悪の魔女は王子の溺愛から逃れられない

ナカナカ田

文字の大きさ
1 / 23

どうしてこうなった

しおりを挟む
私は魔女だ。

魔法を使い、呪いを操り、人間をかてにして自分の寿命を伸ばしながら、世界の不思議を研究している。

魔女のイメージは悪い。

多くの魔女はしないけど、研究に没頭するあまり、まれに道を外れてしまう者がいて、子どもや若い娘さんなどを襲ったりしてしまうことがあるからだ。

そういう場合は、その他の魔女が連携して狂った魔女を袋叩きーーもとい。問題を解決し、罪に見合った処罰をするのだけれど。

魔女というだけで全て悪!のように人間達は思っているようだ。

薄気味悪がられ、遠巻きにされるくらいならいいが、たまに迫害してくるものもいる。

それは勘弁してほしい。

寿命を延ばしたり、研究に必要だったりするため、たびたび人間に接触することはあるが、基本魔女は人嫌いだ。そのため、普段は人間が簡単には踏み込んで来られないところに住んでいる。

そういうところに住んでいるのに、わざわざやって来て、迷惑だと罵るのだ。石を投げたり、家に火をつけたりするのだ。それだけならまだしも、大切に育てている薬草畑を荒らしていったり、貴重な植物を保管している温室を壊していったりする。

迷惑なのはどちらだ。というか、それは犯罪だ。魔女からすれば、むしろ、人間の方が怖い。



しかし今、問題はそこではない。





「ねぇ、アリア。何考えてるの?こっちを見てよ」

問題なのは、今現在、私の膝を占拠しているコイツである。

「ねぇってば。アリア、聞いてる?」

ここは、深い森の中。"迷いの森"と呼ばれ、人間達からは忌み嫌われており、やすやすとたどり着くことはできない場所にある小さな私の家の中。

2人掛けのソファに座る私の脚に頭をあずけ、仰向あおむけでソファにゴロリと寝そべっている。長い足がソファには収まりきらないため、プラプラと投げ出している。金髪碧眼の恐ろしく見た目のいい男。

「ねぇ、アリア」

聞いている、と言おうとしたのに言えなかった。

チュッと唇にキスをされたからだ。

「…おい」

「アリアが返事、しないからだよ」

そう言ってニコリと笑い、スラリとした長い指の手を私の耳の後ろに当て、首ごと私の顔を引き寄せる。

「…っン」

ガブリと私の唇ごと食べるようなキス。角度を変えて何度もしてくる。離れようと手で押してもびくともせず、変わらず顔を固定され、唇を奪われる。

「仮にも王子が品のないキスをするな」

やっと離れた唇に、すかさず文句を言う。

「品のあるキスってどんなの?アリアが教えてくれるの?」

むくりと起き上がり、私をソファに押しつけながら、キラキラした青い目で王子が迫ってくる。

「…そういう意味で言ったんではないんだが」

「教えてよ。アリア。ねぇ、王子のボクは愛する人にどんなキスをすればいいのかな?」

(頭が痛い…)

私は魔女で。

魔女は嫌われ者で。

間違っても王子と呼ばれる存在に迫られるようなものではないわけで。

それが、どうしてこうなった⁉︎

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

行き場を失った恋の終わらせ方

当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」  自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。  避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。    しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……  恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。 ※他のサイトにも重複投稿しています。

番など、今さら不要である

池家乃あひる
恋愛
前作「番など、御免こうむる」の後日談です。 任務を終え、無事に国に戻ってきたセリカ。愛しいダーリンと再会し、屋敷でお茶をしている平和な一時。 その和やかな光景を壊したのは、他でもないセリカ自身であった。 「そういえば、私の番に会ったぞ」 ※バカップルならぬバカ夫婦が、ただイチャイチャしているだけの話になります。 ※前回は恋愛要素が低かったのでヒューマンドラマで設定いたしましたが、今回はイチャついているだけなので恋愛ジャンルで登録しております。

完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました

らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。 そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。 しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような… 完結決定済み

私は貴方を許さない

白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。 前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

わんこ系婚約者の大誤算

甘寧
恋愛
女にだらしないワンコ系婚約者と、そんな婚約者を傍で優しく見守る主人公のディアナ。 そんなある日… 「婚約破棄して他の男と婚約!?」 そんな噂が飛び交い、優男の婚約者が豹変。冷たい眼差しで愛する人を見つめ、嫉妬し執着する。 その姿にディアナはゾクゾクしながら頬を染める。 小型犬から猛犬へ矯正完了!?

恋心を封印したら、なぜか幼馴染みがヤンデレになりました?

夕立悠理
恋愛
 ずっと、幼馴染みのマカリのことが好きだったヴィオラ。  けれど、マカリはちっとも振り向いてくれない。  このまま勝手に好きで居続けるのも迷惑だろうと、ヴィオラは育った町をでる。  なんとか、王都での仕事も見つけ、新しい生活は順風満帆──かと思いきや。  なんと、王都だけは死んでもいかないといっていたマカリが、ヴィオラを追ってきて……。

強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!

ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」 それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。 挙げ句の果てに、 「用が済んだなら早く帰れっ!」 と追い返されてしまいました。 そして夜、屋敷に戻って来た夫は─── ✻ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。

処理中です...