悪の魔女は王子の溺愛から逃れられない

ナカナカ田

文字の大きさ
2 / 23

私の寿命はこうして延ばす

しおりを挟む
王子が魔女に執着する理由。


きっかけは、なんとなくわかっている。


そう、1番はじめは彼が生まれた18年前ーー。







苦しそうに息をする赤ん坊のベッドの脇に私は立っていた。

赤ん坊はゼィゼィと息を吐き、顔は真っ赤に染まっている。その顔に手をあてれば、思わず顔をしかめてしまうほど熱い。苦しさを泣いて訴えることしかできない赤ん坊が、泣く気力もなく衰弱しているようだ。


強い呪いの気配に惹かれて来てみれば、呪われているのは生まれて数ヶ月くらいの乳飲み子だった。

側でよく見れば、複雑で難解で強い怨みのこもった呪いだ。

「…素晴らしいな。これなら、しばらくもちそうだ」

呪われた赤ん坊を満足した気持ちで眺める。

「今、楽にしてやるからな」

フフフと笑いながら私は、赤ん坊の額に手を当てた。そして、私の力をゆっくりと赤ん坊の身体にめぐらせる。力が全体に浸ったのを見計らい、私の力と赤ん坊の呪いを同化させ、そのあと一気に呪いごと私の体に力を戻す。

「…っ!」

戻した瞬間、ビクリと私の体がね、一瞬身体の体積が増した。身体のところどころにこぶのようなものがボコリボコリと浮いている。戻した力と呪いを私の身体になじませているのだ。今回はなかなか強い呪いだったから、なじむのに2-3日かかるだろう。

そうして私はゆっくりと赤ん坊の額から手を離す。

赤ん坊の額はもう熱くはなく、呼吸も落ち着いており、苦しそうな様子はなかった。

「ごちそうさま」

呪いを得た今、もう赤ん坊に興味はなかった。私は早々にその場を立ち去った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

行き場を失った恋の終わらせ方

当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」  自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。  避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。    しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……  恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。 ※他のサイトにも重複投稿しています。

番など、今さら不要である

池家乃あひる
恋愛
前作「番など、御免こうむる」の後日談です。 任務を終え、無事に国に戻ってきたセリカ。愛しいダーリンと再会し、屋敷でお茶をしている平和な一時。 その和やかな光景を壊したのは、他でもないセリカ自身であった。 「そういえば、私の番に会ったぞ」 ※バカップルならぬバカ夫婦が、ただイチャイチャしているだけの話になります。 ※前回は恋愛要素が低かったのでヒューマンドラマで設定いたしましたが、今回はイチャついているだけなので恋愛ジャンルで登録しております。

完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました

らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。 そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。 しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような… 完結決定済み

私は貴方を許さない

白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。 前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

わんこ系婚約者の大誤算

甘寧
恋愛
女にだらしないワンコ系婚約者と、そんな婚約者を傍で優しく見守る主人公のディアナ。 そんなある日… 「婚約破棄して他の男と婚約!?」 そんな噂が飛び交い、優男の婚約者が豹変。冷たい眼差しで愛する人を見つめ、嫉妬し執着する。 その姿にディアナはゾクゾクしながら頬を染める。 小型犬から猛犬へ矯正完了!?

恋心を封印したら、なぜか幼馴染みがヤンデレになりました?

夕立悠理
恋愛
 ずっと、幼馴染みのマカリのことが好きだったヴィオラ。  けれど、マカリはちっとも振り向いてくれない。  このまま勝手に好きで居続けるのも迷惑だろうと、ヴィオラは育った町をでる。  なんとか、王都での仕事も見つけ、新しい生活は順風満帆──かと思いきや。  なんと、王都だけは死んでもいかないといっていたマカリが、ヴィオラを追ってきて……。

強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!

ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」 それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。 挙げ句の果てに、 「用が済んだなら早く帰れっ!」 と追い返されてしまいました。 そして夜、屋敷に戻って来た夫は─── ✻ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。

処理中です...