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どうしてこうなった
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私は魔女だ。
魔法を使い、呪いを操り、人間を糧にして自分の寿命を伸ばしながら、世界の不思議を研究している。
魔女のイメージは悪い。
多くの魔女はしないけど、研究に没頭するあまり、まれに道を外れてしまう者がいて、子どもや若い娘さんなどを襲ったりしてしまうことがあるからだ。
そういう場合は、その他の魔女が連携して狂った魔女を袋叩きーーもとい。問題を解決し、罪に見合った処罰をするのだけれど。
魔女というだけで全て悪!のように人間達は思っているようだ。
薄気味悪がられ、遠巻きにされるくらいならいいが、たまに迫害してくるものもいる。
それは勘弁してほしい。
寿命を延ばしたり、研究に必要だったりするため、たびたび人間に接触することはあるが、基本魔女は人嫌いだ。そのため、普段は人間が簡単には踏み込んで来られないところに住んでいる。
そういうところに住んでいるのに、わざわざやって来て、迷惑だと罵るのだ。石を投げたり、家に火をつけたりするのだ。それだけならまだしも、大切に育てている薬草畑を荒らしていったり、貴重な植物を保管している温室を壊していったりする。
迷惑なのはどちらだ。というか、それは犯罪だ。魔女からすれば、むしろ、人間の方が怖い。
しかし今、問題はそこではない。
◇
「ねぇ、アリア。何考えてるの?こっちを見てよ」
問題なのは、今現在、私の膝を占拠しているコイツである。
「ねぇってば。アリア、聞いてる?」
ここは、深い森の中。"迷いの森"と呼ばれ、人間達からは忌み嫌われており、やすやすとたどり着くことはできない場所にある小さな私の家の中。
2人掛けのソファに座る私の脚に頭をあずけ、仰向けでソファにゴロリと寝そべっている。長い足がソファには収まりきらないため、プラプラと投げ出している。金髪碧眼の恐ろしく見た目のいい男。
「ねぇ、アリア」
聞いている、と言おうとしたのに言えなかった。
チュッと唇にキスをされたからだ。
「…おい」
「アリアが返事、しないからだよ」
そう言ってニコリと笑い、スラリとした長い指の手を私の耳の後ろに当て、首ごと私の顔を引き寄せる。
「…っン」
ガブリと私の唇ごと食べるようなキス。角度を変えて何度もしてくる。離れようと手で押してもびくともせず、変わらず顔を固定され、唇を奪われる。
「仮にも王子が品のないキスをするな」
やっと離れた唇に、すかさず文句を言う。
「品のあるキスってどんなの?アリアが教えてくれるの?」
むくりと起き上がり、私をソファに押しつけながら、キラキラした青い目で王子が迫ってくる。
「…そういう意味で言ったんではないんだが」
「教えてよ。アリア。ねぇ、王子のボクは愛する人にどんなキスをすればいいのかな?」
(頭が痛い…)
私は魔女で。
魔女は嫌われ者で。
間違っても王子と呼ばれる存在に迫られるようなものではないわけで。
それが、どうしてこうなった⁉︎
魔法を使い、呪いを操り、人間を糧にして自分の寿命を伸ばしながら、世界の不思議を研究している。
魔女のイメージは悪い。
多くの魔女はしないけど、研究に没頭するあまり、まれに道を外れてしまう者がいて、子どもや若い娘さんなどを襲ったりしてしまうことがあるからだ。
そういう場合は、その他の魔女が連携して狂った魔女を袋叩きーーもとい。問題を解決し、罪に見合った処罰をするのだけれど。
魔女というだけで全て悪!のように人間達は思っているようだ。
薄気味悪がられ、遠巻きにされるくらいならいいが、たまに迫害してくるものもいる。
それは勘弁してほしい。
寿命を延ばしたり、研究に必要だったりするため、たびたび人間に接触することはあるが、基本魔女は人嫌いだ。そのため、普段は人間が簡単には踏み込んで来られないところに住んでいる。
そういうところに住んでいるのに、わざわざやって来て、迷惑だと罵るのだ。石を投げたり、家に火をつけたりするのだ。それだけならまだしも、大切に育てている薬草畑を荒らしていったり、貴重な植物を保管している温室を壊していったりする。
迷惑なのはどちらだ。というか、それは犯罪だ。魔女からすれば、むしろ、人間の方が怖い。
しかし今、問題はそこではない。
◇
「ねぇ、アリア。何考えてるの?こっちを見てよ」
問題なのは、今現在、私の膝を占拠しているコイツである。
「ねぇってば。アリア、聞いてる?」
ここは、深い森の中。"迷いの森"と呼ばれ、人間達からは忌み嫌われており、やすやすとたどり着くことはできない場所にある小さな私の家の中。
2人掛けのソファに座る私の脚に頭をあずけ、仰向けでソファにゴロリと寝そべっている。長い足がソファには収まりきらないため、プラプラと投げ出している。金髪碧眼の恐ろしく見た目のいい男。
「ねぇ、アリア」
聞いている、と言おうとしたのに言えなかった。
チュッと唇にキスをされたからだ。
「…おい」
「アリアが返事、しないからだよ」
そう言ってニコリと笑い、スラリとした長い指の手を私の耳の後ろに当て、首ごと私の顔を引き寄せる。
「…っン」
ガブリと私の唇ごと食べるようなキス。角度を変えて何度もしてくる。離れようと手で押してもびくともせず、変わらず顔を固定され、唇を奪われる。
「仮にも王子が品のないキスをするな」
やっと離れた唇に、すかさず文句を言う。
「品のあるキスってどんなの?アリアが教えてくれるの?」
むくりと起き上がり、私をソファに押しつけながら、キラキラした青い目で王子が迫ってくる。
「…そういう意味で言ったんではないんだが」
「教えてよ。アリア。ねぇ、王子のボクは愛する人にどんなキスをすればいいのかな?」
(頭が痛い…)
私は魔女で。
魔女は嫌われ者で。
間違っても王子と呼ばれる存在に迫られるようなものではないわけで。
それが、どうしてこうなった⁉︎
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