ、異常だった。
本人が言うように、ジュラルドラは強い。竜族の中でもトップクラスに強いハズだ。
リザが相手なら3秒ももたないだろう。
諦めずに打ち込み続けることはできるが、そもそも相手にされない。
弱い相手には見向きもしない。それが竜であり、ジュラルドラはとても竜らしい竜だった。
そんなジュラルドラがわざわざ相手をしに通ってくるのだ。気に入っていない訳がない。
(それに、竜族は美しいものが好きだ)
フィアは宝石のような少女だった。
人間離れした美貌はもちろん、ちょっと交戦的なところも、喜怒哀楽を包み隠さずストレートに表現するところも、意志の強さを反映したかのような魂の輝きも竜好みだった。
(なによりフィアは孤独を知っている。そして、世界をとても冷めた目で見ている)
長い長い生を生きる竜は孤独だ。特に強い竜ほど同時に強い孤独を飼っている。
すぐに死ぬ命。簡単に壊れる世界。
その中で感じる自分という存在の異物感。それはゆっくりゆっくりと自分の中に溜まっていく。
そんなことは当然だと強い竜は言うだろう。そのことを受け入れて生きていけるだけの強さを彼らは持っているから。
けれど、己の内の孤独を癒すことはできない。
兄や父や祖父ーーいずれも竜族の中で知らぬ者はいない程の強者ーーですら、時にその瞳に深い孤独をうつすことがあった。
彼らは澄んだ瞳をしていた。なんの意志もうつさない透明な瞳。
フィアも時々そういう瞳をする時があった。
くちかずは少ないが、その分いろいろなものを見て聞いているような子だ。
他の人間の子どもとは比べようがないが、5歳の人間の子どもはああではないだろう。
「…ザ?リザ、聞こえてるか?」
ぼんやりともの思いにふけっていると、自分のすぐ隣に座ったフィアが声をかけてきた。
大丈夫か?と覗きこまれる。
「…っ、あっ、あぁ。大丈夫だよ。ちょっとぼんやりしちゃってた」
そう言いながらニコ…とフィアにほほえめば、
「何言ってんだ、お前は。ぼんやりなのはいつもだろ。ボケボケボケボケしたアホ面しやがって」
何一丁前なこと言ってんだ。とジュラルドラが言えば、すかさずフィアがフォークを投げていた。
せっかくご飯で集まったのにまた乱闘が始まってしまった。
(あぁ、今日も平和だなぁ)
心でつぶやくリザだった。
今までは、10~20年に一度くらいの来訪だったのが、最近は週1、多い時には週2で現れる。
もはや天敵とも言える間柄になったフィアとジュラルドラは、会うたび戦っていた。
はじめの頃はその戦いをハラハラと見ていたリザ達であったが、放つ殺気の鋭さとは逆に、2人の戦いはある種の訓練のようで、お互いをひどく傷つけることはないということが、なんとなく感じられるようになってからは、日常の一部として受け入れられるようになっていた。
「そろそろお昼の時間だよー」
朝イチでやってきて、午前中ほぼぶっ通しで戦い続けているフィアとジュラルドラに、リザは声をかける。
「おぉ、もうそんな時間か」
と言って切り上げようとするのがジュラルドラ。
「待て!まだ決着がついてないだろう」
と言っているのがフィア。
「決着もなにも、お前、まだオレの足下にも及ばないだろ?」
ずーずーしいなー。などと、ジュラルドラに言われている。
「図々しいのはお前だ!」
と言って放たれたフィアの一撃はスルリとかわされる。
「ハッハッハ!お前は頭に血が上ると、攻めがホント短調になるよなー!」
愉快そうなジュラルドラとギリリと歯を食いしばり悔しがるフィア。
本人達は否定するが、案外いいコンビだとリザは思っている。
口には出さないが、ジュラルドラはフィアを気に入っていると思う。
まだまだフィアはジュラルドラに及ばないが、それでも毎回ジュラルドラと戦うことができるのだ。多少ケガをする程度で。いくら手加減されているからとはいえ、異常だった。
本人が言うように、ジュラルドラは強い。竜族の中でもトップクラスに強いハズだ。
リザが相手なら3秒ももたないだろう。
諦めずに打ち込み続けることはできるが、そもそも相手にされない。
弱い相手には見向きもしない。それが竜であり、ジュラルドラはとても竜らしい竜だった。
そんなジュラルドラがわざわざ相手をしに通ってくるのだ。気に入っていない訳がない。
(それに、竜族は美しいものが好きだ)
フィアは宝石のような少女だった。
人間離れした美貌はもちろん、ちょっと交戦的なところも、喜怒哀楽を包み隠さずストレートに表現するところも、意志の強さを反映したかのような魂の輝きも竜好みだった。
(なによりフィアは孤独を知っている。そして、世界をとても冷めた目で見ている)
長い長い生を生きる竜は孤独だ。特に強い竜ほど同時に強い孤独を飼っている。
すぐに死ぬ命。簡単に壊れる世界。
その中で感じる自分という存在の異物感。それはゆっくりゆっくりと自分の中に溜まっていく。
そんなことは当然だと強い竜は言うだろう。そのことを受け入れて生きていけるだけの強さを彼らは持っているから。
けれど、己の内の孤独を癒すことはできない。
兄や父や祖父ーーいずれも竜族の中で知らぬ者はいない程の強者ーーですら、時にその瞳に深い孤独をうつすことがあった。
彼らは澄んだ瞳をしていた。なんの意志もうつさない透明な瞳。
フィアも時々そういう瞳をする時があった。
くちかずは少ないが、その分いろいろなものを見て聞いているような子だ。
他の人間の子どもとは比べようがないが、5歳の人間の子どもはああではないだろう。
「…ザ?リザ、聞こえてるか?」
ぼんやりともの思いにふけっていると、自分のすぐ隣に座ったフィアが声をかけてきた。
大丈夫か?と覗きこまれる。
「…っ、あっ、あぁ。大丈夫だよ。ちょっとぼんやりしちゃってた」
そう言いながらニコ…とフィアにほほえめば、
「何言ってんだ、お前は。ぼんやりなのはいつもだろ。ボケボケボケボケしたアホ面しやがって」
何一丁前なこと言ってんだ。とジュラルドラが言えば、すかさずフィアがフォークを投げていた。
せっかくご飯で集まったのにまた乱闘が始まってしまった。
(あぁ、今日も平和だなぁ)
心でつぶやくリザだった。
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